2024年 国家一般職 問題24
民法その他の担保物権
【No. 24】留置権に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
留置権は、他人の物を持っている人が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、物を返さずに手元に留めておける権利です。物を返さないことで弁済を促すのが働きで、物の価値から優先して弁済を受ける権利(優先弁済権)はありません。
留置権者は、自分の債権のために他人の物を預かっている立場にあります。そのため、注意深く保管しなければならず、所有者の承諾なしに使ったり貸したりできない一方、保管のために出した費用は所有者から返してもらえます。
1.誤答
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権が弁済期になくても、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
要点被担保債権が弁済期にないときは、留置権は成立しない。
妥当でない。留置権は、その債権が弁済期にないときは成立しません(民法295条1項ただし書)。
通説では、弁済期の前に留置を認めると、まだ払わなくてよい債務者に、期限前の弁済を事実上強いることになるので、成立を認めないと解されています。
【民法 第295条第1項】
(留置権の内容)
第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2.誤答
留置権者は、債権の一部の弁済を受けたときは、留置物の全部について権利を行使することができない。
要点一部の弁済を受けても、留置物の全部について権利を行使できる。
妥当でない。留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部について権利を行使できます(民法296条。不可分性)。
296条は、債権が少しでも残っている限り物の全部を留めておけるとすることで、残りの債権についても、物を返さずに弁済を促す力を保たせています。
【民法 第296条】
(留置権の不可分性)
第二百九十六条 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
3.誤答
留置権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
要点留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有する。
妥当でない。留置権者は、善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければなりません(民法298条1項)。善良な管理者の注意とは、その人の職業や立場から一般に求められる注意で、「自己の財産に対するのと同一の注意」より重い注意です。
留置物は他人の物で、留置権者は自分の債権のためにそれを手元に置いています。好意で無報酬で物を預かる受寄者なら、自己の財産に対するのと同一の注意で足りますが(659条)、留置権者はそれと立場が違います。
【民法 第298条第1項】
(留置権者による留置物の保管等)
第二百九十八条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
【民法 第659条】
(無報酬の受寄者の注意義務)
第六百五十九条 無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
4.誤答
留置権者が債務者の承諾を得ないで留置物を賃貸し、又は担保に供したときは、留置権は、債務者が留置権の消滅を請求しなくても消滅する。
要点承諾のない賃貸などがあれば、債務者は留置権の消滅を請求できる。
妥当でない。留置権者が債務者の承諾を得ないで留置物を賃貸し、又は担保に供したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができます(民法298条2項・3項)。請求がなくても当然に消滅するのではありません。
承諾のない賃貸などで害されるのは債務者です。そのため、留置権を消滅させるかどうかは、債務者の判断に委ねています。
【民法 第298条第2項・第3項】
(留置権者による留置物の保管等)
2 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
3 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。
5.正答
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
要点留置権者は、支出した必要費の償還を所有者に請求できる。
妥当である。留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができます(民法299条1項)。必要費とは、修繕費など、物を保存するのに必要な費用です。
必要費は、所有者が自分で物を持っていても出さなければならなかった費用なので、所有者に負担させます。これに対し、物の価値を高める有益費は、価格の増加が現存する場合に限り、所有者が選ぶ支出額か増価額を償還させます(同条2項)。
【民法 第299条】
(留置権者による費用の償還請求)
第二百九十九条 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
2 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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