2024年 国家総合職 問題9
行政法行政指導・行政契約
【No. 9】行政手続法が規定する行政指導に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政指導は、指導、勧告、助言などによって相手方に一定の行為を求めるものですが、処分と違って義務を課す力はなく、相手方の任意の協力によってのみ実現されます(行政手続法32条1項)。
そのため、行政手続法の行政指導の決まりは、二つの方向から整理できます。
従うかどうかの自由を守る決まり:従わなかったことを理由に不利益に扱うことの禁止(同条2項)、申請者が従わないと表明したあとの指導の継続の禁止、使えない権限をちらつかせて従わせることの禁止
誰が何を求めているのかを明らかにする決まり:趣旨・内容・責任者の明示、求めに応じた書面の交付、複数の者に共通する行政指導指針の公表
【行政手続法 第32条】
(行政指導の一般原則)
第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
1.正答
行政指導指針は原則として意見公募手続をとって定めなければならないが、行政指導指針のうち、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のものについては、意見公募手続をとる必要はない。
要点公にされない行政指導指針には、意見公募手続の規定は適用されない。
妥当である。行政指導指針は命令等に当たり、定めるときは原則として意見公募手続をとります(行政手続法39条1項)。ただし、法令の規定や慣行、命令等を定める機関の判断によって公にされるもの以外のものは、意見公募手続の規定の適用から除かれています(3条2項6号)。
意見公募手続は、案を公示して広く一般の意見を求める手続です。公にしない指針にこの手続をとると、案の公示で中身を公にすることになり、公にしないとした扱いと両立しません。
【行政手続法 第39条第1項】
(意見公募手続)
第三十九条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
【行政手続法 第3条第2項】
(適用除外)
2 次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。
(略)
六 審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの
2.誤答
地方公共団体の機関がする行政指導のうち、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものについては、行政手続法の規定の適用はないが、その根拠となる規定が法律又は命令に置かれているものについては、行政手続法の規定が適用される。
要点地方公共団体の機関の行政指導は、根拠を問わず行政手続法の適用外である。
妥当でない。地方公共団体の機関がする行政指導には、根拠となる規定が法律や命令に置かれているものも含めて、一律に、行政手続法の行政指導の規定は適用されません(行政手続法3条3項)。根拠の規定で適用が分かれるのは、地方公共団体の機関がする処分です。
行政指導は、法律の事項と条例の事項のどちらを実施するものかをはっきり区分できないので、地方自治に配慮して、まとめて適用から外されています。地方公共団体には、同法の趣旨にのっとった措置を講ずる努力義務があります(46条)。
【行政手続法 第3条第3項】
(適用除外)
3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。
【行政手続法 第46条】
(地方公共団体の措置)
第四十六条 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3.誤答
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができ、かつそれを行使する意思がある場合においてする行政指導であっても、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない旨行政手続法に規定されている。
要点権限を殊更に示す行政指導の禁止は、権限を行使できない場合などの定めである。
妥当でない。権限を行使し得る旨を殊更に示して、相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせてはならないとする定めは、許認可等の権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合の行政指導についてのものです(行政手続法34条)。
使えない、又は使うつもりのない権限をちらつかせると、相手方は不利益をおそれて従うほかなくなり、任意の協力ではなくなるからです。権限を行使できる場合にその旨を示すときは、根拠の条項・要件・当てはまる理由を示さなければなりません(35条2項)。
【行政手続法 第34条】
(許認可等の権限に関連する行政指導)
第三十四条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。
【行政手続法 第35条第2項】
(行政指導の方式)
2 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
4.誤答
既に文書又は電磁的記録によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求める行政指導が口頭でされた場合であっても、その相手方から当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない旨行政手続法に規定されている。
要点既に文書で通知した事項と同じ内容を求める指導には、書面交付義務がない。
妥当でない。口頭の行政指導について相手方から書面の交付を求められたときは、行政上特別の支障がない限り交付しなければなりませんが(行政手続法35条3項)、既に文書又は電磁的記録で相手方に通知されている事項と同一の内容を求める行政指導は、この義務の対象から除かれています(同条4項2号)。
書面の交付は、相手方が、求められている内容を確かめて、従うかどうかを判断できるようにするためのものです。同じ内容が既に文書などで届いていれば、その目的は果たされています。
【行政手続法 第35条第3項・第4項】
(行政指導の方式)
3 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
5.誤答
法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものの相手方は、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであっても、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。
要点意見陳述の手続を経てされた行政指導には、中止等の求めはできない。
妥当でない。法令違反の是正を求める行政指導で、根拠が法律に置かれているものの相手方は、要件に適合しないと思うときは、中止その他必要な措置を求めることができます。ただし、その行政指導が相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、求めることができません(行政手続法36条の2第1項)。
中止等の求めは、相手方の申出をきっかけに、行政機関に改めて調べ直させる仕組みです。指導の内容と理由を示されて意見を述べる機会を既に与えられていれば、言い分は指導の前に聴かれています。
【行政手続法 第36条の2第1項】
(行政指導の中止等の求め)
第三十六条の二 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.9
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
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