2025年 国家一般職 問題18
行政法行政不服申立て
【No. 18】行政不服審査法に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政不服審査法は、国民が簡易迅速かつ公正な手続で行政庁に不服を申し立てられるようにして、国民の権利利益の救済と、行政の適正な運営の確保を図る法律です(行政不服審査法1条1項)。審査請求人が使いやすいよう、書類の出し方や審理の進め方に配慮が置かれています。
また、審査庁ができることは、審査庁が処分庁とどういう関係にあるかで変わります。処分庁の上級行政庁は、処分庁に対する一般的な監督権を持ち、処分庁は自分の処分を見直せる立場にあるので、処分の変更や職権での執行停止までできます。通説では、それ以外の審査庁(法律が特に定めた機関)は、こうした権限を持たないので、できることが限られていると解されています。
【行政不服審査法 第1条第1項】
(目的等)
第一条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
1.正答
国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、行政不服審査法の規定は適用されない。
要点固有の資格で処分の相手方となる国の機関等には、行政不服審査法は適用されない。
妥当である。国の機関や地方公共団体などに対する処分で、これらが固有の資格で処分の相手方となるもの、及びその不作為には、行政不服審査法の規定は適用されません(行政不服審査法7条2項)。
判例は、行政不服審査法が国民の権利利益の救済を目的とする(1条1項)ことから、そうした制度の対象になじまない処分を外したのがこの規定だとし、固有の資格とは、一般私人が立ち得ないような立場をいうとしています(最判令2.3.26)。
【最判令2.3.26 判決理由】
…同法7条2項は,国の機関等に対する処分のうち,国民の権利利益の救済等を図るという上記目的に鑑みて上記制度の対象とするのになじまないものにつき,同法の規定を適用しないこととしているものと解される。このような同項の趣旨に照らすと,同項にいう「固有の資格」とは,国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場,すなわち,一般私人(国及び国の機関等を除く者をいう。以下同じ。)が立ち得ないような立場をいうものと解するのが相当である。
【行政不服審査法 第7条第2項】
(適用除外)
2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。
2.誤答
処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合であっても、審査請求人の申立てがないときは、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることはできない。
要点上級行政庁や処分庁である審査庁は、職権でも執行停止ができる。
妥当でない。処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てがなくても、職権で執行停止をすることができます(行政不服審査法25条2項)。申立てがなければ執行停止ができないのは、それ以外の審査庁です(同条3項)。
審査請求をしても処分の効力や執行は止まらないので(同条1項)、裁決を待つ間に取り返しのつかない事態が生じるのを防ぐため、暫定的に止める仕組みがあります。上級行政庁と処分庁は、処分について権限を持つ立場なので、自ら止めることもできます。
【行政不服審査法 第25条第1項・第2項・第3項】
(執行停止)
第二十五条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。
3 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。
3.誤答
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。一方、不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合には、審査庁は、相当の期間経過後に審査を開始する。
要点相当の期間が経過しないでされた不作為の審査請求は、却下される。
妥当でない。処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたときは、裁決で却下されます(行政不服審査法45条1項)。不作為についての審査請求が、申請から相当の期間が経過しないうちにされたときも、同じく裁決で却下されます(49条1項)。相当の期間が経過するのを待って審査を始めるのではありません。
不作為についての審査請求は、申請から相当の期間が経過しても応答がないことが要件です(3条)。その前にされた審査請求は要件を欠く不適法なものなので、中身を審理せずに退けます。
【行政不服審査法 第45条第1項】
(処分についての審査請求の却下又は棄却)
第四十五条 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
【行政不服審査法 第49条第1項】
(不作為についての審査請求の裁決)
第四十九条 不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
【行政不服審査法 第3条】
(不作為についての審査請求)
第三条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
4.誤答
事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁であるときであっても、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることができる。
要点上級行政庁以外の審査庁は、事実上の行為の変更を命ずることはできない。
妥当でない。事実上の行為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、裁決で、その行為が違法又は不当である旨を宣言し、処分庁に撤廃や変更を命じるなどの措置をとります。ただし、処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、変更を命ずることはできません(行政不服審査法47条)。
事実上の行為とは、人の収容や物の留置など、公権力の行使に当たる実力の行使のことです。通説では、上級行政庁でない審査庁は、処分庁に対する一般的な監督権を持たないので、撤廃を命ずることはできても、どう変えるかまで処分庁に命じることはできないと解されています。
【行政不服審査法 第47条】
第四十七条 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合(第四十五条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。
一 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。
二 処分庁である審査庁 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。
5.誤答
処分庁の誤った教示に従い、審査請求をすべき行政庁でない行政庁に書面で審査請求をした審査請求人は、本来審査請求をすべき行政庁に審査請求書を提出し直す必要がある。
要点誤った教示に従った審査請求は、送付されれば初めから正しくされたものとみなされる。
妥当でない。処分庁が審査請求をすべき行政庁を誤って教示し、教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、その行政庁は、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付しなければなりません(行政不服審査法22条1項)。送付されると、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされるので(同条5項)、審査請求人が出し直す必要はありません。
行政庁の誤った教示を信じて手続をした人に、その誤りの不利益を負わせないための決まりです。出し直しを求めると、その間に審査請求期間が過ぎてしまうおそれもあります。
【行政不服審査法 第22条第1項・第5項】
(誤った教示をした場合の救済)
第二十二条 審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
5 前各項の規定により審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.18
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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