2024年 国家一般職 問題16
行政法行政裁量
【No. 16】行政行為に関する次の記述のうち、判例に照らし、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
法律が行政庁に判断の幅(裁量)を認めているとき、裁判所は、自分が行政庁の立場ならどうしたかを考えて結論を比べるのではなく、行政庁の判断が裁量権の範囲を超え、又はその濫用があった場合に限って、処分を取り消します(行政事件訴訟法30条)。
裁量を認めるのは、専門的・政策的な判断や、諸般の事情を総合して決める判断は、行政庁に任せたほうが適切だからです。ただし、裁量は法律がその目的のために与えたものなので、目的と関係のない目的で使ったり、考慮すべき事項を考慮しなかったりすれば、違法になります。
【行政事件訴訟法 第30条】
(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
1.誤答
宅地建物取引業法に基づき知事等が宅建業者に対して行う不利益処分について、その要件の認定及び処分の選択には裁量の余地があり、知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられるが、その権限行使の時期については知事等に裁量は認められない。
要点宅建業者に対する監督処分は、権限行使の時期も知事等の裁量に委ねられる。
妥当でない。判例は、宅地建物取引業法に基づく業務の停止や免許の取消しについて、処分の選択や権限行使の時期等も、知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているとしました(最判平元.11.24)。
判例は、これらの処分は業者の営業の継続を不能にし、既存の取引関係者の利害にも大きく影響することを指摘しました。そうした影響を見極めて、いつ、どの処分をするかは、知事等の専門的な判断に任されています。
【最判平元.11.24 判決理由】
また、業務の停止ないし免許の取消は、当該宅建業者に対する不利益処分であり、その営業継続を不能にする事態を招き、既存の取引関係者の利害にも影響するところが大きく、そのゆえに前記のような聴聞、公告の手続が定められているところ、業務の停止に関する知事等の権限がその裁量により行使されるべきことは法六五条二項の規定上明らかであり、免許の取消については法六六条各号の一に該当する場合に知事等がこれをしなければならないと規定しているが、業務の停止事由に該当し情状が特に重いときを免許の取消事由と定めている同条九号にあっては、その要件の認定に裁量の余地があるのであって、これらの処分の選択、その権限行使の時期等は、知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているというべきである。
2.誤答
裁判所が、懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその違法性を判断すべきである。
要点懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を欠く場合に限り違法となる。
妥当でない。判例は、裁判所は、懲戒権者と同じ立場に立って処分をすべきだったか、どの処分を選ぶべきだったかを判断して処分と比べるのではなく、処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法とすべきだとしました(最判昭52.12.20)。
判例は、懲戒処分は、行為の原因・動機・結果・影響や処分歴など諸般の事情を総合的に考えて決めるもので、日ごろから職員を指揮監督する懲戒権者に任せなければ適切な結果を期待できないと見ました。
【最判昭52.12.20 裁判要旨】
二、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と右処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものである。
3.誤答
地方公務員法所定の分限制度は、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保の目的から降任等の処分権限を任命権者に認めるものであるから、懲戒処分とは異なり、分限処分は任命権者の純然たる自由裁量に委ねられる。
要点分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量に委ねられてはいない。
妥当でない。判例は、地方公務員法の分限処分について、任命権者にある程度の裁量は認められるが、純然たる自由裁量に委ねられているものではないとしました(最判昭48.9.14)。
判例は、分限制度は、公務の能率の維持と適正な運営のために処分の権限を認める一方、公務員の身分保障の見地から処分ができる場合を限定したものだと見ました。この目的に照らして、目的と関係のない動機による処分や、考慮すべき事項を考慮しない判断は、違法になります。
【最判昭48.9.14 判決理由】
おもうに、地方公務員法二八条所定の分限制度は、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動しうる場合を限定したものである。分限制度の右のような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められるけれども、もとよりその純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の上記目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることを許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤つた違法のものであることを免れないというべきである。
4.正答
公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かにかかる管理者の判断に関する司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。
要点学校施設の目的外使用の許否は、判断過程の合理性も審査される。
妥当である。判例は、学校施設の目的外使用を許可するかどうかの管理者の判断について、裁量権の行使を前提に、判断要素の選択や判断過程の合理性を検討する審査の方法を示しました(最判平18.2.7)。
判例は、学校施設は学校教育の目的のための行政財産なので、目的外の使用を許可するかどうかは、原則として管理者の裁量に委ねられているとしました。裁量を認めたうえで、結論に至る筋道が合理的かを点検して、裁量の濫用を抑える審査です。
【最判平18.2.7 裁判要旨】
1 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは,原則として,管理者の裁量にゆだねられており,学校教育上支障がない場合であっても,行政財産である学校施設の目的及び用途と当該使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。
3 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かの管理者の判断の適否に関する司法審査は,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。
5.誤答
外務大臣が旅券法の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する処分を行う場合には、申請者に対する通知書に根拠条文を付記するだけでなく、いかなる事実関係を認定して申請者が当該条文に該当すると判断したかを具体的に記載するよう努める必要があるが、提示した理由が単に旅券法の特定の規定に該当すると付記するのみで不十分であったとしても、このことのみを理由として当該処分が違法とされることはない。
要点理由付記が不十分な旅券の発給拒否処分は、違法である。
妥当でない。判例は、旅券法の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する場合、通知書に根拠規定を示すだけでは足りず、どの事実関係を認定して該当すると判断したかを具体的に記載する必要があるとし、理由付記が不十分な発給拒否処分は違法だとしました(最判昭60.1.22)。
判例は、理由付記の目的を、外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保して恣意を抑制し、申請者に理由を知らせて不服申立てに便宜を与えることに求めました。根拠規定だけでは、どの事実が問題とされたのか分からず、この目的を果たせません。
【最判昭60.1.22 判決理由】
旅券法が右のように一般旅券発給拒否通知書に拒否の理由を付記すべきものとしているのは、一般旅券の発給を拒否すれば、憲法二二条二項で国民に保障された基本的人権である外国旅行の自由を制限することになるため、拒否事由の有無についての外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきであり、…
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.16
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
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