2025年 国家一般職 問題21
民法通則・人・法人
【No. 21】制限行為能力者に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
制限行為能力者の制度は、判断能力が十分でない人が、不利な取引で財産を失わないように守る制度です。判断能力の程度に応じて、保護の厚さを変えています。
未成年者:法律行為に、原則として法定代理人の同意が要る
成年被後見人(判断能力を欠く常況):成年後見人が代わりに行い、本人の行為は原則として取り消せる
被保佐人(判断能力が著しく不十分):重要な行為にだけ、保佐人の同意が要る
被補助人(判断能力が不十分):家庭裁判所が定めた一部の行為にだけ、補助人の同意が要る
一方、相手方は、取り消されるかどうか分からない立場に置かれるので、追認するかどうかを催告できます。返事がないときは、催告を受けた人が単独で追認できる立場なら追認、できない立場なら取消しとみなされます。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で、後見と保佐は廃止され、補助に一本化されます。施行後は、家庭裁判所が、補助人の同意を要する行為や代理権、判断能力を欠く常況にある人のための特定補助人などを、本人に必要な範囲で組み合わせて定めます。
ア.誤答
未成年者は、叔父から授業料の贈与を受ける場合、親の同意を得なければならない。
要点単に権利を得る法律行為は、未成年者が単独ですることができる。
妥当でない。未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が要りますが、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為には同意は要りません(民法5条1項)。負担のない贈与を受けることはこれに当たるので、授業料の贈与を受けるのに親の同意は要りません。
同意を求めるのは、判断能力が十分でない未成年者を、不利な取引から守るためです。権利を得るだけで義務を負わない行為なら、未成年者が損をするおそれがないので、守る必要がありません。
【民法 第5条第1項】
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
イ.正答
家庭裁判所は、被補助人に対して後見開始の審判をする場合、補助開始の審判を取り消さなければならない。
要点被補助人に後見開始の審判をするときは、補助開始の審判を取り消す。
妥当である。後見開始の審判をする場合に、本人が被保佐人や被補助人であるときは、家庭裁判所は、その保佐開始や補助開始の審判を取り消さなければなりません(民法19条1項)。
後見・保佐・補助は、判断能力の程度に応じて保護の厚さを変えた別々の仕組みです。同じ人に2つの審判が残ると、誰がどの権限を持つのかが重なってしまうので、新しい審判をするときは古い審判を取り消し、一本にします。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で後見と保佐は廃止され、19条も削除されます。施行後は後見開始の審判がなくなるので、本肢は成り立たなくなります。
【民法 第19条第1項】
(審判相互の関係)
第十九条 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
ウ.誤答
家庭裁判所は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、保佐開始の審判をすることができる。
要点能力が著しく不十分な者は保佐、不十分な者は補助の対象となる。
妥当でない。保佐開始の審判の対象は、事理を弁識する能力が著しく不十分である者です(民法11条)。能力が不十分である者は、補助開始の審判の対象です(15条1項)。事理を弁識する能力とは、自分の行為の結果を判断できる能力のことです。
判断能力が低いほど、厚い保護を受けます。被保佐人は、借財や不動産の売買などの重要な行為に一律に保佐人の同意が要るのに対し、被補助人は、家庭裁判所が定めた一部の行為にだけ同意が要ります。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で保佐は廃止されます。施行後も、能力が不十分な人について家庭裁判所がするのは補助開始の審判で、本肢が妥当でないことは変わりません。
【民法 第11条】
(保佐開始の審判)
第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
【民法 第15条第1項】
(補助開始の審判)
第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
エ.正答
未成年者と契約した相手方は、未成年者が成年者となった後、1か月以上の期間を定めて、その者に対して契約を追認するかどうかの催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、当該契約を追認したものとみなされる。
要点行為能力者となった後に期間内に確答がなければ、追認したものとみなされる。
妥当である。制限行為能力者が行為能力者となった後、相手方は、1か月以上の期間を定めて追認するかどうかを催告でき、期間内に確答がないときは、追認したものとみなされます(民法20条1項)。未成年者は、成年に達すると行為能力者になります。
相手方は、取り消されるかもしれない不安定な立場に置かれるので、催告で早く決着をつけられるようにしています。行為能力者になった本人は自分だけで追認も取消しもできるので、催告を受けて答えないなら、取り消さないものと扱っても本人に酷ではありません。
【民法 第20条第1項】
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
オ.誤答
被保佐人と契約した相手方は、1か月以上の期間を定めて、被保佐人に対して保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人がその期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、当該契約を追認したものとみなされる。
要点被保佐人が期間内に追認を得た旨を通知しないと、取り消したものとみなされる。
妥当でない。相手方が被保佐人に対し、1か月以上の期間内に保佐人の追認を得るよう催告した場合に、被保佐人がその期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、取り消したものとみなされます(民法20条4項)。
被保佐人は、保佐人の同意なしには有効に追認できません。追認できない人が黙っているのを追認と扱うと、守られるはずの被保佐人が、不利な契約に縛られてしまいます。そこで、行為能力者となった本人への催告(同条1項)とは逆に、取消しとみなしています。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で保佐は廃止され、施行後は、補助人の同意を要する旨の審判を受けた人に対して同じ催告をすることになります。返事がなければ取消しとみなされる点は変わりません。
【民法 第20条第1項・第4項】
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.21
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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