2024年 国家一般職 問題18
行政法取消訴訟の要件
【No. 18】原告適格に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
取消訴訟の原告適格の判断の枠組みは、下の判例のとおりです(最大判平17.12.7)。要点は、処分の根拠となる法令が、その利益を一般的公益の中に吸収させず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むかどうかです。
処分の相手方以外の人については、9条2項の考慮事項に沿って判断します。平成16年の改正で足されたもので、原告適格の判断が法令の文言にとらわれて硬直的にならないよう、法令の趣旨・目的や関係法令、違法な処分で害される利益の内容・性質まで考えさせるものです。
【最大判平17.12.7 判決理由】
…同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
【行政事件訴訟法 第9条第2項】
(原告適格)
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
ア.正答
航空法は、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるから、同法に基づく定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消訴訟の原告適格を有する。
要点騒音で著しい障害を受ける飛行場周辺住民は、航空運送事業免許を争える。
妥当である。判例は、免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、定期航空運送事業免許の取消訴訟の原告適格を有するとしました(最判平元.2.17。新潟空港訴訟)。
判例は、航空法が航空機の航行による障害の防止を目的の一つとし、免許の審査でも、飛行場周辺の騒音障害の防止に関する法律の趣旨を踏まえて、騒音障害の有無と程度を考えるべき仕組みになっている点を重く見ました。根拠の条文だけでなく、関連法規を含む法体系の中で読む考え方です。
【最判平元.2.17 判決理由】
以上のような航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法は、前記の目的を達成する一つの方法として、あらかじめ定期航空運送事業免許の審査の段階において、当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時など申請に係る事業計画の内容が、航空機の騒音による障害の防止の観点からも適切なものであるか否かを審査すべきものとしているといわなければならない。
イ.正答
都市計画法は、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるから、都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、同法に基づいてされた当該事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。
要点騒音等の著しい被害を直接受けるおそれのある住民は、事業認可を争える。
妥当である。判例は、都市計画事業の事業地の周辺住民のうち、事業の実施により騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、事業の認可の取消訴訟の原告適格を有するとしました(最大判平17.12.7。小田急訴訟)。
判例は、都市計画法の規定に、目的を共通にする公害対策基本法や東京都の環境影響評価条例の趣旨を参酌しました。そのうえで、違法な事業による被害は周辺の住民に集中し、反復継続すれば著しい被害に至りかねないので、一般的公益に吸収させるのは困難だとしています。
【最大判平17.12.7 判決理由】
都市計画法又はその関係法令に違反した違法な都市計画の決定又は変更を基礎として都市計画事業の認可がされた場合に,そのような事業に起因する騒音,振動等による被害を直接的に受けるのは,事業地の周辺の一定範囲の地域に居住する住民に限られ,その被害の程度は,居住地が事業地に接近するにつれて増大するものと考えられる。また,このような事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民が,当該地域に居住し続けることにより上記の被害を反復,継続して受けた場合,その被害は,これらの住民の健康や生活環境に係る著しい被害にも至りかねないものである。
ウ.誤答
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的としており、風俗営業の許可に関する規定は一般的公益の保護に加えて良好な風俗環境を享受するという個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むと解されるから、同法施行令の定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可の取消訴訟の原告適格を有する。
要点風俗営業制限地域の居住者には、風俗営業許可を争う原告適格はない。
妥当でない。判例は、風営法施行令の基準に従って条例で定められた風俗営業制限地域に居住する者は、風俗営業許可の取消しを求める原告適格を有しないとしました(最判平10.12.17)。
住居が集まる地域を制限地域にする基準は、一定の広がりのある地域の風俗環境を一般的に守るもので、特定の人の利益を守ることをうかがわせる文言がないからです。学校や病院など特定の施設の周囲を制限地域にする基準が、その施設の設置者の利益も守るとされているのとは違います。
【最判平10.12.17 判決理由】
これに対し、施行令六条一号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法一条にも法四条二項二号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう「良好な風俗環境」の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令六条一号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。
エ.誤答
公衆浴場法が公衆浴場の経営につき許可制を採用し、その設置の基準として距離制限規定を設けたのは、主として国民保健及び環境衛生という公共の福祉の見地から出たものであって、適正な許可制度の運用によって保護されるべき業者の営業上の利益は、同法によって保護される法的利益と解することはできず、単なる事実上の反射的利益にすぎないから、既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可の無効確認訴訟の原告適格を有しない。
要点既存の公衆浴場営業者は、他者への営業許可の無効確認を求める原告適格を持つ。
妥当でない。判例は、既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可の無効確認を求める訴えの利益を有しないとはいえないとして、原告適格を認めました(最判昭37.1.19)。
判例は、公衆浴場法の距離制限が、国民保健や環境衛生のためだけでなく、濫立による経営の不合理化から既存の業者を守る意図も持つ点を重く見ました。そのため、既存業者の営業上の利益は、反射的利益(法律が公益を守る結果として、たまたま受ける利益)ではなく、法律が保護する利益だとしています。
【最判昭37.1.19 判決理由】
これら規定の趣旨から考えると公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定を設けたのは、主として「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉の見地から出たものであることはむろんであるが、他面、同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところであつて、適正な許可制度の運用によつて保護せらるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によつて保護せられる法的利益と解するを相当とする。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.18
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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