2023年 国家一般職 問題27
民法債権譲渡・債権の消滅
【No. 27】弁済に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
債務の弁済は第三者もすることができるが、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、弁済をするについて正当な利益を有する第三者であっても、弁済をすることができない。
要点性質や意思表示で禁じられた第三者の弁済は、正当な利益があってもできない。
妥当である。債務の弁済は第三者もできますが、債務の性質が第三者の弁済を許さないときや、当事者が第三者の弁済を禁止・制限する意思表示をしたときは、正当な利益を有する第三者(他人の債務のために自分の不動産を担保に出した人など)でも弁済できません(民法474条4項)。
通説では、第三者の弁済が認められるのは、債権者は誰から給付を受けても満足を得られるのが通常だからと解されています。本人がすることに意味のある債務(特定の演奏家の演奏など)や、当事者が第三者の弁済を排除した債務には、その前提がありません。
【民法 第474条第1項・第4項】
(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
イ.誤答
債務者が債権者に対して債務の弁済として他人の物を引き渡した場合には、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときであっても、その弁済は無効である。
要点他人の物を弁済として受領した債権者が善意で消費すれば、弁済は有効となる。
妥当でない。弁済として他人の物が引き渡された場合でも、債権者が受領した物を善意で(他人の物と知らずに)消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は有効になります(民法476条前段)。
他人の物で弁済した者は、更に有効な弁済をしなければその物を取り戻せませんが(475条)、善意で消費・譲渡された後は、取り戻す物がありません。そこで弁済を有効とし、債権者が物の所有者から賠償を求められたときは、弁済をした者に求償できるとして調整しています(476条後段)。
【民法 第475条】
(弁済として引き渡した物の取戻し)
第四百七十五条 弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
【民法 第476条】
(弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力等)
第四百七十六条 前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
ウ.正答
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができ、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものでなければ、受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することもできる。
要点弁済者は、受取証書の交付に代えて電磁的記録の提供も請求できる。
妥当である。弁済をする者は、弁済と引換えに受取証書(領収書)の交付を請求でき、受領する者に不相当な負担を課するときを除き、その代わりに内容を記録した電磁的記録(電子データ)の提供を請求することもできます(民法486条)。
受取証書は、弁済したことの証拠として重要なので、弁済と引換えに求められます。電子データでもその役割は果たせますが、用意することが受領する者にとって過大な負担になる場合まで求めることはできないとしています。
【民法 第486条】
(受取証書の交付請求等)
第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
2 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
エ.誤答
借用証などの債権証書がある場合において、債務者が全部の弁済をしたときは、債務者は、債権者にその証書の返還を請求することができるが、債権証書の返還と弁済は同時履行の関係にあり、債権者は、債権証書を返還しなければ、債務者に履行を請求することができない。
要点債権証書の返還は全部の弁済の後に請求するもので、弁済と同時履行ではない。
妥当でない。債権証書(借用証など)の返還を請求できるのは、全部の弁済をしたときです(民法487条)。弁済と同時履行の関係(相手が履行するまで自分も履行を拒める関係)にあるのは、受取証書の交付です(486条1項)。
受取証書は弁済の証拠なので、弁済と引換えでなければ弁済者が困ります。これに対し債権証書は、債権があることを示す書面なので、全部の弁済によって債権が消えた後に返せば足ります。
【民法 第487条】
(債権証書の返還請求)
第四百八十七条 債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。
【民法 第486条第1項】
(受取証書の交付請求等)
第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
オ.誤答
代物弁済契約は、債務者が、その負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させることを債権者との間で約する諾成契約であり、債権者と代物弁済契約を締結することができるのは、債務者に限られる。
要点代物弁済の契約は、弁済をすることができる者であれば第三者もできる。
妥当でない。代物弁済は、弁済をすることができる者(弁済者)が、債権者との間でする契約で(民法482条)、契約の当事者は債務者に限られません。本来の給付に代えて他の給付をすることを合意するだけで成立する諾成契約(合意だけで成立する契約)である、という前半は条文のとおりです。
代物弁済は弁済の一つの方法なので、弁済ができる者(第三者の弁済ができる者を含みます)は、債権者と合意すれば代物弁済もできます。
【民法 第482条】
(代物弁済)
第四百八十二条 弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.27
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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