2024年 国家総合職 問題12
行政法行政不服申立て
【No. 12】行政上の不服申立てに関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
行政不服審査法は、審査請求をすべき行政庁について、原則として、処分庁等(処分をした行政庁又は不作為に係る行政庁をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合には、当該処分庁等とし、上級行政庁がある場合には、当該処分庁等の最上級行政庁としている。
要点審査請求は、上級行政庁がなければ処分庁等に、あれば最上級行政庁にする。
妥当である。審査請求は、法律(条例に基づく処分は条例)に特別の定めがある場合を除き、処分庁等に上級行政庁がない場合は処分庁等に、上級行政庁がある場合は原則として最上級行政庁にします(行政不服審査法4条)。
最上級行政庁を審査庁にするのは、審理の客観性・公正さを確保し、審査請求人が本省庁などによる審理を受けられるようにし、統一的な処理を図るためです。上級行政庁がないときは処分庁等が審査しますが、処分に関与しない審理員が審理を行い、公正さを保っています。
【行政不服審査法 第4条】
(審査請求をすべき行政庁)
第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等
二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長
三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣
四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁
イ.正答
行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決は処分であるが、この処分には同法の規定は適用されないので、審査庁に上級行政庁がない場合であっても、裁決を行った審査庁に対して重ねて審査請求をすることはできない。
要点審査請求に対する裁決には、重ねて審査請求をすることはできない。
妥当である。行政不服審査法に基づく処分は、審査請求ができる処分から除かれています(行政不服審査法7条1項12号)。審査請求に対する裁決もこれに当たるので、審査庁に上級行政庁がなくても、その審査庁に重ねて審査請求をすることはできません。裁決に不服があれば、法律に定めがある場合の再審査請求(6条1項)か、裁決の取消しの訴えで争います。
通説では、裁決は審理員による審理などの慎重な手続を経てされるので、同じ手続で重ねて審査しても、結局は同じ結果になると考えられるためと解されています。
【行政不服審査法 第7条第1項】
(適用除外)
第七条 次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。
(略)
十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)
【行政不服審査法 第6条第1項】
(再審査請求)
第六条 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。
ウ.正答
行政不服審査法は、国の機関等に対する処分で、その機関等がその固有の資格において当該処分の相手方となるものへの適用を除外するが、そこにいう「固有の資格」とは、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場、すなわち、一般私人が立ち得ないような立場をいう。公有水面埋立事業については、国の機関と国以外の者のいずれについても、知事の処分(埋立承認又は埋立免許)を受けて初めて公有水面の埋立てを適法に実施し得る地位を得ることができ、かつ、当該処分を受けるための規律が実質的に異ならないから、国の機関が一般私人が立ち得ないような立場において埋立承認の相手方になるものとはいえないというべきであり、沖縄防衛局に対する埋立承認処分の取消しに対して、沖縄防衛局が国土交通大臣に審査請求をした場合に、埋立承認の取消しにつき、国の機関である沖縄防衛局がその「固有の資格」において相手方となったものということはできない。
要点埋立承認の取消しで、沖縄防衛局は「固有の資格」で相手方となったのではない。
妥当である。記述は判例のとおりです(最判令2.3.26)。沖縄防衛局は一般私人と同じ立場で埋立承認の相手方となったので、その取消しにも行政不服審査法が適用されます。
判例は、行政不服審査法が国民の権利利益の救済を目的とすることから、その制度の対象になじまない処分を外したのが7条2項だとしました。固有の資格に当たるかは、不服申立てで審査の対象になる処分の要件などの規律が、国の機関と一般私人とで実質的に異なるかで判断します。
【最判令2.3.26 判決理由】
…同法7条2項は,国の機関等に対する処分のうち,国民の権利利益の救済等を図るという上記目的に鑑みて上記制度の対象とするのになじまないものにつき,同法の規定を適用しないこととしているものと解される。このような同項の趣旨に照らすと,同項にいう「固有の資格」とは,国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場,すなわち,一般私人(国及び国の機関等を除く者をいう。以下同じ。)が立ち得ないような立場をいうものと解するのが相当である。
【最判令2.3.26 判決理由】
そして,国の機関等と一般私人のいずれについても,処分を受けて初めて当該事務又は事業を適法に実施し得る地位を得ることができるものとされ,かつ,当該処分を受けるための処分要件その他の規律が実質的に異ならない場合には,国の機関等に対する処分の名称等について特例が設けられていたとしても,国の機関等が一般私人が立ち得ないような立場において当該処分の相手方となるものとはいえず,当該処分については,等しく行政不服審査法が定める不服申立てに係る手続の対象となると解するのが相当である。
【行政不服審査法 第7条第2項】
(適用除外)
2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。
エ.誤答
審査請求期間は、原則として「処分があったことを知った日」の翌日から起算して3か月であるところ、「処分があったことを知った日」とは、処分がその名宛人に個別に通知される場合には、その者が処分のあったことを現実に知った日のことをいい、処分があったことを知り得たというだけでは足りない。また、都市計画法における都市計画事業の認可のように、行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合にも、「処分があったことを知った日」とは、告示があった日をいうのではなく、処分の効力を受ける者が処分のあったことを現実に知った日を意味する。
要点告示で画一的に告知される処分では、告示があった日に知ったものとされる。
妥当でない。前半は判例のとおりです(最判平14.10.24)。しかし、都市計画事業の認可のように、処分が告示で多数の関係権利者等に画一的に告知される場合は、「処分があったことを知った日」は告示があった日をいいます(同判決)。
判例は、認可の効力を関係権利者の全員に同時に及ぼす必要がある一方、全員に個別の通知を届けるのは極めて困難で、認可が事業地を対象とする対物的な処分であることを重く見ました。判決は改正前の規定についてのものですが、いまの18条1項も同じ文言です。
【最判平14.10.24 裁判要旨】
行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には,行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」とは,告示があった日をいう。
【最判平14.10.24 判決理由】
これは,都市計画事業を円滑に進めるためには,その認可の効力を関係権利者の全員に同時に及ぼす必要がある一方で,一般に,その全員を確実に把握して同時期に個別の通知を到達させることが極めて困難であり,かつ,同認可が特定の事業地を対象として行ういわば対物的な処分の性質を有することから,これを特定の個人を名あて人として行わないものとした上,告示という方法により画一的に関係権利者等にこれを告知することとしたものと解される。
【行政不服審査法 第18条第1項】
(審査請求期間)
第十八条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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