2025年 国家一般職 問題12
憲法参政権
【No. 12】参政権に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
選挙権は、国民主権の原理に基づき、国民が国の政治に参加する固有の権利です。そのため判例は、国民の選挙権やその行使を制限することは原則として許されず、制限するにはやむを得ない事由が必要だとしています。例外として、自ら選挙の公正を害した者などの選挙権を制限することは認められます(最大判平17.9.14)。
選挙に立候補する自由も、選挙人が自由に代表者を選ぶことと表裏の関係にあるので、重要な権利として扱われます(最大判昭43.12.4)。参政権の問題では、選挙に参加する権利の重さと、選挙の公正をどう保つかを比べて考えます。
【最大判平17.9.14 判決理由】
憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。
ア.誤答
憲法は、国民主権の原理に基づき、両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しているが、国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものではない。
要点憲法は、国民に対して投票をする機会を平等に保障している。
妥当でない。在外日本人選挙権訴訟の判例は、憲法は、選挙で投票する権利を国民固有の権利として保障し、その趣旨を確かなものとするため、国民に投票をする機会を平等に保障しているとしました(最大判平17.9.14)。
この考え方から、判例は、国外に住む日本国民が国政選挙で投票することを全く認めていなかった当時の公職選挙法を違憲としました。権利があっても投票できなければ政治に参加できないので、国には、選挙の公正に留意しつつ、投票を現実に可能にする措置をとる責務があるとしています。
【最大判平17.9.14 判決理由】
以上によれば,憲法は,国民主権の原理に基づき,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものとするため,国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。
イ.誤答
議員の当選の効力を定める手続においては、選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者による無効投票について、その投票がどの候補者に対してなされたかを審理確定し、その投票を当該候補者の得票から差し引いて当選人を決定しなければならず、当該無効投票を各当選者の得票から差し引いて見て、最高位落選者より下位となる者の当選を無効とすることはできない。
要点無資格者の投票の帰属は取り調べず、各当選者から差し引いて当否を決める。
妥当でない。判例は、選挙権のない者や代理投票をした者の投票でも、だれに投票したかは、当選の効力を定める手続で取り調べてはならないとしました。そのうえで、帰属の分からない無効投票が混じったときは、それを各当選者の得票から差し引いてみて、最高位の落選者より下位になる者は当選者とできないとしています(最判昭25.11.9)。
この判例が引く先例は、だれがだれに投票したかを明らかにすることは、選挙権の有無にかかわらず投票全般の秘密を守ろうとする無記名投票の制度の精神に反するとしています(最判昭23.6.1)。
【最判昭25.11.9 裁判要旨】
一 選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において取り調べてはならない。
二 無資格者その他による帰属不明の無効投票が他の有効投票中に混入されたときは、それから無効投票を各当選者の得票から差し引いてみて最高位落選者より下位となる者は、これを当選者と決定することができない。
【最判昭23.6.1 判決理由】
けだし、議員の当選の効力を定めるに当つて、何人が何人に対して投票したかを公表することは選挙権の有無にかかわらず選挙投票の全般に亘つてその秘密を確保しようとする無記名投票制度の精神に反するからである。
ウ.正答
労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有しており、組合が、地方議会議員の選挙に当たり、組合が定めた統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、所期の目的を達成するために、立候補を思いとどまるよう勧告又は説得することは当然になし得る。
要点統一候補以外の組合員に立候補を思いとどまるよう勧告・説得することは許される。
妥当である。判例は、労働組合は、団結権の保障の効果として、必要かつ合理的な範囲で組合員に対する統制権を持つとし、統一候補以外の組合員が立候補しようとするときに、断念するよう勧告又は説得することは許されるとしました(最大判昭43.12.4。三井美唄労組事件)。
