2025年 国家一般職 問題17
行政法行政指導・行政契約
【No. 17】行政指導に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政指導は、指導、勧告、助言などによって相手方に一定の行為を求めるものですが、処分と違って義務を課す力はなく、相手方の任意の協力によってのみ実現されます(行政手続法32条1項)。
そのため、行政手続法の行政指導の決まりは、二つの方向から整理できます。
従うかどうかの自由を守る決まり:従わなかったことを理由に不利益に扱うことの禁止(同条2項)、申請者が従わないと表明したあとの指導の継続の禁止、使えない権限をちらつかせて従わせることの禁止
誰が何を求めているのかを明らかにする決まり:趣旨・内容・責任者の明示、求めに応じた書面の交付、複数の者に共通する行政指導指針の公表
【行政手続法 第32条】
(行政指導の一般原則)
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
ア.誤答
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表するよう努めなければならない。
要点行政指導指針は、特別の支障がない限り、公表しなければならない。
妥当でない。行政指導指針は、行政上特別の支障がない限り、公表しなければならず、努力義務ではありません(行政手続法36条)。なお、指針を定めること自体は「事案に応じ」て行うもので、すべての行政指導に一律に求められてはいません。
同じ目的で複数の者に行政指導をするときに、共通の内容を指針として前もって公表しておけば、相手方は何を求められるのかを知ることができ、相手によって求める内容が変わることも防げます。行政指導の明確性と公平性を確保するための決まりです。
【行政手続法 第36条】
(複数の者を対象とする行政指導)
第三十六条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
イ.正答
自己の申請に対する処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を真摯かつ明確に表明し、当該申請に対し直ちに応答すべきことを求めているものと認められるときは、その行政指導の相手方に対して、行政指導が行われていることを理由として処分を留保することは、特段の事情のない限り、違法となるとするのが判例である。
要点指導に従わない意思を真摯かつ明確に表明した者の処分の留保は、違法となる。
妥当である。建築確認の申請者が、処分を留保されたままでの行政指導には協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、直ちに応答するよう求めたときは、特段の事情がない限り、行政指導を理由に処分を留保し続けることは違法になります(最判昭60.7.16。品川マンション事件)。
判例は、処分の留保は、相手方が任意に行政指導に協力していることを前提とした事実上の措置にすぎないので、相手方がはっきり拒んだあとまで、その意思に反して留保を受け入れさせることはできないとしました。この考え方は、申請に関連する行政指導の決まり(行政手続法33条)にも表れています。
【最判昭60.7.16 判決理由】
もつとも、右のような確認処分の留保は、建築主の任意の協力・服従のもとに行政指導が行われていることに基づく事実上の措置にとどまるものであるから、建築主において自己の申請に対する確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には、かかる建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない筋合のものであるといわなければならず、建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、当該建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法であると解するのが相当である。
【行政手続法 第33条】
(申請に関連する行政指導)
第三十三条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
ウ.誤答
地方公共団体の機関が行う行政指導は、その手続については、法令に根拠のあるものに限り、行政手続法の行政指導に関する規定が適用される。
要点地方公共団体の機関の行政指導には、行政手続法の規定は適用されない。
妥当でない。地方公共団体の機関がする行政指導には、法令に根拠があるかどうかにかかわらず、一律に、行政手続法の行政指導の規定は適用されません(行政手続法3条3項)。地方公共団体は、同法の趣旨にのっとって必要な措置を講ずるよう努めることとされ(46条)、多くが行政手続条例を定めています。
地方公共団体の処分は、法律に根拠があれば同法が適用され、条例・規則に根拠があれば適用されません。行政指導は、法律の事項と条例の事項のどちらを実施するものかをはっきり区分できないので、地方自治に配慮して、まとめて適用から外されています。
【行政手続法 第3条第3項】
(適用除外)
3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。
【行政手続法 第46条】
(地方公共団体の措置)
第四十六条 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
エ.誤答
行政指導を口頭で行う場合には、その場において、その相手方に当該行政指導の趣旨・内容や責任者を明確に示す必要はなく、後日、その相手方からこれらを記載した書面の交付を求められたときに、当該行政指導に携わる者が当該書面を交付すれば足りる。
要点行政指導の趣旨・内容と責任者は、その場で明確に示さなければならない。
妥当でない。行政指導に携わる者は、口頭で行うときも、その場で相手方に、行政指導の趣旨・内容と責任者を明確に示さなければなりません(行政手続法35条1項)。書面の交付は、これとは別に、口頭の行政指導について相手方から求められたときに必要になるものです(同条3項)。
誰が、何のために、何を求めているのかがはっきりしなければ、相手方は従うかどうかを判断できません。そこで、その場での明示を義務とし、求めがあれば書面でも確かめられるようにしています。
【行政手続法 第35条第1項・第3項】
(行政指導の方式)
第三十五条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
3 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.17
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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