2023年 国家一般職 問題25
民法その他の担保物権
【No. 25】譲渡担保に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
譲渡担保は、債権を担保するために、債務者などが目的物の所有権などを債権者に移し、債務を弁済すれば取り戻せるようにしておく担保です。民法に定めがなく、扱いは判例によって決められてきました。動産や債権を目的とする譲渡担保は、令和7年6月公布の譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(令和9年12月までに施行予定)で、法律に定められます。倉庫の在庫商品のようにまとまった動産(集合動産)や、まとまった債権(集合債権)を目的とすることもあります。
判例を読むときの軸は、形式は権利の移転でも、目的は担保だということです。契約の名前や形式より、債権担保という目的から性質を決め、目的物の価値が債権額を上回れば清算させます。一方で、担保のために権利そのものが債権者に移されているので、第三者との関係では、権利の移転としての効力も認めています。
ア.誤答
買戻特約付売買契約は、債権担保の目的で締結され、かつ、その目的物の占有の移転を伴わない場合であっても、買戻しの形式をとる以上、譲渡担保契約と解することはできない。
要点占有移転を伴わない買戻特約付売買は、原則として譲渡担保契約と解される。
妥当でない。判例は、買戻特約付売買契約の形式が採られていても、目的不動産の占有の移転を伴わない契約は、特段の事情のない限り、債権担保の目的と推認され、譲渡担保契約と解するのが相当であるとしました(最判平18.2.7)。
真正な買戻しでは、売主は期間内に代金などを返せなければ物を失い、物の価値が代金を上回っても清算を受けられません。判例は、担保の目的ならこの効果は認められないとし、真正な買戻しなら占有を移すのが通常なので、占有を移さない契約を担保と推認しました。
【最判平18.2.7 裁判要旨】
買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である
【最判平18.2.7 判決理由】
このような効果は,当該契約が債権担保の目的を有する場合には認めることができず,買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産を何らかの債権の担保とする目的で締結された契約は,譲渡担保契約と解するのが相当である。そして,真正な買戻特約付売買契約であれば,売主から買主への目的不動産の占有の移転を伴うのが通常であり,民法も,これを前提に,売主が売買契約を解除した場合,当事者が別段の意思を表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなしている(579条後段)。
イ.正答
不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は債務を弁済して目的物を受け戻すことはできない。
要点弁済期後に目的物が第三者に譲渡されると、債務者は受け戻せない。
妥当である。判例は、債務者が弁済期に弁済しないときは、債権者は目的物を処分する権能を取得し、これに基づいて第三者に譲渡すれば、原則として、譲受人は所有権を確定的に取得し、債務者は受け戻せなくなる(清算金があれば、その支払を求められるだけ)としています(最判平6.2.22)。
弁済期を過ぎれば、債権者は目的物を処分して債権を回収できます。判例は、譲受人が背信的悪意者(事情を知り、信義に反する形で譲り受けた者)でも同じだとし、そうでないと権利関係がいつまでも確定しないことなどを理由にしました。
【最判平6.2.22 判決理由】
この理は、譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても異なるところはない。けだし、そのように解さないと、権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく、譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知し得る立場にあるとは限らない債権者に、不測の損害を被らせるおそれを生ずるからである。
ウ.正答
対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者が、その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は譲渡担保設定者に付与された権限に基づかない以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。
要点通常の営業の範囲を超える売却の相手方は、原則として所有権を取得しない。
妥当である。判例は、通常の営業の範囲を超える売却処分の相手方は、目的物が保管場所から搬出されるなどして集合物から離脱したと認められない限り、所有権を承継取得できないとしました(最判平18.7.20)。
在庫商品などの集合動産は、設定者の営業で中身が入れ替わることが予定されています。そこで判例は、設定者には通常の営業の範囲内で処分する権限が与えられているとし、その範囲を超える処分は権限に基づかないとしました。
令和7年6月公布の譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(令和9年12月までに施行予定)の施行後は、施行予定の同法42条により、設定者は、譲渡担保権者を害することを知っていたときを除き、目的の動産を処分でき、処分の権限の範囲は契約で定められます。害することを知ってした処分や、権限の範囲を超えた処分の相手方は、即時取得(民法192条)の要件のうち、過失がないことは求められず、善意であれば足ります。
【最判平18.7.20 判決理由】
構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては,集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから,譲渡担保設定者には,その通常の営業の範囲内で,譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており,この権限内でされた処分の相手方は,当該動産について,譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である。上告人とA及びCとの間の各譲渡担保契約の前記条項(前記1(2)ウ,エ,(4)ウ)は,以上の趣旨を確認的に規定したものと解される。他方,対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該処分は上記権限に基づかないものである以上,譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。
【民法 第192条】
(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
【譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律 第42条第1項・第2項・第3項】
(集合動産譲渡担保権設定者による動産特定範囲に属する動産の処分)
第四十二条 集合動産譲渡担保契約における動産譲渡担保権設定者(以下「集合動産譲渡担保権設定者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の処分をすることができる。ただし、集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知っていたときは、この限りでない。
2 前項本文の規定にかかわらず、集合動産譲渡担保契約に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
3 集合動産譲渡担保権設定者が、集合動産譲渡担保権者を害することを知って動産特定範囲に属する動産の処分をし、又は前項に規定する別段の定めによる処分権限の範囲(次項及び第四十四条において「権限範囲」という。)を超えて動産特定範囲に属する動産の処分をした場合における民法第百九十二条の規定の適用については、同条中「善意であり、かつ、過失がない」とあるのは、「善意である」とする。
エ.誤答
AのCに対する集合債権を担保とするAB間の譲渡担保契約において、Aと譲渡担保権者であるBとの間で、Bに帰属した債権の一部についてAに取立権限を付与し、取り立てた金銭のBへの引渡しを要しないとする合意が付加されているときは、AがCに対して確定日付のある証書によってAからBへの債権譲渡の通知をしたとしても、この通知は第三者対抗要件としての効果を生じない。
要点取立権限を付与する合意があっても、通知は第三者対抗要件となる。
妥当でない。判例は、設定者に取立権限を与え、取り立てた金銭の引渡しも要しないとする集合債権譲渡担保でも、債権譲渡の第三者対抗要件は、確定日付のある証書による通知など、債権譲渡の対抗要件の方法で備えられるとしました(最判平13.11.22)。
判例は、この契約でも債権は債権者に確定的に譲渡されており、取立権限の付与は、譲渡された債権について当事者の間で付け加えた合意にすぎないとしました。債権が移っている以上、通知は債権譲渡の通知として効力を持ちます。
【最判平13.11.22 判決理由】
この場合は,既に生じ,又は将来生ずべき債権は,甲から乙に確定的に譲渡されており,ただ,甲,乙間において,乙に帰属した債権の一部について,甲に取立権限を付与し,取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解すべきである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.25
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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