2024年 国家一般職 問題21
民法意思表示
【No. 21】意思表示に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
意思表示に問題があるときの決まりは、表意者(意思表示をした人)を守るか、その表示を信じた相手方や第三者を守るかの調整です。表意者の落ち度が大きいほど、表示を信じた第三者が守られやすくなります。
心裡留保・虚偽表示(わざと真意と違う表示をした):無効を、善意の第三者に対抗できない
錯誤・詐欺(勘違いした、だまされた):取消しを、善意でかつ過失がない第三者に対抗できない
強迫(脅されて表示した):第三者を守る規定はなく、取消しを誰にでも対抗できる
善意とは、ある事情を知らないことをいいます。
ア.誤答
Aは、自己が所有する甲土地を、Bと通じて、Bに仮装譲渡し、所有権移転登記を経由した。その後、Bは、甲土地上にB所有の乙建物を建築してCに賃貸した。この場合、Cは、AB間の甲土地の仮装譲渡について法律上の利害関係を有するため、民法第94条第2項の第三者に当たる。
要点仮装譲受人が建てた建物の賃借人は、94条2項の第三者に当たらない。
妥当でない。判例は、土地の仮装譲受人がその土地に建物を建てて他人に貸した場合、建物の賃借人は、仮装譲渡された土地について法律上の利害関係を有するとは認められないので、民法94条2項の第三者に当たらないとしました(最判昭57.6.8)。
94条2項が守るのは、虚偽の外形を信じて、その目的物について新たに利害関係を持った人です。建物の賃借人が契約した相手は建物の所有者で、その権利は建物についてのものです。判例は、土地との関係は建物を通じた間接的なものにとどまると見ています。
【最判昭57.6.8 判決理由】
土地の仮装譲受人が右土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、右建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法九四条二項所定の第三者にはあたらないと解するのが相当である。
【民法 第94条】
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
イ.正答
Aは、自己が所有する甲土地を、Bと通じて、Bに仮装譲渡し、所有権移転登記を経由した。その後、Bは、甲土地を当該仮装譲渡について善意のCに売却し、他方、Aは、甲土地を当該仮装譲渡について善意のDに売却した。この場合、Cは、所有権移転登記を備えない限り、Dに甲土地の所有権を対抗することはできない。
要点仮装譲受人からの善意の譲受人と真の所有者からの譲受人は、登記で決まる。
妥当である。判例は、仮装譲受人からの善意の譲受人も、取得の登記をする前に、真の所有者からの譲受人が処分禁止の仮処分の登記を備えていたときは、所有権の取得を対抗できないとしました(最判昭42.10.31)。両者の優劣は登記の先後で決まります。
善意のCとの関係では、Aは仮装譲渡の無効を主張できず、甲土地はAからBを経てCに移ったのと同じに扱われます。Aは別にDにも売っているので、Aを起点とする二重譲渡と同じ形になり、登記で決着をつけます(民法177条)。
【最判昭42.10.31 裁判要旨】
甲が乙に不動産を仮装譲渡し、丙が善意で乙からこれを譲りうけた場合であつても、丙が所有権取得登記をする前に、甲からの譲受人丁が乙を債務者とし該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは、丙はその所有権取得を丁に対抗することができない。
【民法 第177条】
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
ウ.誤答
Aは、自己が所有する甲土地を、その真意ではないことを知りながらBに売却する意思表示をし、Bは、そのことを知りながら承諾の意思表示をした。その後、Bは、甲土地を、Aの意思表示が真意ではないことについて善意のCに売却した。この場合、Cは、甲土地の所有権を取得することができない。
要点心裡留保による無効は、善意の第三者に対抗できない。
妥当でない。Bは、Aの意思表示が真意でないことを知っていたので、その意思表示は無効です(民法93条1項ただし書)。しかし、この無効は善意の第三者に対抗できないので(同条2項)、善意のCは甲土地の所有権を取得できます。
わざと真意と違う表示をしたAは、自分でその外形を作ったのですから、外形を信じたCより守られる理由が乏しいといえます。そのため、第三者は善意であれば足り、無過失までは求められません。錯誤や詐欺の場合に第三者に善意無過失が求められるのと比べてください。
【民法 第93条】
(心裡留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
エ.正答
Aは、自己が所有する甲土地をBに売却し、さらにBが甲土地をCに売却した後に、錯誤を理由として、Bに甲土地を売却する旨の意思表示を取り消した。この場合、Cは、Aの錯誤による意思表示について善意かつ無過失でなければ、民法第95条第4項の第三者として保護されない。
要点錯誤による取消しは、善意無過失の第三者に対抗できない。
妥当である。錯誤による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗できません(民法95条4項)。Cは、Aの錯誤について善意無過失でなければ保護されません。
錯誤に陥った表意者は、わざと真意と違う表示をした人ほどの落ち度はないので、第三者を守る要件を厳しくし、信じたことに過失がない第三者だけを守ります。詐欺による取消しの第三者と同じ要件です。
【民法 第95条第4項】
(錯誤)
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
オ.誤答
Aは、自己が所有する甲土地を第三者Cの強迫によりBに売却した。Bがその強迫の事実を知らず、かつ、知らないことに過失がなかった場合には、Aは、Bに対する甲土地の売却の意思表示を取り消すことはできない。
要点第三者の強迫による意思表示は、相手方が善意無過失でも取り消せる。
妥当でない。第三者の行為によって意思表示をした場合に、相手方が悪意又は有過失のときに限り取り消せるのは、第三者が詐欺を行った場合だけです(民法96条2項)。強迫にはこの制限がないので、Aは、Bが善意無過失でも取り消せます(同条1項)。
強迫された人は、恐怖から意思表示をさせられたので、だまされた人と比べても落ち度がありません。そこで、相手方の事情にかかわらず取り消せるようにして、厚く守っています。強迫による取消しには、第三者を守る規定(同条3項)もありません。
【民法 第96条】
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.21
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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