2025年 国家一般職 問題15
憲法財政
【No. 15】財政に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければなりません(憲法83条)。国の活動の費用は国民が負担するので、そのお金の集め方と使い方を、国民の代表である国会が決めるという考え方です(財政民主主義)。判例も、民主政治の下では、国民は国会の代表者を通して自ら国費を負担することが根本原則だとしています(最大判昭30.3.23)。
収入の面では、租税は法律で定め(84条)、支出の面では、国費の支出と国の債務の負担に国会の議決が要ります(85条)。予算や予備費などの仕組みも、国会が財政を統制するためのものとして読みます。
【最大判昭30.3.23 判決理由】
おもうに民主政治の下では国民は国会におけるその代表者を通して、自ら国費を負担することが根本原則であつて、国民はその総意を反映する租税立法に基いて自主的に納税の義務を負うものとされ(憲法三〇条参照)その反面においてあらたに租税を課し又は現行の租税を変更するには法律又は法律の定める条件によることが必要とされているのである(憲法八四条)。
【日本国憲法 第83条】
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
【日本国憲法 第84条】
第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
【日本国憲法 第85条】
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
1.誤答
憲法は予算について衆議院の優越を認めており、予算案が衆議院で可決され、参議院で衆議院と異なる議決がされた場合、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決されたときは、予算となる。
要点予算は、両院協議会でも一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。
妥当でない。予算について参議院が衆議院と異なった議決をし、両院協議会を開いても意見が一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となります(憲法60条2項)。法律案のように、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決する必要はありません(59条2項)。
通説では、予算は会計年度が始まるまでに成立しないと国の活動に支障が出るので、法律よりも衆議院の優越を強くし、早く確定できるようにしたと解されています。参議院が30日以内に議決しないときも、衆議院の議決が国会の議決になります。
【日本国憲法 第60条第2項】
予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
【日本国憲法 第59条第2項】
衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
2.誤答
国の財政に対する国会の監視の実効性を確保するため、憲法上、内閣は、国会に対し、少なくとも毎四半期ごとに、国の財政状況について報告しなければならないと定められている。
要点財政状況の報告は、憲法上は少なくとも毎年1回である。
妥当でない。憲法が定めるのは、内閣が国会と国民に、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況を報告することです(憲法91条)。少なくとも毎四半期ごとの報告は、財政法46条2項が定めるもので、憲法上の定めではありません。
報告は、国会と国民が国の財政を監視できるようにするための仕組みです。憲法は最低限の回数を定め、より細かい報告を法律で上乗せしています。
【日本国憲法 第91条】
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
【財政法 第46条第2項】
前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。
3.正答
憲法は、新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とすると定めており、納税義務者、課税標準、徴税の手続は、全て法律に基づいて定められなければならないと同時に、法律に基づいて定めるところにまかせられている。
要点納税義務者・課税標準・徴税の手続は、全て法律で定めなければならない。
妥当である。判例は、憲法84条により、租税の創設・改廃だけでなく、納税義務者、課税標準、徴税の手続も、すべて法律に基づいて定めなければならないと同時に、法律に基づいて定めるところに委せられているとしました(最大判昭30.3.23)。
国民は、自らの代表が定めた租税の法律に基づいて納税の義務を負うものなので、誰が、何に対して、どのように税を納めるかという中身も、法律で決める必要がある、という理由です。
【最大判昭30.3.23 判決理由】
されば日本国憲法の下では、租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて前示のとおり法律に基いて定められなければならないと同時に法律に基いて定めるところに委せられていると解すべきである。
4.誤答
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決を経ることなく予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができるが、全て予備費の支出については、内閣は、事前又は事後に国会の承諾を得なければならない。
要点予備費は国会の議決に基づいて設け、その支出は事後に国会の承諾を得る。
妥当でない。予備費は、国会の議決に基づいて設けます(憲法87条1項)。国会の議決なしに設けることはできません。また、予備費の支出について国会の承諾を得るのは、事後です(同条2項)。
予備費は、予見し難い予算の不足に備える仕組みなので、何に使うかを前もって国会が決めることはできません。そこで、予備費の枠を設けることを国会が議決し、内閣の責任で支出したあとで国会の承諾を得る、という形で国会の統制を及ぼしています。
【日本国憲法 第87条】
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
5.誤答
憲法は、国費の支出は国会の議決に基づかなければならないと定めているが、国が債務を負担することについては、そのような定めをしていない。
要点国が債務を負担するにも、国会の議決が必要である。
妥当でない。国費を支出するときだけでなく、国が債務を負担するときにも、国会の議決が必要です(憲法85条)。
通説では、国の債務は、将来、租税などで返すことになり、国民の負担につながるので、支出と同じく国会の議決を要するとしたと解されています。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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