2024年 国家総合職 問題8
行政法行政法の法源
【No. 8】行政法の効力に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政法の効力は、時間・場所・人の3つの面から整理できます。
時間:法令は、公布されて国民が知りうる状態に置かれ、施行期日が来て効力を生じる。廃止されるか、定められた期限が来るまで効力が続く
場所:その法令を定めた団体の区域に及ぶのが原則(国の法令は日本の領域、条例はその地方公共団体の区域)
人:区域の中にいる人には、国籍を問わず及ぶのが原則。法令の目的によっては、区域の外にいる人の行為にも及ぶ
ア.誤答
法令が発効するためには、公布がされていることと施行期日が到来していることの双方が要件となるが、法律の施行日は重要事項であるため附則など法律において定めなければならず、政令で定める日から施行するなどとして施行日の定めを政令に委任することは許されない。
要点法律の施行期日の定めを、政令に委任することもできる。
妥当でない。公布と施行期日の到来の双方が要る点は記述のとおりですが、施行期日の定めは、政令に委任することもできます。例えば、官報の発行に関する法律の附則は、「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と定めています。
法律は、公布の日から20日を経過した日に施行するのが原則で、法律で違う施行期日を定めればそれによります(法の適用に関する通則法2条)。施行には政令の整備や周知などの準備が要るので、法律で期限の枠を決め、具体的な日を政令に任せるのです。
【法の適用に関する通則法 第2条】
(法律の施行期日)
第二条 法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる。
イ.正答
法令の公布の方法については、明治憲法下では公式令という勅令により官報をもってする旨が定められていたが、日本国憲法の施行と同時に公式令が廃止された後も、法令の公布を官報をもってする従前の方法が行われてきたのであるから、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもって法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前どおり官報をもってするものと解するのが相当であって、たとえ事実上法令の内容が一般国民の知り得る状態に置かれ得たとしても、いまだ法令の公布があったとすることはできないとするのが判例である。
要点法令の公布は、他の方法によることが明らかでない限り官報で行われる。
妥当である。記述は判例のとおりです(最大判昭32.12.28)。報道などで事実上内容が知られても、官報による公布がなければ、公布があったとはいえません。
判例は、法令が国民を拘束するには、その内容が一般国民の知りうる状態に置かれることが前提で、そのための国家の公の行為として公布の制度がとられていることを重く見ました。
令和5年12月公布の官報の発行に関する法律(令和7年4月施行)で、法令の公布は官報で行うと定められ、いまは法律の根拠があります。
【最大判昭32.12.28 判決理由】
思うに、成文の法令が一般的に国民に対し現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることが前提要件とせられるのであつて、このことは、近代民主国家における法治主義の要請からいつて、まさにかくあるべきことといわなければならない。
【最大判昭32.12.28 判決理由】
しかしながら、公式令廃止後の実際の取扱としては、法令の公布は従前通り官報によつてなされて来ていることは上述したとおりであり、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもつて法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもつてせられるものと解するのが相当であつて、たとえ事実上法令の内容が一般国民の知りうる状態に置かれえたとしても、いまだ法令の公布があつたとすることはできない。
【官報の発行に関する法律 第3条第1項】
(官報による公布等)
第三条 日本国憲法改正、法律及び法律に基づく命令(最高裁判所規則その他の規則で内閣府令で指定するものを含む。以下「法令」という。)、条約並びに詔書の公布は、官報をもって行う。
ウ.正答
条例は、当該地方公共団体の区域内においてのみ効力を有するのが原則であるが、地方自治法では、普通地方公共団体は、その区域外においても、関係普通地方公共団体との協議により公の施設を設けることができるとされている一方、公の施設の設置及び管理に関する事項は条例で定めなければならないともされているので、当該地方公共団体が区域外に設置した公の施設の設置及び管理について条例を定めた場合には、その条例は、当該地方公共団体の区域外において効力を有する。
要点区域外に設けた公の施設の設置管理条例は、区域外でも効力を持つ。
妥当である。普通地方公共団体は、関係普通地方公共団体との協議により区域外にも公の施設を設けることができ(地方自治法244条の3第1項)、その設置と管理に関する事項は条例で定めます(244条の2第1項)。通説では、この条例は区域外でも効力を持つと解されています。
条例の効力が原則として区域内に限られるのは、ほかの区域にはその団体の自治が及ぶからです。区域外の設置は、相手の団体と協議し、議会の議決も経て行うので(244条の3第3項)、条例を及ぼしても相手の自治を損ないません。
【地方自治法 第244条の3第1項・第3項】
(公の施設の区域外設置及び他の団体の公の施設の利用)
第二百四十四条の三 普通地方公共団体は、その区域外においても、また、関係普通地方公共団体との協議により、公の施設を設けることができる。
3 前二項の協議については、関係普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
【地方自治法 第244条の2第1項】
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
エ.誤答
日本の法令の規定は、日本国内での外国人の行為や、日本国外での日本国民の行為について適用されることがあるが、日本国外での外国人の行為には適用されないため、例えば、国外に在住する外国人に日本の行政文書の開示請求権を付与することはできない。
要点国外の外国人にも、日本の行政文書の開示請求権が認められている。
妥当でない。誤りは2か所あります。
1つ目は、国外での外国人の行為には適用されないとする点です。例えば刑法は、内乱や通貨偽造などの罪を日本国外で犯した全ての者に適用されます(刑法2条)。
2つ目は、開示請求権の点です。行政機関の保有する情報の公開に関する法律は「何人も」開示を請求できるとし(3条)、国外に住む外国人も請求できます。主体は国民が中心ですが、外国人を除く積極的な意義は乏しく、広く世界に情報の窓を開く意義もあるとして、国内・国外を問わない形にされました。
【刑法 第2条】
(すべての者の国外犯)
第二条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
(略)
二 第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
(略)
四 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
(略)
【行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第3条】
(開示請求権)
第三条 何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第一項第四号及び第五号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。
オ.誤答
特定の事態に対応するために制定された暫定的立法で法令自体に有効期限を定めていないものを臨時法といい、一定の有効期間を付した法令を限時法という。前者は、法令の廃止行為がなければ効力を失わないのに対し、後者は、法令の定める期日又は期間内に失効又は廃止となり、当該法令の改正によって有効期間を延長することはできない。
要点限時法も、改正によって有効期間を延長することができる。
妥当でない。臨時法と限時法の説明は記述のとおりですが、限時法も、期限が来る前に改正によって有効期間を延長することができます。実際にも、期限の到来を前に法律を改正して期限を延ばすことは、よく行われています。
有効期間を定めるのは立法者自身の判断なので、同じ立法の権限で後から改めることができます。期限を付けたからといって、立法者が将来その法令を改正する権限まで失うわけではありません。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.8
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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