2024年 国家一般職 問題15
憲法憲法の基礎・天皇・平和主義
【No. 15】憲法の改正や最高法規性に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
憲法は国の最高法規で、その条規に反する法律、命令などは効力を持ちません(98条1項)。改正には、国会が各議院の総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民の承認(投票での過半数の賛成)を経ることが必要です(96条1項)。通説では、最高法規である憲法がたやすく変えられないように、法律の制定より重い改正の手続を求めている(硬性憲法)と解されています。
また、憲法を尊重し擁護する義務を負うのは、天皇又は摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員です(99条)。通説では、憲法は国家権力を制限して国民の権利を守るためのものなので、権力を行使する側に憲法を守らせる趣旨と解されています。
【日本国憲法 第96条第1項】
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
【日本国憲法 第98条第1項】
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
【日本国憲法 第99条】
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
1.誤答
憲法の改正は、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
要点憲法改正の発議には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要である。
妥当でない。憲法改正の発議に必要なのは、各議院の出席議員ではなく、総議員の3分の2以上の賛成です(憲法96条1項)。
法律案の議決は、原則として出席議員の過半数で足ります。憲法改正では、欠席者も分母に入れた総議員を基準にし、3分の2以上という特別多数を求めています。通説では、最高法規を変えることの重さから、法律より重い手続にしていると解されています。
2.誤答
憲法の改正における国民の承認は特別の国民投票によって行われる必要があり、この投票を衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙と同一の期日に行うことはできない。
要点国民の承認の投票は、国会の定める選挙の際に行うこともできる。
妥当でない。国民の承認は、特別の国民投票のほか、国会の定める選挙の際行われる投票でもよいとされています(憲法96条1項)。選挙と同じ機会に投票を行うことも、憲法は認めています。
憲法が求めているのは、改正について国民の投票で過半数の賛成を得ることです。そのための投票を単独で行うか、選挙の際に行うかは、国会が決められるようにしています。
3.誤答
憲法の改正の発議に係る手続及び憲法改正の国民の承認に係る投票に関する手続は、いずれも公職選挙法で規定されている。
要点憲法改正の発議の手続は国会法、投票の手続は国民投票法に定められている。
妥当でない。憲法改正の発議の手続は国会法に、国民の承認に係る投票(国民投票)の手続は日本国憲法の改正手続に関する法律に定められています。公職選挙法ではありません。
公職選挙法は、国会議員や地方公共団体の議員・長を選ぶ選挙の手続を定める法律です。憲法改正の国民投票は、人を選ぶ選挙ではなく、改正への賛否を問う投票なので、別の法律が作られ、その法律で発議の手続もあわせて整えられました(同法1条)。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第1条】
(趣旨)
第一条 この法律は、日本国憲法第九十六条に定める日本国憲法の改正(以下「憲法改正」という。)について、国民の承認に係る投票(以下「国民投票」という。)に関する手続を定めるとともに、あわせて憲法改正の発議に係る手続の整備を行うものとする。
4.誤答
憲法第98条第1項は、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定するが、同項にいう「国務に関するその他の行為」とは、国が行う全ての行為を意味し、国が私人と対等の立場で締結した売買契約もこれに該当するとするのが判例である。
要点国が私人と対等の立場で行う私法上の行為は、98条1項の対象外である。
妥当でない。判例は、98条1項の「国務に関するその他の行為」とは、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、国が私人と対等の立場で行う行為(売買契約など)はこれに当たらないとしました(最判平元.6.20)。
判例は、98条1項を、憲法が最も強い形式的効力を持ち、反する法形式は効力を持たないとする規定だと考えました。そのため、対象は、法律、命令、詔勅と同じく法規範を定立する行為で、行政処分や裁判は含まれますが、私法上の行為は含まれません。
【最判平元.6.20 判決理由】
しかしながら、憲法九八条一項は、憲法が国の最高法規であること、すなわち、憲法が成文法の国法形式として最も強い形式的効力を有し、憲法に違反するその余の法形式の全部又は一部はその違反する限度において法規範としての本来の効力を有しないことを定めた規定であるから、同条項にいう「国務に関するその他の行為」とは、同条項に列挙された法律、命令、詔勅と同一の性質を有する国の行為、言い換えれば、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、したがつて、行政処分、裁判などの国の行為は、個別的・具体的ながらも公権力を行使して法規範を定立する国の行為であるから、かかる法規範を定立する限りにおいて国務に関する行為に該当するものというべきであるが、国の行為であつても、私人と対等の立場で行う国の行為は、右のような法規範の定立を伴わないから憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」に該当しないものと解すべきである。
5.正答
憲法は、最高法規の章において、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負うことを明文で規定している。
要点公務員の憲法尊重擁護義務は、最高法規の章に明文で定められている。
妥当である。天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負います(憲法99条)。この規定は、第10章「最高法規」に置かれています。
義務を負う者として挙げられているのは、国家権力を行使する側で、国民一般は挙げられていません。通説では、憲法は国家権力を制限して国民の権利を守るためのものなので、権力を担う者に憲法を守らせる趣旨と解されています。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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