2023年 国家一般職 問題24
民法その他の担保物権
【No. 24】質権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによりその効力を生ずるが、質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができる。
要点質権者は、設定者に自己に代わって質物の占有をさせることができない。
妥当でない。質権の設定は目的物の引渡しで効力を生じますが(民法344条)、質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることはできません(345条)。
質権は、債権者が受け取った物を占有し、弁済を受けるまで留置できる権利です(342条、347条)。設定者の手元に物を戻すと、設定者は物を使い続けられるので、物を取り上げて弁済を促すという質権の働きがなくなります。
【民法 第342条】
(質権の内容)
第三百四十二条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
【民法 第344条】
(質権の設定)
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
【民法 第345条】
(質権設定者による代理占有の禁止)
第三百四十五条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
【民法 第347条】
(質物の留置)
第三百四十七条 質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。(略)
イ.正答
動産質権では、主物とともに引き渡された従物にもその効力が及ぶ。
要点動産質権の効力は、主物とともに引き渡された従物にも及ぶ。
妥当である。従物は、主物の処分に従います(民法87条2項)。そのため、主物に質権を設定したときは、主物とともに引き渡された従物にも、質権の効力が及びます。動産質は引渡しで効力を生じるので(344条)、従物に及ぶのは、それも引き渡された場合です。
従物は、所有者が主物を常に役立てるために附属させた物です(87条1項)。主物と切り離して扱うと主物の役に立たなくなるので、処分は主物と一緒に扱うことにしています。
【民法 第87条】
(主物及び従物)
第八十七条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う。
【民法 第344条】
(質権の設定)
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
ウ.誤答
質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で質物について転質をすることができる。この場合において、転質権を設定した原質権者は、原質権の設定者に対し、不可抗力によるものを除き、転質をしたことによって生じた損失の責任を負う。
要点転質をした質権者は、不可抗力による損失についても責任を負う。
妥当でない。質権者が自己の責任で転質をしたときは、転質をしたことによって生じた損失について、不可抗力によるものであっても責任を負います(民法348条)。「不可抗力によるものを除き」とする部分が誤りです。
転質とは、質権者が、質物を自分の債務の担保としてさらに質に入れることです。348条は、設定者の承諾なしに、質権者の判断で質物を他人に渡すことを認める代わりに、そこから生じる損失の危険をすべて質権者に負わせています。
【民法 第348条】
(転質)
第三百四十八条 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
エ.誤答
不動産質権の存続期間は、設定行為で定めることができるが、その期間は30年を超えることができない。また、存続期間は更新することができない。
要点不動産質権の存続期間は10年を超えられず、更新することもできる。
妥当でない。不動産質権の存続期間は、30年ではなく10年を超えることができません(民法360条1項)。また、存続期間は更新することができますが、更新の時から10年を超えることはできません(同条2項)。
不動産質権者は、不動産を使用・収益できます(356条)。通説では、その間、設定者が自分の不動産を長く使えなくなることを避けるため、期間に上限を置いていると解されています。
【民法 第360条】
(不動産質権の存続期間)
第三百六十条 不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。
2 不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。
【民法 第356条】
(不動産質権者による使用及び収益)
第三百五十六条 不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
オ.正答
転質権の設定は、原質権の債務者(設定者)に転質権の設定を通知し、又は原質権の債務者がこれを承諾しなければ、原質権の債務者に対抗することができないと一般に解されている。
要点転質は、原質権の債務者への通知かその承諾がなければ、債務者に対抗できない。
妥当である。通説では、転質を原質権の債務者(設定者)に対抗するには、抵当権を他の債権の担保とする転抵当(民法376条1項)についての377条を類推して、債務者への通知又は債務者の承諾が必要であると解されています。
転質を知らない債務者は、原質権者に弁済してしまうおそれがあります。通知・承諾で転質を知らせ、それ以後は、転質権者の承諾なしにした弁済を転質権者に対抗できないようにして(377条2項)、債務者と転質権者の双方を守ります。
【民法 第376条第1項】
(抵当権の処分)
第三百七十六条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
【民法 第377条】
(抵当権の処分の対抗要件)
第三百七十七条 前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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