2024年 国家総合職 問題6
憲法内閣の組織と権能
【No. 6】内閣に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
内閣と内閣総理大臣の関係は、次の2つの点を分けると整理できます。
行政権は、内閣総理大臣個人ではなく、内閣という合議体に属し(日本国憲法65条)、内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います(66条3項)。そのため、行政の重要な事柄は、閣議で決めた内閣の意思に基づいて行われます。
その中で、内閣総理大臣は内閣の首長(66条1項)として、内閣がまとまって動けるようにする役割を持ちます。国務大臣を任命し罷免する権限などは、このまとまりを保つためのものです。
【日本国憲法 第65条】
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
【日本国憲法 第66条第1項・第3項】
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
ア.誤答
ある法律が閣議において全員一致で違憲と議決された場合、直ちに当該法律の執行を停止することができると一般に解されているが、これは、憲法第99条が憲法尊重擁護義務を定めていることを根拠としている。
要点内閣は、違憲と考える法律でも、その執行を停止することはできない。
妥当でない。内閣は、法律を誠実に執行しなければならず(日本国憲法73条1号)、通説では、閣議で違憲と判断した法律でも、その執行を停止することはできないと解されています。法律が憲法に適合するかを最終的に決める権限は、裁判所にあります(81条)。憲法尊重擁護義務(99条)も、内閣に法律の執行を止める権限を与えるものではありません。
内閣は、国会が定めた法律を執行する立場です。内閣が違憲と考えるだけで法律を止められるとすると、内閣が国会の立法を覆せることになってしまいます。
【日本国憲法 第73条第1号】
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
【日本国憲法 第81条】
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
【日本国憲法 第99条】
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
イ.誤答
憲法第66条第3項は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と定めており、ここにいう「責任」とは、憲法第69条による総辞職の場合も含め、全て法的責任であると一般に解されている。
要点内閣が国会に負う連帯責任は、法的責任ではなく政治的責任と解されている。
妥当でない。通説では、内閣が国会に対して負う連帯責任(日本国憲法66条3項)は、政治的な責任と解されています。責任を問われる原因は違法な行為に限られず、政策の当否なども含み、問う方法も、衆議院の不信任の決議(69条)に限られません。
内閣は、国会の信任の上に成り立っています(議院内閣制)。そのため、国会は、内閣の仕事全般について、質疑や決議などで政治的に責任を問うことができます。
【日本国憲法 第69条】
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
ウ.誤答
内閣が条約を締結するには、事前又は事後に、国会の承認を経なければならない。条約とは、当事国に一定の権利義務関係を設定することを目的とした、国家間の文書による約束を意味するが、条約の委任に基づき具体的問題についてなされる取り決めも国会の承認が必要であると一般に解されている。
要点条約の委任に基づく具体的な取決めには、国会の承認は要らない。
妥当でない。前半は日本国憲法73条3号のとおりです。しかし、国会の承認が必要な条約は、内閣が結ぶすべての国際約束ではありません。通説では、すでに承認を経た条約を執行するための細部の取決めや、条約の委任に基づく具体的な取決めは、外交関係の処理(同条2号)として、内閣だけで締結できると解されています。政府も、国会の答弁で同じ考え方を示しています。
国会の承認は、立法や財政に関わる約束などに、国民の代表である国会の判断を及ぼすためのものです。もとの条約の範囲内での取決めには、すでに国会の判断が及んでいるので、改めて承認は要りません。
【日本国憲法 第73条】
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
(略)
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
(略)
エ.正答
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決により指名され、これに基づいて天皇が任命する。また、国務大臣は、内閣総理大臣により任命され、天皇により認証される。
要点首相は国会が指名し天皇が任命し、国務大臣は首相が任命し天皇が認証する。
妥当である。内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名され(日本国憲法67条1項)、天皇がその指名に基づいて任命します(6条1項)。国務大臣は内閣総理大臣が任命し(68条1項)、その任免を天皇が認証します(7条5号)。
天皇は国政に関する権能を持たないので、行うのは、国会や内閣総理大臣が実質的に決めたことを、形式的に完成させたり公に証明したりする行為だけです。
【日本国憲法 第67条第1項】
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
【日本国憲法 第6条第1項】
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
【日本国憲法 第68条第1項】
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
【日本国憲法 第7条第5号】
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
オ.正答
内閣総理大臣は、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあり、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するとするのが判例である。
要点首相は、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に指導・助言等の指示ができる。
妥当である。行政各部を指揮監督するには閣議にかけて決定した方針が要りますが(内閣法6条)、判例は、そのような方針がない場合でも、内閣総理大臣は、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に指導、助言等の指示を与える権限を持つとしました(最大判平7.2.22。ロッキード事件)。
判例は、内閣総理大臣が内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあることを重く見て、閣議の決定を待たずに変化する行政の必要に応えられるよう、この権限を認めました。
【最大判平7.2.22 判決理由】
内閣総理大臣は、憲法上、行政権を行使する内閣の首長として(六六条)、国務大臣の任免権(六八条)、内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(七二条)を有するなど、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして、内閣法は、閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(四条)、内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(六条)、行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(八条)。このように、内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。
【内閣法 第6条】
第六条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.6
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。