2024年 国家一般職 問題26
民法債務不履行・責任財産の保全
【No. 26】債務不履行に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
債務の履行について不確定期限がある場合に、債務者がその期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けたときは、その請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
要点不確定期限の債務は、請求か期限の到来を知った時の早い方から遅滞となる。
妥当でない。不確定期限がある債務では、期限の到来後に履行の請求を受けた時と、期限の到来を知った時のいずれか早い時から遅滞になります(民法412条2項)。期限の到来を知った後に請求を受けた場合は、請求の時ではなく、知った時から遅滞です。
不確定期限とは、来ることは確実でも、いつ来るか分からない期限です。確定期限なら期限が来た時から遅滞になりますが(同条1項)、不確定期限では債務者が到来に気づかないことがあるので、知った時か、請求を受けた時からとしています。
【民法 第412条第1項・第2項】
(履行期と履行遅滞)
第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
2.誤答
当事者が民法の規定により損害賠償額を予定した場合には、債務不履行に関し債権者に過失があったとしても、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを考慮することができないとするのが判例である。
要点賠償額の予定があっても、債権者に過失があれば過失相殺をする。
妥当でない。判例は、当事者が損害賠償の額を予定した場合でも、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、これをしんしゃくすべきであるとしました(最判平6.4.21)。賠償額の予定があっても、過失相殺(民法418条)は排除されません。
賠償額の予定(420条1項)は、損害の額を証明する手間や争いを省くための合意です。通説では、債権者が自分の過失で生じさせた損害まで債務者に負わせる趣旨は含まれないと解されています。
【最判平6.4.21 裁判要旨】
当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである。
【民法 第418条】
(過失相殺)
第四百十八条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
【民法 第420条第1項】
(賠償額の予定)
第四百二十条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
3.正答
債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
要点価額の全部を賠償した債務者は、その物又は権利について当然に代位する。
妥当である。債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位します(民法422条)。例えば、預かった物を盗まれて全額を賠償した受寄者は、その物の所有権を取得します。
通説では、債権者が全額の賠償と物の両方を得て、二重に利益を受けることを防ぐためと解されています。
【民法 第422条】
(損害賠償による代位)
第四百二十二条 債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
4.誤答
債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額にかかわらず、債務者が受けた利益の全てについて、債務者に対し、その相当額の支払を請求することができる。
要点代償請求は、債権者が受けた損害の額の限度でできる。
妥当でない。代償請求ができるのは、債権者が受けた損害の額の限度においてです(民法422条の2)。債務者が受けた利益の全てを請求できるわけではありません。代償請求とは、例えば引き渡すはずの建物が焼失し、債務者が火災保険金を受け取った場合に、債権者がその保険金を自分に渡すよう求めることです。
代償請求は、履行不能で債権者が受けた損害を、債務者が同じ原因で得た利益で埋めるための制度です。損害を超えて債権者に利益を与える理由はありません。
【民法 第422条の2】
(代償請求権)
第四百二十二条の二 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。
5.誤答
債務者は、債権者が弁済を受領することができない場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合には、債務者は、供託をした時から債務不履行責任を免れるが、債務は消滅することなく存続する。
要点弁済供託をすると、その債権は消滅する。
妥当でない。債権者が弁済の受領を拒んだ場合などに弁済の目的物を供託すると、供託をした時に債権は消滅します(民法494条1項)。債務不履行の責任を免れるだけで債務が残るのは、弁済の提供の効果です(492条)。
受領しない債権者の側の事情で、債務者がいつまでも債務から解放されないのは不公平です。提供だけでは債務が残るので、供託によって債務そのものを消せるようにしています。
【民法 第494条第1項】
(供託)
第四百九十四条 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
【民法 第492条】
(弁済の提供の効果)
第四百九十二条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.26
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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