2024年 国家総合職 問題23
民法占有・所有権
【No. 23】共有に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 (参考) 民法 (裁判による共有物の分割) 第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 〔第2項以下略〕
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
共有は、1つの物を複数の人が持分の割合で持つ形です。判例は、各共有者が持つ持分権は、それ自体が所有権の性質を持つとしています(最大判昭62.4.22)。そこから、次のように整理できます。
使うこと:各共有者は、共有物の全部を、持分に応じて使える
持分権を守ること:持分権が侵害されれば、各共有者は、単独でその侵害を除くよう求められる。一方、金銭で償われる損害は、持分の割合に応じて各共有者に生じる
分割:共有は争いが起きやすく、物を十分に生かしにくい形なので、いつでも分割して単独の所有に移れることを原則にしている
【最大判昭62.4.22 判決理由】
共有とは、複数の者が目的物を共同して所有することをいい、共有者は各自、それ自体所有権の性質をもつ持分権を有しているにとどまり、共有関係にあるというだけでは、それ以上に相互に特定の目的の下に結合されているとはいえないものである。
ア.誤答
共有物の各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができるが、共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対し自己の持分を超える使用の対価を償還する必要はない。
要点共有物を使用する共有者は、持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
妥当でない。前半はそのとおりですが、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、ほかの共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法249条2項)。「償還する必要はない」とする部分が誤りです。
各共有者が使えるのは、持分に応じた範囲までです(同条1項)。それを超えて使えば、ほかの共有者の持分の分まで使っていることになるので、その対価を返す義務をはっきり定め、共有者の間の争いを防いでいます。
【民法 第249条第1項・第2項】
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
イ.正答
共有に係る土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から不法占有者に対してその損害賠償を求める場合には、各共有者は、自己の共有持分の割合に応じて請求をすべきであり、その割合を超えて請求をすることは許されない。
要点共有地の不法占有による損害賠償は、各共有者が持分の割合に応じて請求する。
妥当である。判例は、共有の土地が不法に占有されたことを理由に損害賠償を求める場合には、各共有者は、共有持分の割合に応じて請求すべきで、その割合を超えて請求することは許されないとしました(最判昭51.9.7)。
判例は、ほかの共有者の持分については、何の請求権も持たないことを理由にしています(最判昭41.3.3)。侵害を除くこと(妨害排除)は共有物の全部について単独で求められますが、金銭の賠償は持分ごとに分かれます。
【最判昭51.9.7 裁判要旨】
共有者は、共有物に対する不法行為によつて被つた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
【最判昭41.3.3 判決理由】
よつて案ずるに、共有物に対する不法行為による損害賠償請求権は、各共有者が自己の持分に応じてのみこれを行使しうべきものであり、他人の持分に対してはなんら請求権を有するものではない。
ウ.正答
共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加える行為をしている場合には、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、当該行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく、共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情があるときを除き、当該行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできる。
要点無断で変更が加えられたときは、行為の禁止と原状回復を求めることができる。
妥当である。判例は、共有者の1人がほかの共有者の同意を得ずに共有物に変更を加える行為をしている場合、ほかの共有者は、各自の持分権に基づいて、行為の全部の禁止を求められるだけでなく、特段の事情がない限り、原状に復させることも求められるとしました(最判平10.3.24)。
判例は、持分権が侵害されれば単独で妨害の排除を求められること、同意のない変更はほかの共有者の持分権の侵害であることを理由にしています。
判決が挙げる251条は、令和5年4月施行の改正で、全員の同意が要る変更から、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除きました(251条1項)。
【最判平10.3.24 判決理由】
けだし、共有者は、自己の共有持分権に基づいて、共有物全部につきその持分に応じた使用収益をすることができるのであって(民法二四九条)、自己の共有持分権に対する侵害がある場合には、それが他の共有者によると第三者によるとを問わず、単独で共有物全部についての妨害排除請求をすることができ、既存の侵害状態を排除するために必要かつ相当な作為又は不作為を相手方に求めることができると解されるところ、共有物に変更を加える行為は、共有物の性状を物理的に変更することにより、他の共有者の共有持分権を侵害するものにほかならず、他の共有者の同意を得ない限りこれをすることが許されない(民法二五一条)からである。
【民法 第251条第1項】
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
エ.誤答
数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法第258条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。また、多数の者が共有する不動産を同条により現物分割する場合には、共有者のうち一人でも分割請求をすれば直ちに全部の共有関係が解消されると解すべきであり、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残すことは許されない。
要点請求者の持分の限度で現物を分割し、残りを他の者の共有とすることもできる。
妥当でない。前半は判例のとおりです(最大判昭62.4.22)。しかし、同じ判例は、多数の者が共有する物を現物分割する場合に、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残すことも許されるとしました。
1人が分割を求めたからといって、共有を続けたいほかの共有者の共有関係まで解消させる必要はありません。判例は、共有の状態などに応じた合理的な分割ができるとしています。
判決当時の258条2項は競売だけを定めていましたが、いまの同項は、現物を分割する方法などを定めています。
【最大判昭62.4.22 裁判要旨】
三 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法二五八条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。
【最大判昭62.4.22 判決理由】
また、共有者が多数である場合、その中のただ一人でも分割請求をするときは、直ちにその全部の共有関係が解消されるものと解すべきではなく、当該請求者に対してのみ持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残すことも許されるものと解すべきである。
【民法 第258条第2項】
(裁判による共有物の分割)
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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