2023年 国家一般職 問題28
民法請負・委任・その他の契約
【No. 28】委任及び寄託に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
委任契約の受任者は、報酬を受けるべき場合に、委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
要点委任が中途で終了したときは、履行の割合に応じて報酬を請求できる。
妥当である。報酬を受けるべき受任者は、委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項2号)。
委任の報酬は、原則として事務を処理するという労務に対して支払われるものです。委任が途中で終わっても、受任者は終了までに現に事務を処理しているので、その割合の報酬を受け取れるようにしています。
【民法 第648条第3項】
(受任者の報酬)
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
イ.誤答
委任契約の委任者は、いつでもその契約を解除することができるが、相手方に不利な時期に委任を解除した場合には、やむを得ない事由があっても、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。
要点やむを得ない事由があれば、不利な時期に解除しても損害賠償は要らない。
妥当でない。委任は各当事者がいつでも解除でき(民法651条1項)、相手方に不利な時期に解除したときは相手方の損害を賠償しなければなりませんが、やむを得ない事由があったときは、賠償は要りません(同条2項ただし書)。
通説では、委任は当事者の信頼関係を基礎とする契約なので、信頼を失った当事者を契約に縛り続けないよう、いつでも解除できるとされています。そのうえで、不利な時期の解除で生じた損害は賠償させて公平を図り、やむを得ない事由があれば、その賠償も免除しています。
【民法 第651条】
(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
ウ.誤答
委任契約は、委任者又は受任者が後見開始の審判、保佐開始の審判又は補助開始の審判を受けたことによって終了する。
要点委任は、受任者が後見開始の審判を受けたときに終了する。
妥当でない。委任は、委任者又は受任者の死亡、委任者又は受任者の破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判によって終了します(民法653条)。委任者の後見開始の審判や、保佐開始・補助開始の審判では終了しません。
通説では、委任は受任者を信頼して事務を任せる契約なので、事務を処理する受任者が判断能力を欠く状態になれば委任の基礎が失われますが、委任者が後見開始の審判を受けても、受任者は事務を処理できるので終了させる必要はないと解されています。
令和8年6月公布の改正(令和10年12月までに施行予定)で、成年後見と保佐の制度はなくなって補助の制度にまとめられ、653条3号は、受任者が特定補助人を付する旨の審判(事理を弁識する能力を欠く常況にある者についての審判)を受けたこと、に改められます。施行後も、委任が終了するのは受任者についてのこの審判だけで、委任者についての審判では終了しません。
【民法 第653条】
(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
エ.誤答
寄託契約の受寄者は、報酬の有無にかかわらず、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
要点無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意で保管すれば足りる。
妥当でない。受寄者の注意義務は、報酬の有無で違います。
無報酬の受寄者:自己の財産に対するのと同一の注意で保管すれば足りる(民法659条)
報酬を受ける受寄者:善良な管理者の注意(その立場の人に通常求められる注意)をもって保管する(400条)
通説では、無報酬の受寄者は、相手のために好意で物を預かる立場なので、注意の程度を軽くしていると解されています。
【民法 第659条】
(無報酬の受寄者の注意義務)
第六百五十九条 無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
【民法 第400条】
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
オ.正答
寄託契約の当事者が寄託物の返還の時期を定めた場合であっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができるが、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
要点期限前でも寄託者は返還を請求でき、受寄者は損害の賠償を請求できる。
妥当である。返還の時期を定めたときでも、寄託者はいつでも返還を請求でき(民法662条1項)、受寄者は、時期の前の返還請求によって損害を受けたときは、寄託者にその賠償を請求できます(同条2項)。
通説では、寄託は寄託者のために物を保管する契約なので、寄託者が必要とするときは、いつでも返してもらえるものとされています。そのために受寄者が受けた損害は、寄託者が賠償して調整します。
【民法 第662条】
(寄託者による返還請求等)
第六百六十二条 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
2 前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.28
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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