2024年 国家総合職 問題21
民法意思表示
【No. 21】虚偽の意思表示に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
虚偽表示(相手方と示し合わせてした、うその意思表示)は無効ですが、その無効は、善意(虚偽表示であることを知らないこと)の第三者に対抗(主張)できません(民法94条)。うその外形を自分で作った本人より、その外形を信じて取引した第三者を守るためです。
判例は、この考え方を、示し合わせがない場面にも広げています(94条2項の類推適用)。真の権利者が、不実の登記などの外形を自分の意思で作った場合や、知りながら放置して承認していた場合には、その外形を信じた第三者を守ります。外形への本人の関わりが小さいときは、第三者に、善意に加えて無過失も求めます。
【民法 第94条】
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
ア.誤答
甲土地を所有するAがBと通謀してBのために甲土地に虚偽の抵当権設定をした後、その抵当権設定が虚偽表示であることについて善意のCがBから転抵当権の設定を受け、その旨の登記がされていたとしても、BがAに抵当権処分の通知をしておらず、かつ、Aが当該処分を承諾していない場合、Aは原抵当権の設定が無効であることをCに対抗することができる。
要点仮装の抵当権から善意で転抵当を受けた者は、対抗要件がなくても保護される。
妥当でない。判例は、仮装の抵当権について善意で転抵当権の設定を受けた者は、抵当権の処分の通知・承諾という対抗要件(民法377条1項)を備えていなくても、94条2項の善意の第三者に当たるとしました(最判昭55.9.11)。転抵当とは、抵当権者が、その抵当権をさらに自分の債務の担保に入れることです。
判例は、転抵当権者は、有効な転抵当権設定契約で一定の法律上の地位を得ており、通知・承諾の有無はそれとは別の問題だとしています。判決の「民法三七六条」は、いまの377条です。
【最判昭55.9.11 判決理由】
しかしながら、原抵当権が虚偽仮装のものであることにつき善意で転抵当権の設定を受けた者は、たとえ右転抵当権の取得につき民法三七六条一項所定の要件を未だ具備しておらず、したがつて、右権利そのものを行使し、又は権利取得の効果を原抵当権設定者に主張することができない場合であつても、民法九四条二項の関係では、すでに有効な転抵当権設定契約に基づき一定の法律上の地位を取得した者として同条項にいう善意の第三者に該当するものということを妨げないと解すべきであるから、原抵当権設定者は、これに対する関係では、右原抵当権が虚偽仮装のものであることを主張することができないというべきである。
【民法 第377条第1項】
(抵当権の処分の対抗要件)
第三百七十七条 前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
イ.正答
甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡した。その後、Bが甲土地を仮装譲渡について悪意のCに売り渡し、さらに、Cが甲土地を仮装譲渡について善意のDに売り渡した場合、Aは甲土地の所有権をDに対抗することができない。
要点悪意者からの転得者も、善意であれば94条2項の第三者に当たる。
妥当である。判例は、虚偽表示の相手方と直接取引した者が悪意でも、その者からの転得者が善意であれば、転得者は民法94条2項の善意の第三者に当たるとしました(最判昭45.7.24)。そのため、Aは、甲土地の所有権を善意のDに対抗できません。
転得者も、うその外形を信じて、目的物について新たに利害関係を持った点で、直接取引した人と変わりません。94条2項が守るのは外形を信じた人なので、前の取引の相手が悪意でも、善意の転得者は守られます。
【最判昭45.7.24 裁判要旨】
二、民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。
ウ.誤答
甲土地を所有するAがBと通謀して甲土地をBに仮装譲渡し、B名義の所有権移転登記をした。その後、Bが甲土地を仮装譲渡について善意であってB名義の登記を信頼したCに売り渡し、甲土地を引き渡したが、登記名義はBのままであった。この場合、Cは、甲土地の登記名義を有していないため、甲土地の所有権をAに対抗することができない。
要点仮装行為者は、善意の第三者の登記がないことを主張できない。
妥当でない。判例は、自ら仮装行為をした者は、その外形を除かない間に善意の第三者が外形を信じて取引関係に入った場合、第三者の登記の欠缺(登記がないこと)を主張できないとしました(最判昭44.5.27)。そのため、Cは、登記名義がBのままでも、甲土地の所有権をAに対抗できます。
判例は、94条2項は外形を信頼した者を守り、取引の安全を図る規定なので、外形を作った仮装行為者自身が、一般の取引の当事者より不利益を受けるのは当然だとしています。AとCは、登記の先後で優劣を決める関係にありません。
【最判昭44.5.27 判決理由】
