2025年 国家一般職 問題19
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 19】義務付けの訴えに関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
義務付けの訴えには2つの型があり、要件の違いは、原告に申請権があるかどうかから来ています(行政事件訴訟法3条6項)。
申請型(同項2号):法令に基づく申請をしたのに、拒否されたり放置されたりした人が、申請どおりの処分を求める。申請を違法に拒否・放置されたこと自体が、救済を求める理由になります。
非申請型(同項1号):申請権のない人が、他人への規制権限の行使などを求める。行政に介入を求めるものなので、救済の必要性と、司法と行政の役割分担を考えて、重大な損害と、損害を避ける他に適当な方法がないことが要件です(37条の2第1項)。
【行政事件訴訟法 第3条第6項】
(抗告訴訟)
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
【行政事件訴訟法 第37条の2第1項】
(義務付けの訴えの要件等)
第三十七条の二 第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
ア.誤答
生活保護の申請が行政庁に却下された場合において、生活保護開始の決定をすることを求める義務付けの訴えは、当該決定がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるために他に適当な方法がない場合に限り、提起することができる。
要点申請を却下された場合の義務付けの訴えには、重大な損害の要件はない。
妥当でない。重大な損害と他に適当な方法がないことを要件とするのは、申請を前提としない義務付けの訴えです(行政事件訴訟法37条の2第1項)。申請を却下された場合の義務付けの訴えは、その却下が取り消されるべきものであるか、無効若しくは不存在であることが要件です(37条の3第1項2号)。
申請権のある人にとっては、申請を違法に拒否されたこと自体が救済を求める理由になるので、損害の重大さは問いません。
【行政事件訴訟法 第37条の3第1項】
第三十七条の三 第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
イ.誤答
生活保護の申請が行政庁に却下された場合において、生活保護開始の決定をすることを求める義務付けの訴えは、当該申請を行った者及び当該申請に関して利害関係を有する者に限り、提起することができる。
要点申請型の義務付けの訴えは、申請をした者に限り提起できる。
妥当でない。申請を却下された場合などの義務付けの訴えは、法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起できます(行政事件訴訟法37条の3第2項)。申請に利害関係を持つだけの人は、提起できません。
この型の訴えは、申請権を使った人が、自分の申請に対する適法な処分を求めるためのものだからです。
【行政事件訴訟法 第37条の3第2項】
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
ウ.誤答
生活保護の申請が行政庁に却下され、生活保護開始の決定をすることを求める義務付けの訴えを本案として、当該決定をすることを求める仮の義務付けの申立てがされた場合において、当該決定がされないことにより生ずる償うことができない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は職権により生活保護開始の決定を行うことができる。
要点仮の義務付けでは、裁判所が申立てにより、行政庁に仮に処分を命ずる。
妥当でない。仮の義務付けは、裁判所が、申立てにより、決定で、仮に行政庁がその処分をすべき旨を命ずるものです(行政事件訴訟法37条の5第1項)。裁判所が職権で、自ら生活保護開始の決定をするのではありません。
処分をする権限は行政庁にあるので、裁判所は、行政庁に処分を命じるところまでにとどめています。本案の義務付けの訴えの判決も、行政庁に処分を命じる判決です。
【行政事件訴訟法 第37条の5第1項】
(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
エ.正答
自宅の隣接地に建設された建築基準法令に違反する建築物の倒壊により重大な損害を直接受けるおそれのある住民は、建築主を相手方として当該違反の是正を求める民事上の訴訟を提起することができる場合であっても、行政庁を相手方として当該建築主に対して当該違反の是正命令を出すよう求める義務付けの訴えを提起することができる。
要点民事訴訟を提起できても、非申請型の義務付けの訴えは提起できる。
妥当である。申請を前提としない義務付けの訴えは、損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起できます(行政事件訴訟法37条の2第1項)。建築主を相手に民事訴訟を起こせることは、直ちにこの「他に適当な方法」には当たりません。
この要件で外されるのは、法律が別の救済の手続を特に用意している場合です。例えば、税を多く申告したときは更正の請求の手続があるので、それを使わずに減額の処分の義務付けを求めることはできません。建築主への民事訴訟は、相手も求める中身も違います。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.19
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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