2025年 国家一般職 問題11
憲法人権の享有主体性・私人間効力
【No. 11】公務員、未決拘禁者、受刑者の人権に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
公務員や、刑事施設に収容されている人(未決拘禁者・受刑者)も、憲法の人権の保障を受けます。ただし、公務員は行政の中立的な運営のため、収容されている人は逃亡・罪証隠滅の防止と施設の規律・秩序の維持のため、一般の人にはない制限を受けることがあります。
判例は、この制限が許されるかを、目的のためにどの程度の制限が必要かと、制限される自由の内容・性質や具体的な制限の程度とを比べて判断しています(最大判昭58.6.22)。制限は目的のために必要かつ合理的な範囲にとどめることが求められます。
なお、判例の事件で問題になった監獄法は廃止され、いまは刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が定めています。
【最大判昭58.6.22 判決理由】
そして、この場合において、これらの自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである…
ア.誤答
管理職的地位になく、職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員が、職務と全く無関係に公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず、公務員による行為と認識し得ない態様で行った政治活動であっても、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれがないとはいえないから、国家公務員法が禁止する政治的行為に当たる。
要点管理職でない公務員が職務と無関係にした本件の配布は、政治的行為に当たらない。
妥当でない。禁止される「政治的行為」は、職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものに限られ、管理職的地位になく職務に裁量のない公務員が、職務と無関係に行った本件の配布は、これに当たりません(最判平24.12.7)。
判例は、政治活動の自由が民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることを重く見て、禁止は必要やむを得ない限度にとどめるべきだとし、対象を実質的なおそれのある行為に絞りました。
【最判平24.12.7 判決理由】
他方,国民は,憲法上,表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており,この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって,民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると,上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は,国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。
【最判平24.12.7 裁判要旨】
4 管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない一般職国家公務員が,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず,公務員による行為と認識し得る態様によることなく行った本件の政党の機関紙及び政治的目的を有する文書の配布は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえず,国家公務員法102条1項,人事院規則14−7第6項7号,13号により禁止された行為に当たらない。(1〜4につき補足意見,1,2,4につき意見がある。)
イ.誤答
新聞紙、図書等の閲読の自由は、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法第19条、表現の自由を保障した憲法第21条の規定の趣旨、目的から当然に保障されるべきであるが、刑事施設内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合には、未決拘禁者に対し、新聞記事の閲読を一律に許可しないこととすることも許される。
要点閲読の制限は、障害の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきである。
妥当でない。閲読の自由の制限は、放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性(がいぜんせい。そうなる見込みの高さ)がある場合に限られ、その場合でも、制限は障害の防止に必要かつ合理的な範囲にとどめなければなりません(最大判昭58.6.22)。一律に許可しないことまで認めたものではありません。
判例は、未決拘禁者も、拘禁に伴う制約の外では、原則として一般市民としての自由を保障されることを重く見て、制限は真に必要な限度にとどめるべきだとしています。
【最大判昭58.6.22 判決理由】
しかしながら、未決勾留は、前記刑事司法上の目的のために必要やむをえない措置として一定の範囲で個人の自由を拘束するものであり、他方、これにより拘禁される者は、当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者であるから、監獄内の規律及び秩序の維持のためにこれら被拘禁者の新聞紙、図書等の閲読の自由を制限する場合においても、それは、右の目的を達するために真に必要と認められる限度にとどめられるべきものである。したがつて、右の制限が許されるためには、当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、被拘禁者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該新聞紙、図書等の内容その他の具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である。
ウ.正答
喫煙の自由は憲法第13条の保障する基本的人権の一つであるとしても、未決拘禁者に対し刑事施設内で喫煙を許可することにより罪証隠滅や火災発生の場合に逃走のおそれがあることなどを理由に、刑事施設内における喫煙を禁止することは許される。
要点未決拘禁者に対する喫煙の禁止は、憲法13条に違反しない。
妥当である。喫煙の自由が基本的人権の一つに含まれるとしても、未決拘禁者に対する喫煙の禁止は、必要かつ合理的な制限であり、憲法に違反しません(最大判昭45.9.16)。
判例は、一方で、喫煙を許すと罪証隠滅のおそれがあり、火災が起きれば逃走が予想されるので、拘禁の本質的な目的が達せられなくなることを重く見ました。他方で、煙草は生活必需品とまではいえない嗜好品で、禁止しても人体に直接の害を与えないことから、制限の必要性が上回るとしています。
【最大判昭45.9.16 判決理由】
右事実によれば、喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれがあり、また、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想され、かくては、直接拘禁の本質的目的を達することができないことは明らかである。のみならず、被拘禁者の集団内における火災が人道上重大な結果を発生せしめることはいうまでもない。他面、煙草は生活必需品とまでは断じがたく、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対しては相当の精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。したがつて、このような拘禁の目的と制限される基本的人権の内容、制限の必要性などの関係を総合考察すると、前記の喫煙禁止という程度の自由の制限は、必要かつ合理的なものであると解するのが相当であり、監獄法施行規則九六条中未決勾留により拘禁された者に対し喫煙を禁止する規定が憲法一三条に違反するものといえないことは明らかである。
エ.正答
表現の自由を保障した憲法第21条の規定の趣旨、目的に鑑みると、受刑者が親族でない者との間で信書の発受を行うことは、受刑者の性向や、刑事施設内の管理の状況、当該信書の内容など具体的事情の下で、これを許すことにより、刑事施設内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限って、これを制限することが許される。
要点受刑者の信書の発受の制限は、障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に限られる。
妥当である。受刑者が親族でない者と信書を発受することの制限は、具体的事情の下で、放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限って許され、その場合でも必要かつ合理的な範囲にとどめなければなりません(最判平18.3.23)。
判例は、表現の自由の趣旨から、信書の発受の必要性が広く認められることを重く見て、未決拘禁者の新聞閲読と同じ枠組みを受刑者の信書にも当てはめました。
【最判平18.3.23 判決理由】
…表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的にかんがみると,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,受刑者の性向,行状,監獄内の管理,保安の状況,当該信書の内容その他の具体的事情の下で,これを許すことにより,監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許されるものというべきであり,その場合においても,その制限の程度は,上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である。そうすると,監獄法46条2項は,その文言上は,特に必要があると認められる場合に限って上記信書の発受を許すものとしているようにみられるけれども,上記信書の発受の必要性は広く認められ,上記要件及び範囲でのみその制限が許されることを定めたものと解するのが相当であり,…
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.11
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
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