ただし、その域を超えて、立候補の取りやめを要求し、従わないことを理由に処分することは許されません。立候補の自由は憲法が保障する重要な人権なので、統制権による制約は、その必要性と立候補の自由の重要性を比べて判断すべきだとされました。
【最大判昭43.12.4 裁判要旨】
一 労働組合は、憲法第二八条による労働者の団結権保障の効果として、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においては、その組合員に対する統制権を有する。
三 労働組合が、地方議会議員の選挙にあたり、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進している場合において、統一候補の選にもれた組合員が、組合の方針に反して立候補しようとするときは、これを断念するよう勧告または説得することは許されるが、その域を超えて、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして許されない。
エ.正答
公職選挙法所定の選挙犯罪の処刑者は、選挙の公正を害したものとして、選挙に関与させるのは不適当なものと認めるべきであるから、これを一定の期間、公職の選挙に関与することから排除するのは相当であり、他の一般犯罪の処刑者が選挙権・被選挙権を停止されるのとは別個の事由に基づくものであるから、選挙犯罪の処刑者について、他の一般犯罪の処刑者よりも長期の選挙権・被選挙権の停止期間を定めても、条理に反する差別待遇には当たらない。
要点選挙犯罪の処刑者の選挙権等の停止期間を長くしても、不当な差別ではない。
妥当である。判例は、選挙犯罪の処刑者について、一般の犯罪の処刑者より厳しく選挙権・被選挙権の停止を定めても、条理に反する差別待遇ではないとしました(最大判昭30.2.9)。
選挙犯罪は選挙の公正を害する犯罪なので、その処刑者は、現に選挙の公正を害した者として、しばらく選挙に関与させないことに理由があります。一般の犯罪の処刑者の選挙権の停止とは理由が別なので、扱いが違っても不合理な差別にはならない、という判断です。判例は、選挙の公正を確保するとともに、本人の反省を促す意味もあるとしています。
【最大判昭30.2.9 判決理由】
しかしながら、同法二五二条所定の選挙犯罪は、いずれも選挙の公正を害する犯罪であつて、かかる犯罪の処刑者は、すなわち現に選挙の公正を害したものとして、選挙に関与せしめるに不適当なものとみとめるべきであるから、これを一定の期間、公職の選挙に関与することから排除するのは相当であつて、他の一般犯罪の処刑者が選挙権被選挙権を停止されるとは、おのずから別個の事由にもとずくものである。されば選挙犯罪の処刑者について、一般犯罪の処刑者に比し、特に、厳に選挙権被選挙権停止の処遇を規定しても、これをもつて所論のように条理に反する差別待遇というべきではないのである。
オ.誤答
公職選挙法は、政見を「そのまま放送しなければならない」と定めており、政治上の表現の自由は民主政治の根幹をなすものであるから、一般的に政見放送の事前抑制を認めるべきではなく、政見放送としての品位を損なう言動であったとしても、当該言動がそのままテレビジョン放送をされなかった場合には、法的利益の侵害が認められる。
要点品位を損なう言動がそのまま放送されなくても、法的利益の侵害はない。
妥当でない。判例は、政見放送で身体障害者に対する差別用語を使った発言部分が、品位を損なう言動を禁じた公職選挙法150条の2に違反する場合には、その部分がそのまま放送されなかったとしても、法的利益の侵害があったとはいえないとしました(最判平2.4.17)。
150条の2は、テレビの政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に届き、強い影響力を持つことから、品位を損なう言動が放送される弊害を防ぐために置かれた規定です。それに違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえない、という理由です。
【最判平2.4.17 裁判要旨】
政見放送において身体障害者に対するいわゆる差別用語を使用した発言部分が公職選挙法一五〇条の二に違反する場合、右部分がそのまま放送されなかつたとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があつたとはいえない。
【公職選挙法 第150条の2】
(政見放送における品位の保持)
第百五十条の二 公職の候補者、候補者届出政党、衆議院名簿届出政党等及び参議院名簿届出政党等は、その責任を自覚し、前条第一項又は第三項に規定する放送(以下「政見放送」という。)をするに当たつては、他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくも政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。