2025年 国家一般職 問題16
行政法行政行為の瑕疵
【No. 16】行政行為の瑕疵に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
判例は、処分に理由を付ける(理由付記)目的を、2つに整理しています(最判昭47.12.5、最判平11.11.19)。
①処分庁の判断を慎重で合理的なものにし、恣意を抑えること
②処分の理由を相手方に知らせ、不服申立ての手掛かりを与えること
この目的から、次の2つの問題の答えが分かれます。
理由の不備の治癒:処分のときに理由を示すこと自体が求められているので、後から別の機関が理由を示しても、①②は果たせない
訴訟での理由の差替え:処分のときに具体的な理由を示したことで①②はひとまず果たされているので、理由付記の決まりだけを根拠に、訴訟で別の理由を主張することは妨げられない
【最判平11.11.19 判決理由】
…非公開の理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当とを担保してそのし意を抑制するとともに、非公開の理由を公開請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与えることを目的としていると解すべきである。そして、そのような目的は非公開の理由を具体的に記載して通知させること(実際には、非公開決定の通知書にその理由を付記する形で行われる。)自体をもってひとまず実現されるところ、本件条例の規定をみても、右の理由通知の定めが、右の趣旨を超えて、一たび通知書に理由を付記した以上、実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である。
ア.正答
課税処分に課税要件の根幹に関する内容上の過誤があり、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に当該処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情のある場合には、当該処分は当然無効となる。
要点課税処分は、例外的事情があれば、瑕疵が明白でなくても当然無効となる。
妥当である。判例は、課税要件の根幹にかかわる過誤があり、不可争的効果を理由に不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情がある場合には、課税処分は当然無効になるとしました(最判昭48.4.26)。瑕疵の明白性を求めずに無効を認めた例です。
判例は、課税処分は課税庁と納税者の間だけのもので、処分の存在を信頼する第三者を保護する必要がないことなどを重く見ました。
【最判昭48.4.26 判決理由】
…一般に、課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであつて、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である。
イ.誤答
青色申告についてした更正処分における理由付記の不備の瑕疵は、後日これに対する審査裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたときは、それにより治癒される。
要点更正処分の理由付記の不備は、後の審査裁決で根拠が示されても治癒されない。
妥当でない。判例は、青色申告の更正処分の理由付記の不備は、後の審査裁決で処分の具体的根拠が明らかにされても、治癒されないとしました(最判昭47.12.5)。
処分庁とは別の機関が後から理由を示しても、処分そのものを慎重で合理的にするという目的は果たせず、相手方も、審査の段階で十分な不服の理由を主張できなかった不利益を負うからです。
【最判昭47.12.5 判決理由】
しかし、更正に理由附記を命じた規定の趣旨が前示のとおりであることに徴して考えるならば、処分庁と異なる機関の行為により附記理由不備の瑕疵が治癒されるとすることは、処分そのものの慎重、合理性を確保する目的にそわないばかりでなく、処分の相手方としても、審査裁決によつてはじめて具体的な処分根拠を知らされたのでは、それ以前の審査手続において十分な不服理由を主張することができないという不利益を免れない。
ウ.誤答
青色申告書による法人税の申告についてした更正処分の取消訴訟において、課税庁は、当該処分の適否に関する攻撃防御方法として、更正の理由と異なる事実を主張することができない。
要点更正処分の取消訴訟で、課税庁は更正の理由と異なる事実を主張できる。
妥当でない。判例は、不動産の取得価額が申告額より低いことを理由とした更正処分の取消訴訟で、課税庁が、その不動産の販売価額が申告額より多いことを主張することができるとしました(最判昭56.7.14)。
判例は、この主張を許しても、更正処分を争う納税者に格別の不利益を与えないことを理由にしました。ただし、更正の理由と異なるどのような事実でも主張できるかは、判断していません。
【最判昭56.7.14 判決理由】
…このような場合に被上告人に本件追加主張の提出を許しても、右更正処分を争うにつき被処分者たる上告人に格別の不利益を与えるものではないから、一般的に青色申告書による申告についてした更正処分の取消訴訟において更正の理由とは異なるいかなる事実をも主張することができると解すべきかどうかはともかく、被上告人が本件追加主張を提出することは妨げないとした原審の判断は、結論において正当として是認することができる。
エ.誤答
市情報公開条例が定める公文書の非公開事由に該当することを理由として付記してされた公文書の非公開決定を行った条例所定の実施機関は、当該非公開決定の取消訴訟において、当該非公開決定が適法であることの根拠として、当該非公開決定の通知書に付記しなかった非公開事由を主張することは許されない。
要点非公開決定の取消訴訟で、通知書に付記しなかった非公開事由も主張できる。
妥当でない。判例は、条例の非公開事由の一つに当たるとの理由を付記してされた非公開決定の取消訴訟で、実施機関が、付記しなかった別の非公開事由に当たると主張することは許されるとしました(最判平11.11.19)。
理由付記の目的は、具体的な理由を通知すること自体でひとまず果たされているので、訴訟で別の理由を主張することまで禁じる趣旨は、理由の通知の定めに含まれないと判例は見ました。
【最判平11.11.19 裁判要旨】
二 公文書の非公開事由を定めた逗子市情報公開条例(平成二年逗子市条例第六号)五条(2)ウに該当することを理由として付記してされた公文書の非公開決定の取消訴訟において、実施機関が、右決定が適法であることの根拠として、当該公文書が同条(2)アに該当すると主張することは、許される。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.16
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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