2024年 国家総合職 問題24
民法抵当権
【No. 24】法定地上権に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
法定地上権は、土地とその上の建物が同じ所有者のものだったところ、抵当権の実行で別々の所有者になったときに、建物のために地上権が設定されたものとみなす制度です(民法388条)。
自分の土地に自分の建物のための借地権は設定できないので、そのままでは、競売の後に建物が土地を使う権利を失います。判例は、それが、建物の所有者や、建物が土地を使えることを前提に担保の価値を見積もる抵当権者の合理的な意思に反することを根拠にしています(最判平9.2.14)。
そのため、成立するかどうかは、抵当権を設定した当時の状況から、抵当権者に予期していなかった負担を負わせることにならないかで判断されます。
【最判平9.2.14 判決理由】
土地と地上建物を別個の不動産とし、かつ、原則として土地の所有者が自己のために借地権を設定することを認めない我が国の法制上、同一所有者に属する土地又は地上建物に設定された抵当権が実行されて土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合、建物所有者が当該土地の占有権原を有しないことになるとすれば、これは、土地が競売によって売却されても、土地の買受人に対して土地の使用権を有しているものとする建物の所有者や土地の使用権があるものとして建物について担保価値を把握しているものとする抵当権者の合理的意思に反する結果となる。そこで、民法三八八条は、右合理的意思の推定に立って、このような場合には、抵当権設定者は競売の場合につき地上権(以下「法定地上権」という。)を設定したものとみなしているのである。その結果、建物を保護するという公益的要請にも合致することになる。
【民法 第388条】
(法定地上権)
第三百八十八条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
ア.誤答
甲土地を所有するAが、甲土地上の乙建物の所有権をBから譲り受けた後、乙建物の登記名義が前主Bのままの状態で甲土地に抵当権を設定し、当該抵当権が実行された場合、乙建物のために法定地上権は成立しない。
要点建物の登記が前主名義のままでも、法定地上権は成立する。
妥当でない。判例は、土地と建物の所有者が、建物を譲り受けて所有権移転登記をしないまま土地に抵当権を設定した場合でも、法定地上権の成立は妨げられないとしました(最判昭48.9.18)。
判例は、法定地上権の制度は現に存在する建物を守るところに意義があるとしています。土地に抵当権を取る人は、現地を見て建物があることを知り、それを前提に土地を評価するのがふつうなので、建物の登記の名義がどうであっても、予期しない負担にはなりません。
【最判昭48.9.18 判決理由】
このように、法定地上権制度は、要するに存立している建物を保護するところにその意義を有するのであるから、建物所有者は、法定地上権を取得するに当たり、対抗力ある所有権を有している必要はないというべきである。
イ.正答
Aが所有する甲土地上に乙建物を所有する借地人Bが、乙建物に抵当権を設定した後、AがBから乙建物の所有権を取得し、その後に当該抵当権が実行された場合、乙建物のために法定地上権は成立しない。
要点抵当権設定当時に土地と建物の所有者が異なれば、法定地上権は成立しない。
妥当である。判例は、抵当権を設定した当時、土地と建物の所有者が異なるときは、競売の際に同じ人の所有になっていても、民法388条は適用されないとしました(最判昭44.2.14)。土地への抵当権でも、建物への抵当権でも同じです。
設定当時、Bの建物は借地権(建物を所有するための土地の賃借権)で土地を使っていました。判例は、借地上の建物の抵当権の効力は原則として敷地の賃借権に及ぶとしています(最判昭40.5.4)。抵当権者は借地権付きの建物として価値を見積もっており、建物を守るにも借地権で足ります。
【最判昭44.2.14 裁判要旨】
抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法三八八条の規定は適用または準用されない。
【最判昭40.5.4 裁判要旨】
一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。
ウ.誤答
甲土地及び甲土地上の乙建物を所有するAが、Bを抵当権者として甲土地及び乙建物に共同抵当権を設定した後に、Bの承諾を得て乙建物を取り壊し、甲土地上に新たに丙建物を建築した場合において、甲土地に対する抵当権の実行により、甲土地と丙建物の所有権が別異の者に帰属することとなったときは、特段の事情のない限り、丙建物のために法定地上権が成立する。
要点共同抵当の後に再築された新建物には、原則として法定地上権は成立しない。
妥当でない。判例は、土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が取り壊されて新しい建物が建てられた場合には、新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情がない限り、新建物のために法定地上権は成立しないとしました(最判平9.2.14)。
判例は、土地と建物の全体の担保価値を押さえた抵当権者は、建物が取り壊されれば、土地を更地として評価しようとするのが合理的な意思で、抵当権の付いていない新建物に法定地上権を認めると、不測の損害を受けるとしています。
【最判平9.2.14 判決理由】
これに対し、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし、土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから、抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり、抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。
エ.正答
Aが所有する甲土地上にAの子Bが所有する乙建物が建っていたが、Aは、Cを抵当権者として甲土地に1番抵当権を設定した後に死亡し、Bが甲土地を単独で相続した。その後、BがDを抵当権者として甲土地に2番抵当権を設定した後、1番抵当権が実行されてEが甲土地を競落した場合、乙建物のために法定地上権は成立しない。
要点1番抵当権の設定時に所有者が異なれば、後に同一所有でも成立しない。
妥当である。判例は、土地に1番抵当権を設定した当時、土地と建物の所有者が異なっていた場合には、その後、土地と建物が同じ人の所有になってから後順位の抵当権が設定されても、抵当権の実行で1番抵当権が消滅するときは、法定地上権は成立しないとしました(最判平2.1.22)。本肢では、1番抵当権の設定当時、土地はA、建物はBの所有でした。
判例は、1番抵当権者は、法定地上権の負担のない土地として担保価値を押さえているので、後の事情で法定地上権が成立するとすれば、その担保価値を損なうことを理由にしています。
【最判平2.1.22 判決理由】
すなわち、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。けだし、民法三八八条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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