しかしながら、民法九四条が、その一項において相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としながら、その二項において右無効をもつて善意の第三者に対抗することができない旨規定しているゆえんは、外形を信頼した者の権利を保護し、もつて、取引の安全をはかることにあるから、この目的のためにかような外形を作り出した仮装行為者自身が、一般の取引における当事者に比して不利益を被ることのあるのは、当然の結果といわなければならない。したがつて、いやしくも、自ら仮装行為をした者が、かような外形を除去しない間に、善意の第三者がその外形を信頼して取引関係に入つた場合においては、その取引から生ずる物権変動について、登記が第三者に対する対抗要件とされているときでも、右仮装行為者としては、右第三者の登記の欠缺を主張して、該物権変動の効果を否定することはできないものと解すべきである。
エ.正答
Bは、Aの実印及びAが所有する甲土地の権利証をAに無断で持ち出し、甲土地につきAからBへの所有権移転登記手続をした。Aは、この事実を知ったが、抹消登記手続を行わず、その後、Bと婚姻し、X銀行との間で金銭貸付契約を締結した際も、Bを担保提供者として、B名義のままで甲土地に抵当権設定登記手続を行った。その後、さらに、Bが甲土地をB名義の登記が不実のものであることについて善意のCに譲渡した場合、Aは甲土地の所有権をCに対抗することができない。
要点不実の登記を知りながら存続を承認した所有者は、善意の第三者に対抗できない。
妥当である。判例は、所有者の知らない間にされた不実の所有権移転登記でも、所有者がそれを知りながら、存続させることを明示又は黙示に承認していたときは、民法94条2項を類推適用し、所有者は善意の第三者に対抗できないとしました(最判昭45.9.22)。本肢は、この判決とほぼ同じ事案です。
判例は、不実の登記が真の所有者の承認のもとに続いている以上、承認が登記の前か後かで、外形を信頼した第三者の保護に差を設ける理由はないとしています。
【最判昭45.9.22 判決理由】
およそ、不動産の所有者が、真実その所有権を移転する意思がないのに、他人と通謀してその者に対する虚構の所有権移転登記を経由したときは、右所有者は、民法九四条二項により、登記名義人に右不動産の所有権を移転していないことをもつて善意の第三者に対抗することをえないが、不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によつてされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、右九四条二項を類推適用し、所有者は、前記の場合と同じく、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至つた善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもつて対抗することをえないものと解するのが相当である。けだし、不実の登記が真実の所有者の承認のもとに存続せしめられている以上、右承認が登記経由の事前に与えられたか事後に与えられたかによつて、登記による所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護に差等を設けるべき理由はないからである(最高裁昭和四二年(オ)第一二〇九号同第一二一〇号、同四五年四月一六日第一小法廷判決、民集二四巻四号参照)。
オ.誤答
甲土地を所有するAがBと通謀してAを売主、Bを買主とする甲土地の売買の予約を仮装してBのための所有権移転請求権保全の仮登記手続を行ったが、Bがそれを奇貨として、ほしいままに売買を原因とする所有権移転の本登記手続をし、その後、甲土地をCに譲渡した場合、当該本登記の外観はAが作り出したものではないため、Cが、当該本登記が不実のものであることについて善意無過失であっても、Aは甲土地の所有権をCに対抗することができる。
要点仮装の仮登記から勝手に本登記されても、善意無過失の第三者に対抗できない。
妥当でない。判例は、売買の予約を仮装して仮登記をしたところ、仮登記の名義人が勝手に本登記をした場合でも、仮登記を仮装した者は、本登記の無効を善意無過失の第三者に対抗できないとしました(最判昭43.10.17)。本登記の外観をA自身が作ったのではないことは、結論を変えません。
判例は、根拠として、民法94条2項と110条の法意を挙げています。Aが作ったのは仮登記の外観までなので、権限外の行為の表見代理(110条)と同じく、第三者に無過失まで求めます。
【最判昭43.10.17 判決理由】
思うに、不動産について売買の予約がされていないのにかかわらず、相通じて、その予約を仮装して所有権移転請求権保全の仮登記手続をした場合、外観上の仮登記権利者がこのような仮登記があるのを奇貨として、ほしいままに売買を原因とする所有権移転の本登記手続をしたとしても、この外観上の仮登記義務者は、その本登記の無効をもつて善意無過失の第三者に対抗できないと解すべきである。けだし、このような場合、仮登記の外観を仮装した者がその外観に基づいてされた本登記を信頼した善意無過失の第三者に対して、責に任ずべきことは、民法九四条二項、同法一一〇条の法意に照らし、外観尊重および取引保護の要請というべきだからである。
【民法 第110条】
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.21
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
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- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
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