2024年 国家総合職 問題2
憲法参政権
【No. 2】参政権に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
選挙権は、国民主権の原理に基づき、国民が国の政治に参加する固有の権利です(憲法15条1項)。そのため判例は、国民の選挙権やその行使を制限することは原則として許されず、制限するにはやむを得ない事由が必要だとしています。例外として、自ら選挙の公正を害した者などの選挙権を制限することは認められます(最大判平17.9.14)。
選挙に立候補する自由も、選挙人が自由に代表者を選ぶことと表裏の関係にあるので、重要な権利として扱われます(最大判昭43.12.4)。参政権の問題では、選挙に参加する権利の重さと、選挙の公正をどう保つかを比べて考えます。
【最大判平17.9.14 判決理由】
憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。
【日本国憲法 第15条第1項】
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
ア.正答
最高裁判所裁判官の国民審査に係る審査権が、国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において、選挙権と同様の性質を有することなどに照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障しているものと解され、かかる憲法の趣旨に鑑みれば、国民の審査権又はその行使を制限することは原則として許されず、これを制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない。
要点国民審査の審査権の制限には、やむを得ないと認められる事由が必要である。
妥当である。判例は、国民審査の審査権を選挙権と同様の性質を持つ権利とし、その制限にはやむを得ないと認められる事由が必要だとしました。そのうえで、国外に住む国民に審査権の行使を全く認めていなかった国民審査法を、憲法15条1項、79条2項・3項に違反するとしています(最大判令4.5.25)。
判例は、最高裁判所が、法令などが憲法に適合するかを決める終審裁判所であることから、その裁判官を罷免すべきかを国民が決める国民審査を、主権者である国民の権利として重く見ました。
【最大判令4.5.25 判決理由】
この国民審査の制度は、国民が最高裁判所の裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨のものであるところ(最高裁昭和24年(オ)第332号同27年2月20日大法廷判決・民集6巻2号122頁参照)、憲法は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である(憲法81条)などの最高裁判所の地位と権能に鑑み、この制度を設け、主権者である国民の権利として審査権を保障しているものである。そして、このように、審査権が国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において選挙権と同様の性質を有することに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査を行うこととしていることにも照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。 憲法の以上の趣旨に鑑みれば、国民の審査権又はその行使を制限することは原則として許されず、審査権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。
【日本国憲法 第79条第2項・第3項】
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
イ.誤答
公職選挙における立候補の自由は、憲法第15条第1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は特に慎重でなければならず、労働組合の団結を維持するための統制権の行使に基づく制約であっても、その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量してその許否を決すべきであるところ、地方議会議員の選挙に当たり、労働組合が組合の統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、立候補を思いとどまるよう勧告又は説得をすることは、組合の統制権の限界を超えるものとして違法である。
要点立候補を思いとどまるよう勧告・説得することは、統制権の範囲内で許される。
妥当でない。立候補の自由の重要性や、比較衡量で判断するという前半は判例のとおりですが、結論が逆です。判例は、統一候補以外の組合員に立候補を思いとどまるよう勧告又は説得することは許されるとし、違法なのは、その域を超えて立候補の取りやめを要求し、従わないことを理由に統制違反者として処分することだとしました(最大判昭43.12.4。三井美唄労組事件)。
判例は、組合が統一候補を決めて選挙運動を進め、その一環として勧告や説得をするのは許されるとしました。一方、立候補の自由は重要な人権なので、処分という不利益で断念させることまでは認めていません。
【最大判昭43.12.4 裁判要旨】
二 公職の選挙に立候補する自由は、憲法第一五条第一項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。
三 労働組合が、地方議会議員の選挙にあたり、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進している場合において、統一候補の選にもれた組合員が、組合の方針に反して立候補しようとするときは、これを断念するよう勧告または説得することは許されるが、その域を超えて、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして許されない。
ウ.誤答
憲法第15条第4項の規定する投票の秘密に関する保障は、正当な選挙権者の正当な投票に対する保障であって、選挙権のない者又は不正投票者を保護するものではないことは憲法の規定に徴しても明らかであり、また、選挙権のない者又は不正投票者による投票は選挙の結果に影響を及ぼすのであるから、議員の当選の効力を定める手続においては、まず選挙権のない者又は不正投票者の投票であるか否かを審理確定し、次に、何人に投ぜられたか否かを審理して、その投ぜられた候補者の得票からこれを控除すべきである。
要点無資格者の投票が誰に投じられたかは、当選の効力を定める手続で調べられない。
妥当でない。判例は、選挙権のない者や代理投票をした者の投票でも、だれに投票したかは、当選の効力を定める手続で取り調べてはならないとしました(最判昭25.11.9)。何人に投じられたかを審理して、その候補者の得票から差し引くとする部分が誤りです。
