2024年 国家総合職 問題7
憲法司法権
【No. 7】司法権に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
日本国憲法は、すべての司法権を、最高裁判所と法律で設ける下級裁判所という通常裁判所の系列に属させ、その系列の外の特別裁判所を禁じています(76条1項・2項)。そのうえで、裁判官は、良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にだけ拘束されます(同条3項)。
裁判所が審判するのは、法律上の争訟、つまり当事者の間の具体的な権利義務や法律関係の存否についての争いで、法令を当てはめて最終的に解決できるものです(裁判所法3条1項)。司法権の問題では、裁判がほかの国家機関から独立して行われることと、司法権が及ぶ範囲とを、分けて考えます。
【日本国憲法 第76条】
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
【裁判所法 第3条第1項】
(裁判所の権限)
第三条 裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
ア.誤答
国会の両議院は、それぞれ国政調査権を有しており、国政に関連のない純粋に私的な事項を除き、国政調査権の及ぶ範囲は国政のほぼ全般にわたる。司法権との関係では、国政調査権に基づき、判決内容の当否や裁判官の訴訟指揮の仕方などに関する調査を行うことは、司法権の独立を侵害するものではないと一般に解されている。
要点判決内容の当否や訴訟指揮を調べる国政調査は、司法権の独立を侵す。
妥当でない。両議院が国政調査権を持ち、その範囲が国政のほぼ全般に及ぶという前半は正しい記述です(日本国憲法62条)。しかし、通説では、判決内容の当否や裁判官の訴訟指揮の仕方を調べることは、司法権の独立を侵すので許されないと解されています。
裁判官は、良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にだけ拘束されます(76条3項)。国会が個々の裁判の当否を調べて批判すると、裁判官に事実上の圧力がかかり、この独立が損なわれます。一方、裁判と並行して、立法などの目的で同じ事実を調べることは許されると解されています。
【日本国憲法 第62条】
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
イ.誤答
司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。裁判所相互の上下関係は、行政機関のような指揮命令関係ではなく、それぞれの裁判所は独立して司法権を行使する。最高裁判所及び下級裁判所には、権力分立の観点から裁判所の自主性を確保するための規則制定権がそれぞれ独自に認められており、その対象は、裁判所の内部規律や司法事務処理など裁判所の自律権に関するもののほか、訴訟に関する手続など一般国民が訴訟関係者となったときに拘束されるものも含まれる。
要点規則制定権は最高裁判所にあり、下級裁判所は委任を受けて規則を定める。
妥当でない。規則を定める権限を憲法が与えているのは最高裁判所で(日本国憲法77条1項)、下級裁判所は、最高裁判所から委任を受けて、下級裁判所に関する規則を定めることができるにとどまります(同条3項)。下級裁判所に、それぞれ独自の規則制定権があるのではありません。規則の対象に訴訟に関する手続が含まれることなど、ほかの部分は正しい記述です。
通説では、規則制定権は、裁判所の内部のことや専門的・技術的な訴訟の手続を、実情に通じた裁判所自身が決められるようにし、司法の自主性を確保するためのものと解されています。
【日本国憲法 第77条第1項・第3項】
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
ウ.正答
裁判所が扱う「一切の法律上の争訟」とは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、それが法律を適用することにより終局的に解決することができるものに限られる。また、公益の保護を目的とする客観訴訟は、個人の権利利益の保護を目的とする主観訴訟とは異なり、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、具体的事件性を前提とせずに出訴することができるとされている。
要点客観訴訟は、法律に定める場合に、法律に定める者に限り提起できる。
妥当である。前半の法律上の争訟の説明は判例のとおりです(最判平14.7.9)。後半の客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)は、法律上の争訟に当たらないので、法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起できます(行政事件訴訟法42条)。
裁判所の本来の役目は、個人の権利利益をめぐる具体的な争いを裁くことです。客観訴訟は、法令が正しく適用されることや公益を守るための訴訟なので、法律が特に裁判所に与えた権限(裁判所法3条1項の「その他法律において特に定める権限」)として、法律が認めた範囲でだけ扱います。
【最判平14.7.9 判決理由】
行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる…
【行政事件訴訟法 第42条】
(訴えの提起)
第四十二条 民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
エ.正答
司法権の範囲について、明治憲法は、民事裁判及び刑事裁判のみを司法権として通常裁判所に属せしめ、行政事件の裁判は通常裁判所とは別系統の行政裁判所の所管とした。これに対して、日本国憲法は、憲法第76条第2項で特別裁判所の設置や行政機関による終審裁判を禁止して、行政事件の裁判も含めて全ての裁判作用を司法権とし、これを通常裁判所に属するものとしている。
要点日本国憲法は、行政事件の裁判も含めて全ての裁判作用を通常裁判所に属させた。
妥当である。明治憲法の下では、行政事件の裁判は、通常裁判所とは別系統の行政裁判所が扱っていました。日本国憲法は、特別裁判所の設置と、行政機関が終審として裁判をすることを禁じ(76条2項)、行政事件を含むすべての裁判を、通常裁判所の系列に属させています。ただし、行政機関が前審として審判すること(行政不服審査など)は妨げられません(裁判所法3条2項)。
通説では、行政事件を行政の側の機関が最後まで裁くと、行政が自分の行為の適法性を自分で判断することになるので、独立した裁判所が最終的に判断する仕組みにしたと解されています。
【裁判所法 第3条第2項】
(裁判所の権限)
前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.7
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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