2024年 国家一般職 問題22
民法時効
【No. 22】時効に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
時効の決まりは、次の3つの考え方で整理できます。
援用:時効の期間が過ぎても、時効の利益を受けるかどうかは、利益を受ける人の判断に任されている。援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をしない
完成猶予:権利者が時効の完成を止める手段(訴えなど)をとった場合や、とるのに障害がある場合に、一定の間、時効の完成を先に延ばす
更新:権利の存在がはっきりした場合(判決での確定、債務者の承認など)に、それまでの期間を数え直し、新たに時効を進める
ア.誤答
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
要点後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない。
妥当でない。判例は、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たらず、その消滅時効を援用できないとしました(最判平11.10.21)。消滅時効を援用できるのは、当事者のほか、権利の消滅について正当な利益を有する者です(民法145条)。
先順位の債権が消えると、後順位抵当権者の順位が上がって配当が増えることはあります。しかし判決は、それは順位の上昇による反射的な利益にすぎず、援用できなくても、もともとの順位どおりに弁済を受ける地位は害されないとしました。
【最判平11.10.21 判決理由】
後順位抵当権者は、目的不動産の価格から先順位抵当権によって担保される債権額を控除した価額についてのみ優先して弁済を受ける地位を有するものである。もっとも、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎないというべきである。
【民法 第145条】
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
イ.誤答
債務者は、時効完成の有無にかかわらず、時効の利益を放棄することができない。
要点時効の利益は、あらかじめ放棄できないが、完成後は放棄できる。
妥当でない。時効の利益は、あらかじめ放棄することはできません(民法146条)が、時効が完成した後であれば、放棄することができます。
時効の利益を受けるかどうかは、完成した後に、利益を受ける本人が判断することです。完成前に放棄できるとすると、お金を貸す側が強い立場を利用して、借りる側に放棄を約束させることができてしまい、時効の制度が意味を失います。
【民法 第146条】
(時効の利益の放棄)
第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
ウ.正答
債権者が債務者に対して債務の履行の催告をしたときは、その時から6か月を経過するまでの間時効は完成しないが、その間に再度催告をしても、同様の効力は生じない。
要点催告による完成猶予中にされた再度の催告には、完成猶予の効力はない。
妥当である。催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません(民法150条1項)。しかし、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、完成猶予の効力を持ちません(同条2項)。催告とは、裁判外で履行を求めることで、内容証明郵便で請求する場合などです。
催告は、訴えなどの正式な手段をとるまでの時間を稼ぐための、一時的な手段です。催告を繰り返すだけで時効の完成をいつまでも止められるとすると、時効の制度が成り立たないので、猶予は1回に限っています。
【民法 第150条】
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
エ.誤答
債務者が債権者の権利を承認したときは、その時から時効は新たに進行を始めるが、債務者が被保佐人である場合、その承認には保佐人の同意が必要である。
要点時効の更新の承認には、行為能力や権限があることを要しない。
妥当でない。時効は、権利の承認があったときは、その時から新たに進行を始めます(民法152条1項)。この承認をするには、相手方の権利について処分する行為能力や権限は要りません(同条2項)。そのため、被保佐人は、保佐人の同意なしに承認できます。
承認は、相手方の権利があることを認めるだけで、新たに義務を負ったり、財産を処分したりするものではありません。権利の存在がはっきりしたことで、時効を数え直す理由が生じるにとどまるので、処分に必要な能力までは求めていません。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で保佐は廃止されますが、承認に処分の能力が要らないこと(152条2項)は変わりません。
【民法 第152条】
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
オ.正答
時効の期間の満了前6か月以内の間に未成年者に法定代理人がないときは、その未成年者が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その未成年者に対して、時効は完成しない。
要点法定代理人のない未成年者には、就職等から6か月は時効が完成しない。
妥当である。時効の期間の満了前6か月以内の間に未成年者に法定代理人がないときは、その未成年者が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6か月を経過するまで、その未成年者に対して時効は完成しません(民法158条1項)。
未成年者は、法定代理人がいなければ、訴えを起こすなど時効の完成を止める手段を自分でとれません。手段をとれない間に時効が完成するのは酷なので、その障害がなくなってから6か月の猶予を与えています。
【民法 第158条第1項】
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.22
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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