2024年 国家総合職 問題28
民法請負・委任・その他の契約
【No. 28】民法上の寄託に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
寄託者及び受寄者は、書面による寄託であるか否かを問わず、受寄者が寄託物を受け取るまでは、いつでも契約の解除をすることができる。この場合において、その契約の解除によって損害を受けたときは、相手方に対し、その損害の賠償を請求することができる。
要点受取前に自由に解除できる受寄者は、無報酬で書面によらない寄託の受寄者に限る。
妥当でない。寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約を解除できます(民法657条の2第1項前段)。これに対し、受寄者が受取前に解除できるのは、無報酬で、書面によらない寄託の場合に限られます(同条2項)。
また、解除による損害の賠償を請求できるのは、寄託者の解除によって損害を受けた受寄者です(同条1項後段)。双方が相手方に請求できるのではありません。
寄託者は、預けた後ならいつでも返還を求められるので、預ける前にやめることも認めます。無報酬の受寄者の解除は、軽率な約束から解放するためのもので、書面にしたときは認めません。
【民法 第657条の2第1項・第2項】
(寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等)
第六百五十七条の二 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
2 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
イ.誤答
受寄者は、委任契約における受任者が善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負うのと同様、有償・無償を問わず、善良な管理者の注意をもって、受取時の状態を維持するよう寄託物を保管する義務を負う。
要点無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意で保管すれば足りる。
妥当でない。委任の受任者は、報酬の有無を問わず善良な管理者の注意を負いますが(民法644条)、受寄者の注意義務は、報酬の有無で違います。
無報酬の受寄者:自己の財産に対するのと同一の注意で保管すれば足りる(659条)
報酬を受ける受寄者:善良な管理者の注意(その立場の人に通常求められる注意)をもって保管する(400条)
通説では、無報酬の受寄者は、相手のために好意で物を預かる立場なので、注意の程度を軽くしていると解されています。
【民法 第659条】
(無報酬の受寄者の注意義務)
第六百五十九条 無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
【民法 第400条】
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
【民法 第644条】
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
ウ.誤答
当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。寄託物の返還は、特段の意思表示がないときは、寄託者の現在の住所でしなければならない。
要点寄託物の返還は、寄託者の住所ではなく、その保管をすべき場所でする。
妥当でない。返還の時期を定めなかったとき、受寄者がいつでも返還できる点は、そのとおりです(民法663条1項)。しかし、寄託物の返還は、寄託者の現在の住所ではなく、その保管をすべき場所でしなければなりません(664条本文)。受寄者が正当な事由で保管場所を変えたときは、今の場所で返還できます(同条ただし書)。
通説では、寄託は受寄者が決まった場所で物を保管する契約なので、返還もその場所ですれば足り、受寄者に物を運ぶ負担を負わせないと解されています。
【民法 第663条第1項】
(寄託物の返還の時期)
第六百六十三条 当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。
【民法 第664条】
(寄託物の返還の場所)
第六百六十四条 寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
エ.正答
寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた寄託者の損害賠償請求及び受寄者が支出した費用の償還請求は、寄託者が寄託物の返還を受けた時から1年以内にしなければならない。
要点寄託物の一部滅失等による損害賠償と費用償還は、返還から1年以内に請求する。
妥当である。寄託物の一部滅失又は損傷による損害の賠償と、受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法664条の2第1項)。
返還から時間がたつと、損傷が受寄者の保管中に生じたのかどうかが分からなくなり、争いになります。そこで、早く決着させるために期間を区切っています。一方、物が受寄者の手元にある間に寄託者の損害賠償請求権の時効が完成するのは不合理なので、返還から1年を経過するまでは時効が完成しないとしています(同条2項)。
【民法 第664条の2】
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百六十四条の二 寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
オ.正答
受寄者が、複数の者が寄託した種類及び品質が同一である物を、各寄託者の承諾を得て、混合して保管した場合、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができ、寄託物の一部が滅失したときは、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。
要点混合寄託の一部が滅失したときは、寄託した物の割合に応じた数量を請求できる。
妥当である。各寄託者の承諾を得て混合して保管したときは、寄託者は、寄託した物と同じ数量の物の返還を請求でき(民法665条の2第2項)、一部が滅失したときは、総寄託物に対する割合に応じた数量の返還を請求できます(同条3項)。
混合すると、各寄託者は自分が預けた個々の物の所有権を失い、混ざった物全体について持分を持つことになると考えられています。そのため、混合には各寄託者の承諾が要り(同条1項)、一部が滅失したときは、持分の割合に応じて全員で減った分を負担します。
【民法 第665条の2】
(混合寄託)
第六百六十五条の二 複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
2 前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
3 前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.28
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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