2025年 国家一般職 問題20
行政法国家賠償法1条
【No. 20】国家賠償法第1条に定める責任の性質については、公務員個人の責任から独立して、国や公共団体自身がはじめから責任を負うことを定めたものとする説(Ⅰ説)と、本来責任を負うべき者が公務員個人であることを前提に、その責任を国や公共団体が当該公務員に代位して負担することを定めたものとする説(Ⅱ説)がある。 次のア~エの記述のうち、Ⅱ説の根拠又は説明として妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
国家賠償法1条は、1項で、公務員が職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときに、国や公共団体が賠償すると定め、2項で、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国や公共団体がその公務員に求償できるとしています。
Ⅰ説とⅡ説は、本来責任を負うのはだれか、という出発点が違います。Ⅱ説(代位責任説)は、損害を加えたのは公務員なので、本来の責任者は公務員個人であると考え、その責任を国や公共団体が代わりに負うと説明します。Ⅰ説(自己責任説)は、公務員の活動にはもともと違法に損害を生じさせる危険が含まれていると考え、国や公共団体が、その活動による責任をはじめから自分の責任として負うと説明します。
【国家賠償法 第1条】
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
ア.正答
国家賠償法第1条第1項は、加害公務員の故意・過失を要件としている。
要点公務員の故意・過失を要件とすることは、Ⅱ説(代位責任説)の根拠となる。
妥当である。国家賠償法1条1項が、国や公共団体の責任の要件として、加害公務員の故意・過失を求めていることは、Ⅱ説の根拠になります。
故意・過失は、加害者個人の落ち度を問う要件です。これを要件にしているのは、まず公務員個人について不法行為が成り立つことを前提に、その責任を国などが代わって負う仕組みだから、と説明できます。立案の際も、この要件は民法709条(不法行為)と同じ趣旨だと説明されていました。
【民法 第709条】
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
イ.誤答
国家賠償法第1条第1項には、「公務員に代わって」という文言がない。
要点「公務員に代わって」という文言がないことは、Ⅰ説(自己責任説)の根拠となる。
妥当でない。国家賠償法1条1項に「公務員に代わって」という文言がないことは、国や公共団体がはじめから自らの責任を負うとするⅠ説の根拠に挙げられます。
条文は、国や公共団体を主語にして「これを賠償する責に任ずる」と定め、公務員の責任を引き受けるという書き方をしていません。この書き方を、国などが自分の責任を負う趣旨と読むのがⅠ説です。
ウ.正答
国家賠償法第1条第2項は、国の加害公務員に対する求償権を認めている。
要点国の加害公務員に対する求償権は、Ⅱ説(代位責任説)の根拠となる。
妥当である。国家賠償法1条2項が、公務員に故意又は重大な過失があったときに、国や公共団体の公務員に対する求償権を認めていることは、Ⅱ説の根拠になります。
求償とは、他人の代わりに支払った者が、本来負担すべき者にその分を請求することです。本来の責任者は公務員個人で、国などはそれを代わりに負うとするⅡ説からは、求償できることが自然に説明できます。
なお、求償を故意・重大な過失の場合に限ったのは、軽い過失でも求償されるとすると、公務員が職務の執行に臆病になるおそれがあるためと説明されています。
エ.誤答
この説は、国家賠償責任の実質的な根拠を危険責任に求めるものである。
要点国家賠償責任の根拠を危険責任に求めるのは、Ⅰ説(自己責任説)である。
妥当でない。国家賠償責任の実質的な根拠を危険責任に求めるのは、Ⅰ説(自己責任説)の説明です。危険責任とは、危険を生み出す活動をする者は、その危険から生じた損害を負うべきだという考え方です。
Ⅰ説は、公務員の活動に含まれる危険を、その活動をさせている国や公共団体が自ら引き受けると考えます。公務員個人の責任を出発点にするⅡ説とは、ここが違います。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.20
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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