2024年 国家総合職 問題17
行政法国家補償の総合
【No. 17】国家賠償法に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
国家賠償法は、国や公共団体の賠償責任のうち、公務員の公権力の行使による損害と、公の営造物の設置・管理の瑕疵による損害について定め、そのほかは、民法と他の法律に委ねています。
営造物についての2条1項の責任は、営造物が通常有すべき安全性を欠いていること(瑕疵)があれば生じ、国や公共団体の過失は要りません(最判昭45.8.20)。
国家賠償法に定めのないことは民法の規定により(4条)、民法以外の法律に別段の定めがあれば、その定めによります(5条)。
【最判昭45.8.20 判決理由】
国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。
【国家賠償法 第2条第1項】
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
【国家賠償法 第4条】
第四条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
【国家賠償法 第5条】
第五条 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。
ア.正答
道路の防護柵に腰掛けて遊んでいた幼児が転落し、負傷した事故は、同人が危険性の判断能力に乏しい幼児であったとしても、道路及び防護柵の設置管理者が通常予測することのできない行動に起因するものであり、国家賠償法第2条第1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとはいえず、当該設置管理者は損害賠償責任を負わない。
要点防護柵に腰掛けた幼児の転落は、通常予測できない行動によるもので瑕疵はない。
妥当である。判例のとおりです(最判昭53.7.4)。
判例は、防護柵が、通行する人や車の転落を防ぐという目的からみて、材質・高さなどの構造に安全性の欠けるところがなかったことを重く見ました。設置管理者が責任を負うのは本来の用法での安全までで、通常の用法に即しない、予測できない行動による事故は、瑕疵によるものではありません。
【最判昭53.7.4 判決理由】
…本件防護柵は、本件道路を通行する人や車が誤つて転落するのを防止するために被上告人によつて設置されたものであり、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものというべく、上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい六歳の幼児であつたとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであつたということができる。したがつて、右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあつたとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はないものというべきである。
イ.誤答
国道に面する山地から落石や崩土が起こり得る状況であったにもかかわらず、防護柵又は防護覆を設置したり、事前に通行止めをする等の措置を取っていなかった場合において、たまたま当該国道を通行していた自動車に土砂と共に岩石が当たり、その衝撃により同乗者が死亡したときは、当該国道の管理費用を負担する県は防護柵を設置するための費用が相当の多額に上り、予算措置に困却していたことを立証すれば、損害賠償責任を負わないが、道路管理者である国は損害賠償責任を負う。
要点予算措置に困却しても賠償責任は免れず、費用負担者の県も責任を負う。
妥当でない。判例は、防護柵の設置費用が多額で、県が予算措置に困ることが推察できるとしても、それで直ちに賠償責任を免れることはできないとしました(最判昭45.8.20。高知落石事件)。
また、道路の管理費用を負担する県も、国家賠償法3条1項により、国とともに賠償責任を負います(同判決)。被害者には、誰が管理し、誰が費用を負担しているかが分かりにくいので、どちらにも請求できることにしています。
2条1項の責任は、道路が通常有すべき安全性を欠いていたかで決まるので、予算が足りないという管理する側の事情は、それだけでは責任を免れる理由になりません。
【最判昭45.8.20 判決理由】
…防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない…
【国家賠償法 第3条第1項】
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
ウ.正答
失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)は、失火者の責任条件について民法第709条の特則を規定したものであるから、国家賠償法第4条にいう「民法」に含まれること等を踏まえると、公権力の行使に当たる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法第4条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失があることを必要とする。
要点公権力の行使に当たる公務員の失火には、国賠法4条で失火責任法が適用される。
妥当である。判例のとおりです(最判昭53.7.17)。失火責任法は、失火の場合には民法709条を適用せず、失火者に重大な過失があったときだけ責任を負わせる法律です。
判例は、失火責任法が民法709条の特則であることと、公務員の失火についてだけ失火責任法を外す合理的な理由がないことを重く見ました。
【最判昭53.7.17 判決理由】
思うに、国又は公共団体の損害賠償の責任について、国家賠償法四条は、同法一条一項の規定が適用される場合においても、民法の規定が補充的に適用されることを明らかにしているところ、失火責任法は、失火者の責任条件について民法七〇九条の特則を規定したものであるから、国家賠償法四条の「民法」に含まれると解するのが相当である。また、失火責任法の趣旨にかんがみても、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任についてのみ同法の適用を排除すべき合理的理由も存しない。したがつて、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法四条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。
【民法 第709条】
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
エ.正答
国家賠償法第5条は、「国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。」と規定しているところ、特別送達郵便物について、郵便業務従事者の軽過失による不法行為に基づき損害が生じた場合に、国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し、又は制限している郵便法の規定の部分は、国及び公共団体の賠償責任を定めた憲法第17条に違反し無効である。
要点特別送達郵便物の軽過失による損害の免責・制限規定は、憲法17条に違反する。
妥当である。判例は、特別送達郵便物について、郵便業務従事者の故意又は過失による損害についての国の責任を免除・制限している郵便法の規定の部分は、憲法17条に違反するとしました(最大判平14.9.11)。書留郵便物で違憲とされたのは、故意・重大な過失による損害の免責・制限の部分だけでしたが、特別送達郵便物では軽過失まで含まれます。
特別送達は、裁判の書類などを確実に届けるための訴訟法上の送達の方法で、国民の権利を実現する手続に欠かせないからです。なお、判決は、郵政民営化の前の、国が郵便の業務を行っていた時代の郵便法の規定についてのものです。
【最大判平14.9.11 裁判要旨】
2 郵便法68条及び73条の規定のうち,特別送達郵便物について,郵便の業務に従事する者の故意又は過失によって損害が生じた場合に,国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し,又は制限している部分は,憲法17条に違反する。(1,2につき補足意見及び意見がある。)
【最大判平14.9.11 判決理由】
特別送達は,民訴法第1編第5章第3節に定める訴訟法上の送達の実施方法であり(民訴法99条),国民の権利を実現する手続の進行に不可欠なものであるから,特別送達郵便物については,適正な手順に従い確実に受送達者に送達されることが特に強く要請される。
【日本国憲法 第17条】
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.17
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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