2024年 国家総合職 問題18
行政法行政機関相互の関係(権限の委任・代理・専決)
【No. 18】行政機関相互の関係に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
通説では、行政機関の権限をほかの機関に行わせる仕組みは、権限そのものが移るかどうかと、誰の名前で行うかで、次のように区別されています。
権限の委任:権限が受任機関に移り、受任機関が自分の名前と責任で行う。法律で定めた権限の所在を変えるので、法律の根拠が要る。
権限の代理:権限は移らず、代理機関が、本来の行政庁の代理であることを示して行い、効果は本来の行政庁に帰属する。
専決・代決:権限は移らず、補助機関が、内部の事務処理として、本来の行政庁の名前で決裁する。判例も、専決をさせても法令上の権限は補助職員に移らないとしています(最判平3.12.20)。
【最判平3.12.20 判決理由】
…管理者が右訓令等により法令上その権限に属する財務会計上の行為を特定の補助職員に専決させることとしている場合においては、当該財務会計上の行為を行う法令上の権限が右補助職員に委譲されるものではないが、内部的には、右権限は専ら右補助職員にゆだねられ、右補助職員が常時自らの判断において右行為を行うものとされるのであるから、…
1.誤答
専決とは、補助機関が行政庁の名において最終的な判断権限を行使するものであり、代決とは、補助機関が臨時で行政庁の権限を行使し、事後に行政庁に報告をするものである。専決では最終的な判断権限を行使するのは補助機関であるから、補助機関が処分庁として扱われ、行政手続法の規定に基づく審査基準の作成義務も補助機関が負う。
要点専決でも処分庁は本来の行政庁で、審査基準を定めるのも行政庁である。
妥当でない。専決は、補助機関が行政庁の名で決裁する内部の事務処理の方式で、法令上の権限は行政庁に残ります。そのため、処分庁は本来の行政庁で、審査基準を定めるのも行政庁です(行政手続法5条1項)。専決・代決の意味の説明の部分は、おおむねそのとおりです。
通説では、処分の権限が誰にあるかは法令で決まり、内部の決裁の分担で変わるものではないと解されています。処分の相手方に対しても、処分は行政庁の名で示されます。
【行政手続法 第5条第1項】
(審査基準)
第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2.正答
権限の委任とは、行政機関の権限の一部を他の行政機関に移譲し、これをその行政機関の権限として行わせることであり、権限の委任を受けた行政機関は、その権限を自己の名と責任において行使する。法律上の権限の移動を伴うため、法律の根拠を必要とする。
要点権限の委任では受任機関が自己の名と責任で行使し、法律の根拠が要る。
妥当である。通説では、権限の委任は本肢のように解されています。例えば、地方公共団体の長が権限の一部を補助機関の職員などに委任できることは、法律に定められています(地方自治法153条)。
委任をすると、法律が定めた権限の所在が変わります。法律で決めた配分を行政が自分の判断で変えられるとすれば、法律で権限を定めた意味がなくなるので、法律の根拠が必要とされています。
【地方自治法 第153条】
第百五十三条 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し、又はこれに臨時に代理させることができる。
普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその管理に属する行政庁に委任することができる。
3.誤答
専決・代決の法的性格については、これを授権代理の一種とする説と単なる補助執行にすぎないとする説があるが、いずれの説によっても、法律の根拠が必要であると一般に解されている。
要点専決・代決は内部の事務処理なので、法律の根拠は要らないと解されている。
妥当でない。専決・代決は、授権代理の一種とする説と、補助執行にすぎないとする説のどちらに立っても、法律の根拠は要らないと一般に解されています。
専決・代決では、法令上の権限は本来の行政庁に残り、対外的にも行政庁の名で行われます。権限の所在が変わらない内部の事務処理の分担なので、法律で定める必要がないのです。
4.誤答
専決・代決は行政内部の事実行為であり、仮に専決・代決による事務処理が違法に行われた場合、例えば地方公営企業の接待費の支出の違法を問う住民訴訟においては、当該支出を行う権限を法令上本来的に有する地方公営企業の管理者の責任が問われるのみであり、訓令に基づき専決権限を行使した補助職員が不法行為責任を負うことはない。
要点専決した補助職員も「当該職員」に当たり、違法な専決による損害を賠償する。
妥当でない。判例は、訓令などで専決を任された補助職員も、住民訴訟(地方自治法242条の2第1項4号)でいう「当該職員」に当たるとし、違法な専決処理で地方公共団体に損害を与えたときは、その補助職員が損害を賠償すべきとしました(最判平3.12.20)。管理者は、補助職員への指揮監督を怠ったときに限り責任を負います。
内部では、専決を任された補助職員が、常に自分の判断でその行為をしているからです。判決当時の4号は、住民が地方公共団体に代わって職員に直接請求する形でしたが、いまは、執行機関に対し、職員に賠償を請求するよう求める形です。
【最判平3.12.20 裁判要旨】
地方公営企業の管理者が、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合には、右補助職員は、専決により処理した財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。
【最判平3.12.20 判決理由】
…右補助職員が、専決を任された財務会計上の行為につき違法な専決処理をし、これにより当該普通地方公共団体に損害を与えたときには、右損害は、自らの判断において右行為を行った右補助職員がこれを賠償すべきものであって、管理者は、前記のような右補助職員に対する指揮監督上の帰責事由が認められない限り、右補助職員が専決により行った財務会計上の違法行為につき、損害賠償責任を負うべきいわれはないものというべきだからである。
【地方自治法 第242条の2第1項】
(住民訴訟)
第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
(略)
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の九第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求
5.誤答
権限の委任がなされると、法律に別段の定めがない限り、受任機関が委任機関の下級機関であっても、委任機関は受任機関に対して指揮監督権を行使することはできない。
要点受任機関が下級機関なら、委任機関は指揮監督権を行使できる。
妥当でない。通説では、権限を委任しても、受任機関が委任機関の下級機関であれば、委任機関は、上級機関としての指揮監督権を行使できると解されています。例えば、地方公共団体の長は、補助機関である職員に権限を委任できますが(地方自治法153条1項)、もともと職員を指揮監督する立場にあります(154条)。
委任で移るのは権限を行使する主体だけで、組織の上下の関係は委任とは別に続くからです。
【地方自治法 第153条第1項】
第百五十三条 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し、又はこれに臨時に代理させることができる。
【地方自治法 第154条】
第百五十四条 普通地方公共団体の長は、その補助機関である職員を指揮監督する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.18
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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