2024年 国家一般職 問題23
民法物権変動
【No. 23】動産物権変動に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
動産には、不動産の登記のような公示(権利の状態を外に示す仕組み)がありません。そこで民法は、物を持っていること(占有)を、権利の目印として使います。そこから次の2つの決まりが出てきます。
対抗要件:動産の物権の譲渡は、引渡しを受けなければ第三者に主張できません。ここでいう引渡しは広く、物が手元に来ない形の引渡しも含みます。
即時取得:占有者を権利者だと信じて取引した人を守り、本来の所有者は権利を失います。その代わり、守られるのは、取引によって、外から見て分かる形で占有を得た人に限られます。また、登録のように占有のほかに権利を示す仕組みがある物には働かず、盗まれた物や落とした物には、取り戻す道が残されています。
ア.正答
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
要点動産の物権の譲渡は、引渡しがなければ第三者に対抗できない。
妥当である。動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者(当事者以外で、引渡しがないことを主張する正当な利益のある人)に対抗(権利を主張)できません(民法178条)。
動産には登記の仕組みがないので、外から見て誰が権利者かは、物を持っている人で判断するほかありません。そこで、不動産の登記(177条)に代わるものとして、引渡しを受けて占有を移すことを、権利の移転を外に示す目印にしています。
【民法 第178条】
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
【民法 第177条】
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
イ.誤答
債務者が占有の改定によって動産を債権者のために占有している場合には、債権者は、当該動産の引渡しを受けていないので、その所有権を第三者に対抗することができない。
要点占有改定も178条の引渡しに当たり、債権者は所有権を第三者に対抗できる。
妥当でない。占有改定(譲り渡した人が、以後は譲り受けた人のために占有すると表示する引渡し。民法183条)も、178条の引渡しに当たります。判例も、債務者が引き続き動産を持っている場合に、債権者は占有改定によって占有権を取得し、所有権を第三者に対抗できるとしています(最判昭30.6.2)。
民法は、占有改定を、現実の引渡しなどと並ぶ占有の移し方の一つとして定めているので、対抗要件としての引渡しには、占有改定も含まれます。
これに対し、即時取得では、占有改定では足りません(最判昭35.2.11)。即時取得は本来の所有者に権利を失わせる制度なので、外から見て占有の状態が変わることが求められます。
【最判昭30.6.2 裁判要旨】
債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
【最判昭35.2.11 裁判要旨】
占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第一九二条の適用はない。
【民法 第183条】
(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
ウ.正答
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
要点取引で平穏・公然・善意・無過失に占有を始めた者は、即時取得する。
妥当である。取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意(相手が権利者でないことを知らないこと)で、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。
即時取得は、動産を持っている人を権利者だと信じて取引した人を守り、動産の取引を安心して行えるようにする制度です。その代わり、本来の所有者は知らないうちに権利を失うので、取引行為によること、平穏・公然、善意・無過失という要件で、守られる人を絞っています。
【民法 第192条】
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
エ.誤答
道路運送車両法による登録を受けていない又は登録を抹消された自動車については、即時取得は成立しない。
要点登録を受けていない自動車には、即時取得の規定が適用される。
妥当でない。道路運送車両法による登録を受けていない自動車や、登録を抹消された自動車には、即時取得(民法192条)の規定が適用されます(最判昭45.12.4)。
判例は、登録を受けていない自動車は、所有権の移転などについて登録を対抗要件とするものではないので、取引保護の要請から、一般の動産と同じく扱うとしました。これに対し、登録を受けている自動車は、登録が所有権の移転を示す方法とされているので、占有を信じた人を守る即時取得は適用されません(最判昭62.4.24)。
【最判昭45.12.4 判決理由】
道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、同法五条一項および自動車抵当法五条(昭和四四年法律第六八号による改正前のもの)の規定により所有権の得喪ならびに抵当権の得喪および変更につき登録を対抗要件とするものではなく、また同法二〇条により質権の設定を禁じられるものではないのであるから、取引保護の要請により、一般の動産として民法一九二条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、同法一六条(昭和四四年法律第六八号による改正前のもの)の規定により抹消登録を受けた場合においても同様である。
【最判昭62.4.24 裁判要旨】
道路運送車両法による登録を受けている自動車については、民法一九二条の適用はない。
【民法 第192条】
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
オ.誤答
占有物が盗品又は遺失物であるときは、原所有者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその動産の回復を請求することができるが、原所有者からその動産を賃借している者は、回復を請求することができない。
要点盗品・遺失物の回復は、賃借人など所有者以外の被害者も請求できる。
妥当でない。盗品や遺失物の回復を請求できるのは、「被害者又は遺失者」です(民法193条)。通説では、所有者に限らず、賃借人や受寄者(物を預かっている人)のように、物を持っていて盗まれたり落としたりした人も含むと解されています。
193条は、条文の上でも「所有者」ではなく「被害者又は遺失者」と定めています。自分の意思によらずに占有を失った人に、2年間は取り戻す道を残す規定なので、占有を失った賃借人も請求できます。
【民法 第193条】
(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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