2024年 国家総合職 問題14
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 14】行政事件訴訟法の規定する無効等確認の訴えに関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
無効等確認の訴えは、処分に重大かつ明白な瑕疵(無効原因)があるときに、出訴期間が過ぎるなどして取消訴訟を起こせなくなった後でも、取消訴訟を起こした場合と同じような救済を与えるための訴えです(最判昭42.3.14)。
そのため、取消訴訟と比べて2つの枠があります。1つは、ふつうの違法(取消原因)では足りず、重大かつ明白な瑕疵が要ることです。もう1つは、処分の無効を前提に現在の法律関係を争う訴え(土地の所有権の確認など)で目的を達することができないときに使う、補充的な訴えであることです(行政事件訴訟法36条)。
【最判昭42.3.14 判決理由】
その実質的理由は、期間の徒過等により行政上の不服申立ならびに行政処分取消の訴の提起が許されなくなつたような場合であつても、当該行政処分に重大かつ明白な瑕疵があるときは、行政処分無効確認の訴を提起することによつて、行政処分取消の訴を提起した場合と同様の救済を与えようとする趣旨であるから、…
【行政事件訴訟法 第36条】
(無効等確認の訴えの原告適格)
第三十六条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。
ア.誤答
土地改良法に基づく換地処分を受けた者が、当該換地処分に基づく登記等の手続が全て終了した後に、当該換地処分の無効確認を求めた場合、その登記等の手続が全て終了し完了していれば、それに後続する処分によって損害を被るおそれはなく、また、当該換地処分の無効を前提に従前の土地の所有者として当該土地の現在の所有者とされている者に対してその所有権に基づく民事訴訟を提起することにより、その目的を達することができるから、当該換地処分の無効確認訴訟を提起することはできないとするのが判例である。
要点照応の原則違反を理由に換地処分を争う者は、無効確認訴訟を提起できる。
妥当でない。判例は、換地処分を受けた者が、照応の原則(換地は従前の土地と照応するように定めるという原則)に反するとして換地処分の無効を主張する場合には、無効確認の訴えを提起できるとしました(最判昭62.4.17)。従前の土地の所有権に基づく民事訴訟を起こせても、提起は妨げられません。
判例は、換地処分が多くの権利者の間で連鎖していることと、この主張がより有利な換地を求めるもので、従前の土地を取り戻すことが目的ではないことを重く見て、民事訴訟では「目的を達することができない」(36条)としました。
【最判昭62.4.17 判決理由】
…換地処分を受けた者が照応の原則に違反することを主張してこれを争う場合には、自己に対してより有利な換地が交付されるべきことを主張していることにほかならないのであつて、換地処分がされる前の従前の土地に関する所有権等の権利の保全確保を目的とするものではないのであるから、このような紛争の実態にかんがみると、当該換地処分の無効を前提とする従前の土地の所有権確認訴訟等の現在の法律関係に関する訴えは右紛争を解決するための争訟形態として適切なものとはいえず、むしろ当該換地処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態というべきであり、結局、右のような場合には、当該換地処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつてはその目的を達することができないものとして、行政事件訴訟法三六条所定の無効確認の訴えの原告適格を肯認すべき場合に当たると解されるからである。
イ.正答
無効確認訴訟において、争われている行政処分の無効原因の主張としては、単に抽象的に処分に重大明白な瑕疵があると主張し、又は処分の取消原因が当然に無効原因を構成すると主張するだけでは足りず、処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な誤認があることを具体的事実に基づいて主張しなければならないとするのが判例である。
要点無効原因は、重大明白な誤認があることを具体的事実に基づいて主張する。
妥当である。判例のとおりです(最判昭34.9.22)。
無効原因となる重大・明白な違法とは、処分の要件があるとした処分庁の認定に、重大で明白な誤認がある場合をいうからです。何がどう明白に誤っているかを具体的に示さなければ、ただの違法(取消原因)と区別できません。
【最判昭34.9.22 判決理由】
