2024年 国家一般職 問題14
憲法内閣総理大臣
【No. 14】内閣総理大臣に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
内閣と内閣総理大臣の関係は、次の2つの点を分けると整理できます。
行政権は、内閣総理大臣個人ではなく、内閣という合議体に属し(日本国憲法65条)、内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います(66条3項)。そのため、行政の重要な事柄は、閣議で決めた内閣の意思に基づいて行われます。
その中で、内閣総理大臣は内閣の首長(66条1項)として、内閣がまとまって動けるようにする役割を持ちます。国務大臣を任命し罷免する権限などは、このまとまりを保つためのものです。
【日本国憲法 第65条】
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
【日本国憲法 第66条第1項・第3項】
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
ア.誤答
内閣総理大臣は、内閣という合議体の首長であり、国務大臣の罷免権を有しているが、国務大臣を罷免する場合には、閣議における決定が必要である。
要点内閣総理大臣は、閣議を経ずに任意に国務大臣を罷免できる。
妥当でない。内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができ(日本国憲法68条2項)、閣議の決定は要りません。
内閣が一体として連帯責任を負うには、内閣の方針に従わない大臣がいたときに、首長がその大臣を外せる必要があります。そのため、罷免は、内閣総理大臣だけの判断で行えます。
【日本国憲法 第68条第2項】
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
イ.誤答
衆議院において内閣不信任決議案が可決された場合、内閣は衆議院の解散又は総辞職をしなければならず、参議院において内閣総理大臣問責決議案が可決された場合も、その決議は同様の法的効果を伴う。
要点参議院の問責決議には、内閣不信任決議のような法的効果はない。
妥当でない。内閣が衆議院の解散か総辞職をしなければならないのは、衆議院で不信任の決議案が可決されたとき(又は信任の決議案が否決されたとき)です(日本国憲法69条)。参議院の内閣総理大臣問責決議には、このような法的効果はありません。
内閣は衆議院の信任の上に成り立ち、衆議院が不信任を示したときは、衆議院を解散して国民の判断を求めることもできます。不信任と解散が対になっているので、解散のない参議院の決議には、内閣を辞めさせる効果を持たせていません。
【日本国憲法 第69条】
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
ウ.誤答
予算に計上された予備費は、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができるが、その支出については、事後に国会の承諾を得なければならない。
要点予備費は、内閣の責任で支出し、事後に国会の承諾を得る。
妥当でない。予備費を支出するのは、内閣総理大臣の責任ではなく、内閣の責任です(日本国憲法87条1項)。事後に国会の承諾を得なければならない、という後半は正しい記述です(同条2項)。
予備費の支出も行政権の行使なので、合議体である内閣が決め、内閣が国会に対して責任を負います。
【日本国憲法 第87条】
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
エ.正答
内閣総理大臣は、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあって、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するとするのが判例である。
要点内閣総理大臣は、閣議決定がなくても、行政各部に指導・助言等の指示ができる。
妥当である。行政各部を指揮監督するには閣議にかけて決定した方針が要りますが(内閣法6条)、判例は、そのような方針がない場合でも、内閣総理大臣は、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に指導、助言等の指示を与える権限を持つとしました(最大判平7.2.22。ロッキード事件)。
判例は、内閣総理大臣が内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあることを重く見て、閣議の決定を待たずに変化する行政の必要に応えられるよう、この権限を認めました。
【最大判平7.2.22 判決理由】
内閣総理大臣は、憲法上、行政権を行使する内閣の首長として(六六条)、国務大臣の任免権(六八条)、内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(七二条)を有するなど、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして、内閣法は、閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(四条)、内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(六条)、行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(八条)。このように、内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。
【内閣法 第6条】
第六条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
オ.正答
法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することが必要とされているが、これはその執行責任を明確にする趣旨に出たものであり、署名又は連署を欠く法律又は政令がそのことのみをもって無効とされるものではない。
要点署名・連署を欠く法律・政令も、そのことだけで無効にはならない。
妥当である。法律と政令には、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署(並べて署名すること)します(日本国憲法74条)。通説では、署名・連署は執行の責任を明らかにするためのもので、これを欠いても、法律・政令の効力には影響しないと解されています。
法律は、両議院で可決したときに成立します(59条1項)。成立した法律を、内閣の側が署名・連署をしないことで無効にできるとすると、内閣が国会の立法を覆せることになってしまいます。
【日本国憲法 第74条】
第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
【日本国憲法 第59条第1項】
第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.14
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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