この判例が引く先例は、だれがだれに投票したかを明らかにすることは、選挙権の有無にかかわらず投票全般の秘密を守ろうとする無記名投票の制度の精神に反するとしています(最判昭23.6.1)。投票の秘密は、憲法15条4項が保障しています。
【最判昭25.11.9 裁判要旨】
一 選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において取り調べてはならない。
二 無資格者その他による帰属不明の無効投票が他の有効投票中に混入されたときは、それから無効投票を各当選者の得票から差し引いてみて最高位落選者より下位となる者は、これを当選者と決定することができない。
【最判昭23.6.1 判決理由】
けだし、議員の当選の効力を定めるに当つて、何人が何人に対して投票したかを公表することは選挙権の有無にかかわらず選挙投票の全般に亘つてその秘密を確保しようとする無記名投票制度の精神に反するからである。
【日本国憲法 第15条第4項】
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
エ.誤答
公職選挙法が、同法所定の組織的選挙運動管理者等が買収等の所定の選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられた場合に、当該候補者等であった者の当選を無効とし、かつ、これらの者が一定期間当該選挙に係る選挙区において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨を定めていることは、公職選挙の公明、適正の保持という重要な法益を実現するためという立法目的は合理的であるが、連座の対象者の範囲を必要以上に拡大していることや免責事由も設けられていないことなどから、立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものとはいえず、憲法第15条に違反する。
要点拡大連座制を定める公職選挙法251条の3は、憲法15条などに違反しない。
妥当でない。判例は、拡大連座制を定める公職選挙法251条の3について、立法目的は合理的で、手段も必要かつ合理的だとし、憲法15条などに違反しないとしました(最判平9.3.13)。おとり行為・寝返り行為による場合や、候補者が相当の注意を怠らなかった場合の免責も設けられています。
判例は、従来の連座制では選挙犯罪を抑えきれなかった実態を重く見て、候補者に選挙浄化の義務を課す仕組みに合理性があるとしました。
本肢と判決の「禁錮以上の刑」は、令和7年6月の刑法等の改正に伴い、現在の条文では「拘禁刑に処せられたとき」です。
【最判平9.3.13 判決理由】
右規定は、いわゆる連座の対象者を選挙運動の総括主宰者等重要な地位の者に限っていた従来の連座制ではその効果が乏しく選挙犯罪を十分抑制することができなかったという我が国における選挙の実態にかんがみ、公明かつ適正な公職選挙を実現するため、公職の候補者等に組織的選挙運動管理者等が選挙犯罪を犯すことを防止するための選挙浄化の義務を課し、公職の候補者等がこれを防止するための注意を尽くさず選挙浄化の努力を怠ったときは、当該候補者等個人を制裁し、選挙の公明、適正を回復するという趣旨で設けられたものと解するのが相当である。法二五一条の三の規定は、このように、民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正を厳粛に保持するという極めて重要な法益を実現するために定められたものであって、その立法目的は合理的である。また、右規定は、組織的選挙運動管理者等が買収等の悪質な選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられたときに限って連座の効果を生じさせることとして、連座制の適用範囲に相応の限定を加え、立候補禁止の期間及びその対象となる選挙の範囲も前記のとおり限定し、さらに、選挙犯罪がいわゆるおとり行為又は寝返り行為によってされた場合には免責することとしているほか、当該候補者等が選挙犯罪行為の発生を防止するため相当の注意を尽くすことにより連座を免れることのできるみちも新たに設けているのである。そうすると、このような規制は、これを全体としてみれば、前記立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものというべきである。
【公職選挙法 第251条の3第1項】
(組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪による公職の候補者等であつた者の当選無効及び立候補の禁止)
第二百五十一条の三 組織的選挙運動管理者等(公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(以下この条において「公職の候補者等」という。)と意思を通じて組織により行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案若しくは調整又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督その他当該選挙運動の管理を行う者(前条第一項第一号から第三号までに掲げる者を除く。)をいう。)が、第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条又は第二百二十三条の二の罪を犯し拘禁刑に処せられたときは、当該公職の候補者等であつた者の当選は無効とし、かつ、これらの者は、第二百五十一条の五に規定する時から五年間、当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において公職の候補者となり、又は公職の候補者であることができない。(略)
【公職選挙法 第251条の3第2項】
(組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪による公職の候補者等であつた者の当選無効及び立候補の禁止)
2 前項の規定は、同項に規定する罪に該当する行為が、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該行為に関する限りにおいて、適用しない。
(略)
三 当該公職の候補者等が、前項に規定する組織的選挙運動管理者等が同項に規定する罪に該当する行為を行うことを防止するため相当の注意を怠らなかつたとき。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.2
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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