すなわち無効原因となる重大・明白な違法とは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な誤認があると認められる場合を指すものと解すべきである。たとえば、農地でないものを農地として買収することは違法であり、取消事由となるが、それだけで、当然に、無効原因があるといい得るものではなく、無効原因があるというためには、農地と認定したことに重大・明白な誤認がある場合 (たとえば、すでにその地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収し、その誤認が何人の目にも明白であるというような場合)でなければならない。従つて、無効原因の主張としては、誤認が重大・明白であることを具体的事実(右の例でいえば地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収したということ)に基いて主張すべきであり、単に抽象的に処分に重大・明白な瑕疵があると主張したり、若しくは、処分の取消原因が当然に無効原因を構成するものと主張することだけでは足りないと解すべきである。
ウ.誤答
無効確認訴訟において処分の無効原因を主張せず、取消原因のみを主張した場合には、請求は棄却される。これは、当該訴訟が取消訴訟の出訴期間内に提起されたものであるときも同様であるとするのが判例である。
要点出訴期間内に提起された無効確認請求は、取消請求を含むと解される。
妥当でない。無効確認の訴えで取消原因しか主張しなければ、請求は棄却されるのが原則です。しかし判例は、取消訴訟の出訴期間内に提起された無効確認の請求は、取消請求を含むと解すべきだとしました(最判昭33.9.9)。この場合は、取消原因が認められれば、処分の取消しを受けられます。
判例が理由にしたのは、訴えが出訴期間内に提起されたことです。その時点なら取消訴訟を適法に起こせたので、無効確認の形をとったことだけで、取消しの救済を受けられなくなるわけではないのです。
【最判昭33.9.9 裁判要旨】
二 行政処分取消訴訟の出訴期間内に提起された行政処分無効確認請求は、その取消請求を含むものと解すべきである。
エ.正答
行政庁の裁量に任された行政処分の無効確認を求める訴訟においては、その無効確認を求める者において、行政庁が当該処分をするに当たってした裁量権の行使がその範囲を超え又は濫用にわたり、当該処分が違法であり、かつ、その違法が重大かつ明白であることを主張及び立証することを要するとするのが判例である。
要点裁量処分の無効確認では、原告が逸脱濫用と違法の重大明白性を主張立証する。
妥当である。判例のとおりです(最判昭42.4.7)。
裁量処分は、裁量権の範囲を超えるか、その濫用があった場合でなければ違法になりません(行政事件訴訟法30条)。そして、無効になるのは、違法が重大かつ明白なときだけです。そのため、無効確認を求める側は、まず裁量権の逸脱・濫用で違法であること、次にその違法が重大かつ明白であることの、2段階を示す必要があります。
【最判昭42.4.7 裁判要旨】
行政庁の裁量に任された行政処分の無効確認を求める訴訟においては、その無効確認を求める者において、行政庁が右行政処分をするにあたつてした裁量権の行使がその範囲をこえまたは濫用にわたり、しかも、当該瑕疵が重大かつ明白であることを主張および立証することを要する。
【行政事件訴訟法 第30条】
(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
オ.正答
行政事件訴訟法は、無効等確認判決に第三者効の規定を準用していないが、無効確認訴訟は実質的には単に出訴期間と不服申立前置主義の制約を受けない準取消訴訟であり、かつ、重大明白な瑕疵が存在する場合になされるのであるから、取消判決に第三者効を認めて無効等確認判決にこれを認めない理由はないとの批判もあるところ、行政事件訴訟特例法下の判例には、農地買収処分の無効確認判決において、農地売渡処分の相手方への第三者効を認め、当該相手方に農地返還、登記抹消等の義務が課されるとしたものがある。
要点特例法下の判例は、無効確認判決にも第三者に対する効力を認めた。
妥当である。行政事件訴訟法は、取消判決の第三者効(32条1項)を無効等確認の訴えに準用していません(38条3項は32条2項だけを準用)。これに対して、行政事件訴訟特例法の下の判例は、買収処分の無効確認判決は第三者に対しても効力を有するとし、その土地について登記を得ていた者に、登記の抹消手続をする義務を認めました(最判昭42.3.14)。
判例は、無効確認の訴えが取消訴訟の一変形として認められてきたもので、判決の効力が第三者に及ばなければ、その働きが大きく損なわれることを重く見ました。
【最判昭42.3.14 判決理由】
もし、行政処分無効確認判決の効力が第三者に及ばないと解すべきものとすれば、特例法のもとで行政処分取消の訴の一変形として肯認されてきた行政処分無効確認の訴は、著しくその機能を損ずることになるのであつて、この意味においても、行政処分無効確認判決は、第三者に対しても、その効力を有するものと解するのが相当である。
【行政事件訴訟法 第32条第1項】
(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
【行政事件訴訟法 第38条第3項】
(取消訴訟に関する規定の準用)
3 第二十三条の二、第二十五条から第二十九条まで及び第三十二条第二項の規定は、無効等確認の訴えについて準用する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.14
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。