2024年 国家一般職 問題27
民法債権譲渡・債権の消滅
【No. 27】相殺に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
相殺は、互いに同じ種類の債務(金銭債務どうしなど)を負う二人の間で、一方の意思表示によって、重なる額(対当額)を差引きで消す仕組みです。相殺をする側の債権を自働債権、相殺される側の債権を受働債権といいます。
互いの債務が相殺できる状態(相殺適状)になると、当事者は、もう差引きで決済されたものと考えるのが通常です。相殺の効力の時期や、時効との関係の決まりは、この期待を守る方向に働きます。一方、受働債権の債権者が現実に支払を受けなければならない場合や、当事者が相殺を禁止・制限する合意をした場合には、相殺が制限されます。
ア.誤答
当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合、その意思表示は、第三者がこれを知っているときに限り、その第三者に対抗することができる。
要点相殺禁止の意思表示は、悪意又は重過失の第三者に対抗できる。
妥当でない。相殺を禁止・制限する意思表示は、第三者がこれを知っているときだけでなく、重大な過失によって知らなかったとき(少し注意すれば分かったのに、著しく注意を欠いて知らなかったとき)にも、その第三者に対抗できます(民法505条2項)。
債権の譲渡制限の意思表示も、知り、又は重大な過失によって知らなかった第三者に対抗できるとされています(466条3項)。当事者の間の特約を第三者に主張できる範囲を、譲渡制限とそろえています。
【民法 第505条第2項】
(相殺の要件等)
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
【民法 第466条第3項】
(債権の譲渡性)
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
イ.誤答
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってするが、その意思表示には、条件を付すことができる。
要点相殺の意思表示には、条件や期限を付けることができない。
妥当でない。相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができません(民法506条1項)。
通説では、相殺は一方の意思表示だけで相手方の債権も消す行為なので、条件を付けると相手方の立場を不安定にし、また、相殺の効力は相殺適状の時にさかのぼるので(同条2項)、期限を付けても意味がないと解されています。
【民法 第506条】
(相殺の方法及び効力)
第五百六条 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
ウ.正答
相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
要点相殺の意思表示は、相殺適状の時にさかのぼって効力を生ずる。
妥当である。相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時(相殺適状の時)にさかのぼって効力を生じます(民法506条2項)。そのため、相殺適状になった後の利息や遅延損害金は、差し引かれた額については生じなかったことになります。
相殺適状になれば、当事者はその時に決済されたものと考えるのが通常です。意思表示がいつされたかで結果が変わらないよう、その期待に合わせて効力をさかのぼらせています。
【民法 第506条第2項】
(相殺の方法及び効力)
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
エ.正答
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
要点時効消滅前に相殺適状にあった債権は、消滅後も相殺に使える。
妥当である。時効によって消滅した債権でも、消滅する前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、それを自働債権として相殺できます(民法508条)。
判例は、この規定の趣旨を、当事者の相殺に対する期待を保護することにあるとし、そのため、消滅時効期間が経過する前に相殺適状にあったことが必要だとしています(最判平25.2.28)。
【最判平25.2.28 判決理由】
…当事者の相殺に対する期待を保護するという民法508条の趣旨に照らせば,同条が適用されるためには,消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。
【民法 第508条】
(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第五百八条 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
オ.誤答
債権が差押えを禁じたものであっても、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。
要点差押禁止債権の債務者は、相殺をもって債権者に対抗できない。
妥当でない。債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができません(民法510条)。
通説では、差押えが禁じられる債権(給料の一定部分など)は、債権者が現実に受け取って生活に充てる必要がある債権なので、相殺によってその支払を受けられなくすることも許さない趣旨と解されています。
【民法 第510条】
(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十条 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.27
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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