2024年 国家総合職 問題15
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 15】行政事件訴訟法の規定する仮の義務付け及び仮の差止めに関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
仮の義務付け・仮の差止めは、義務付けの訴え・差止めの訴えの判決を待っていては償うことのできない損害が生じるときに、判決で求める中身を、判決までの間、仮に実現する制度です(行政事件訴訟法37条の5)。処分については民事保全法の仮処分ができないので、平成16年の改正で設けられました。
本案の判決の先取りなので、本案の訴えが起きていることが前提で、本案について理由があるとみえることも要件です。手続は、執行停止の規定の多くを準用しています(同条4項)。
【行政事件訴訟法 第37条の5】
(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。
ア.正答
義務付けの訴えの提起があった場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮の義務付けをすることができる。
要点仮の義務付けには、償うことのできない損害を避ける緊急の必要などが要る。
妥当である。行政事件訴訟法37条の5第1項のとおりです。
仮の義務付けは、本案の判決を先取りして、まだされていない処分を、判決の前に行政庁にさせるものです。そのため、執行停止の「重大な損害」(25条2項)より重い償うことのできない損害と、本案で勝つ見込み(本案について理由があるとみえること)を求めています。
【行政事件訴訟法 第25条第2項】
(執行停止)
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
イ.誤答
差止めの訴えにおける仮の救済制度である仮の差止めは、争われている処分を事前に差し止める必要性が極めて高い場合に利用されることを前提としているため、本案である差止めの訴えを提起することなく、仮の差止めを適法に申し立てることができる。
要点仮の差止めを申し立てるには、差止めの訴えの提起が必要である。
妥当でない。仮の差止めは、差止めの訴えの提起があった場合に限り、申し立てることができます(行政事件訴訟法37条の5第2項)。本案の訴えを起こさずに申し立てることはできません。
仮の差止めは、差止めの訴えで求める判決の中身を、判決までの間、仮に実現するものです。先取りする本案がなければ、仮の救済も成り立ちません。
ウ.正答
仮の義務付けも仮の差止めも、その決定は疎明に基づいてなされ、疎明は即時に取り調べることができる証拠によってなされる。また、いずれの決定も、口頭弁論を経ないですることができるが、あらかじめ、当事者の意見を聴かなければならない。
要点仮の義務付け等の決定は疎明に基づき、口頭弁論は不要だが意見聴取が要る。
妥当である。執行停止の決定の手続の規定(行政事件訴訟法25条5項・6項)は、仮の義務付け・仮の差止めに準用されます(37条の5第4項)。疎明を、即時に取り調べることができる証拠によってするのは、民事訴訟の例によります(7条、民事訴訟法188条)。
疎明とは、証明より低い、一応確からしいという程度の心証で足りるものです。仮の救済は急いで判断する必要があるので、疎明で足り、口頭弁論も要りません。ただ、一方の言い分だけで決めないよう、当事者の意見は聴くこととしています。
【行政事件訴訟法 第25条第5項・第6項】
(執行停止)
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
【行政事件訴訟法 第7条】
(この法律に定めがない事項)
第七条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。
【民事訴訟法 第188条】
(疎明)
第百八十八条 疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。
エ.正答
仮の義務付け及び仮の差止めは、その具体的な手続について、執行停止に関するいくつかの規定が準用されており、内閣総理大臣の異議の規定も、仮の義務付け及び仮の差止めにおいて準用されている。
要点内閣総理大臣の異議の規定は、仮の義務付け・仮の差止めにも準用される。
妥当である。執行停止についての内閣総理大臣の異議の規定(行政事件訴訟法27条)を含め、26条から28条までが、仮の義務付け・仮の差止めに準用されます(37条の5第4項)。異議があると、裁判所は仮の義務付け・仮の差止めをすることができません。
仮の義務付け・仮の差止めも、執行停止と同じく、本案の判決の前に裁判所が行政の活動を左右する仮の措置なので、執行停止の手続の規定がまとめて準用されています。
【行政事件訴訟法 第27条第1項・第4項】
(内閣総理大臣の異議)
第二十七条 第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。執行停止の決定があつた後においても、同様とする。
4 第一項の異議があつたときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない。
オ.誤答
仮の義務付けによりなされる処分は、仮の救済としてなされるものであるため、取消判決の拘束力の規定は準用されていないが、仮の義務付けを命じられた行政庁がこれに従わない場合、裁判所がこれに代わって執行する制度が設けられている。
要点仮の義務付けの決定には拘束力の規定が準用され、行政庁はこれに従う。
妥当でない。仮の義務付けの決定には、取消判決の拘束力の規定(行政事件訴訟法33条1項)が準用されます(37条の5第4項)。
また、行政庁は決定に従って処分をする義務を負い、裁判所が行政庁に代わって処分をする制度はありません。
処分をする権限は行政庁にあるので、裁判所は、行政庁に処分を命じ、拘束力で従わせるところまでにとどめています。行政庁が決定に基づいて自ら処分をすることは、決定が取り消されたときの扱い(同条5項)にも表れています。
【行政事件訴訟法 第33条第1項】
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。