2024年 国家一般職 問題25
民法その他の担保物権
【No. 25】先取特権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
先取特権は、当事者の合意がなくても、法律が定める特定の債権に、債務者の財産から優先して弁済を受けることを認める担保物権(法定担保物権)です。どの債権に認めるかの理由は一つではなく、通説では、ほかの債権者の利益にもなった費用であること(共益の費用、不動産の保存など)、立場の弱い債権者を守ること(雇用関係など)、当事者が通常期待していること(不動産の賃貸など)などが挙げられています。
また、動産の先取特権は、登記も占有もなく成立して外から見えないので、目的物を取得した第三者との関係では、効力が制限されています。
ア.誤答
雇用関係、共益の費用、葬式の費用又は日用品の供給によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について一般の先取特権を有するが、これらが互いに競合する場合には、雇用関係によって生じた先取特権が最も優先する。
要点一般の先取特権が競合するときは、共益の費用が最も優先する。
妥当でない。一般の先取特権が互いに競合するときの順位は、民法306条各号の順で(329条1項)、最も優先するのは共益の費用です。雇用関係はその次です。
共益の費用は、債務者の財産を保存したり清算したりするための費用で、ほかの債権者全員の利益になっています。そのため、利益を受けた全ての債権者に優先します(同条2項ただし書)。
【民法 第329条】
(一般の先取特権の順位)
第三百二十九条 一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
【民法 第306条】
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 子の監護の費用
四 葬式の費用
五 日用品の供給
イ.正答
不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
要点不動産賃貸の先取特権は、賃借人の動産について存在する。
妥当である。不動産の賃貸の先取特権は、賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在します(民法312条)。建物の賃貸人なら、賃借人が建物に備え付けた動産が目的物です(313条2項)。
通説では、賃貸人は、賃借人が建物などに持ち込んだ動産を賃料の当てにしているのが通常なので、その期待を守るために認められたものと解されています。
【民法 第312条】
(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
【民法 第313条第2項】
(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)
2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
ウ.正答
不動産の保存、工事又は売買によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有するが、同一の不動産についてこれらが互いに競合する場合には、不動産の保存によって生じた先取特権が最も優先する。
要点不動産の先取特権が競合するときは、保存の先取特権が最も優先する。
妥当である。同一の不動産について特別の先取特権が競合するときの順位は、民法325条各号の順で(331条1項)、不動産の保存、不動産の工事、不動産の売買の順です。
通説では、保存の費用は不動産の価値を維持し、後の順位の先取特権者の利益にもなっているので、最も優先すると解されています。
【民法 第331条第1項】
(不動産の先取特権の順位)
第三百三十一条 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
【民法 第325条】
(不動産の先取特権)
第三百二十五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
エ.誤答
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して行使することができるが、そのために当該金銭その他の物の差押えを行う必要はない。
要点先取特権の物上代位には、払渡し・引渡しの前の差押えが必要である。
妥当でない。先取特権は、目的物の売却などによって債務者が受けるべき金銭その他の物にも行使できますが(民法304条1項本文。物上代位)、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければなりません(同項ただし書)。
物上代位とは、目的物が代金や保険金などに形を変えたとき、その代わりの物に担保の効力を及ぼすことです。通説では、代金などが債務者に支払われて財産に混ざる前に差し押さえて特定させ、支払をする人(第三債務者)などが不測の損害を受けないようにするためと解されています。
【民法 第304条第1項】
(物上代位)
第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
オ.誤答
動産の先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後であっても、その動産について行使することができる。
要点動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産に先取特権を行使できない。
妥当でない。先取特権は、債務者がその目的である動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使できません(民法333条)。
動産の先取特権は、登記も占有もなく成立するので、外から見えません。通説では、動産を買って引渡しを受けた人が、見えない先取特権で物を追いかけられないよう、取引の安全を守るためと解されています。
【民法 第333条】
(先取特権と第三取得者)
第三百三十三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.25
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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