2023年 国家一般職 問題23
民法占有・所有権
【No. 23】所有権に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
土地が甲土地と乙土地に分割され、甲土地が袋地となった場合の囲繞地通行権(隣地通行権)は、囲繞地である乙土地が甲土地のための通路を開設しないまま譲渡された場合であっても、消滅しない。
要点分割で生じた袋地の通行権は、残余地が譲渡されても消滅しない。
妥当である。分割によって公道に通じない土地(袋地)が生じたときは、その所有者は、他の分割者の所有地(残余地)だけを、償金を払わずに通行できます(民法213条)。判例は、この通行権は、残余地が第三者に譲渡されても消滅しないとしました(最判平2.11.20)。
判例は、通行権などの相隣関係の規定は土地の利用の調整を目的とし、人と人との関係を定めたものではないので、213条の通行権も、袋地に付いた権利で、残余地そのものが負う負担だとしています。残余地が譲渡されると消えるとすると、袋地の所有者が自分の関わらない偶然の事情で保護を失い、ほかの隣地の所有者にも思わぬ負担が及ぶからです。
【最判平2.11.20 判決理由】
けだし、民法二〇九条以下の相隣関係に関する規定は、土地の利用の調整を目的とするものであって、対人的な関係を定めたものではなく、同法二一三条の規定する囲繞地通行権も、袋地に付着した物権的権利で、残余地自体に課せられた物権的負担と解すべきものであるからである。残余地の所有者がこれを第三者に譲渡することによって囲繞地通行権が消滅すると解するのは、袋地所有者が自己の関知しない偶然の事情によってその法的保護を奪われるという不合理な結果をもたらし、他方、残余地以外の囲繞地を通行しうるものと解するのは、その所有者に不測の不利益が及ぶことになって、妥当でない。
【民法 第213条】
第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
イ.正答
建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し、独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法の加工の規定に基づき、当該第三者の工事が一応終了したと認められる時点までの間に当該第三者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。
要点建前に第三者が工事をして建物にした場合は、加工の規定で所有権を決める。
妥当である。判例は、建築途中の建前に第三者が材料を出して工事をし、独立の建物に仕上げた場合、所有権の帰属は、加工の規定(民法246条2項)で決めるとしました。比べるのは、建物としての要件を備えた時点の状態ではなく、第三者の工事が一応終了した時点までに加えた工事と材料の価格と、建前の価格です(最判昭54.1.25)。
判例は、建物の建築のように、材料に加える工作が特別の価値を持ち、仕上がった建物の価格が材料よりも相当に高くなる場合には、工作の価値を考える加工の規定によるのが相当だとしています。
【最判昭54.1.25 裁判要旨】
二 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供し工事を施して仕上げた建物の所有権の帰属を民法二四六条二項の規定に基づいて決定する場合において、建前が、屋根瓦が葺かれ、荒壁が塗られて法律上独立の不動産である建物としての要件を具備するに至つた時点における状態に基づいてではなく、加工者の工事が一応終了したと認められる時点までの間に加工者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。
【最判昭54.1.25 判決理由】
けだし、このような場合には、動産に動産を単純に附合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合とは異なり、右建物の建築のように、材料に対して施される工作が特段の価値を有し、仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度増加するような場合には、むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるからである。
【民法 第246条】
(加工)
第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
ウ.誤答
建物の賃借人が当該建物を増改築した場合において、増改築について賃貸人の承諾を得ていたときは、その増改築部分が取引上の独立性を有しないとしても、賃借人は、その増改築部分について区分所有権を取得する。
要点独立性のない増築部分は、承諾があっても区分所有権の対象にならない。
妥当でない。判例は、建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て2階部分を増築した場合でも、外部への出入りが賃借建物の中の梯子段を使うほかないときは、その部分は取引上の独立性がなく、区分所有権の対象にならないとしました(最判昭44.7.25)。増築部分は建物に付合し、その所有権は建物の所有者に属します。
建物の構造の一部でしかない部分に別の所有権を認めると、切り離して取引できない部分に、別々の所有権が並ぶことになります。通説では、権原によって附属させた人の権利を残す民法242条ただし書は、附属させた物が独立性を保っている場合にだけ働くと解されています。
【最判昭44.7.25 判決理由】
そうとすれば、第三建物は、既存の第二建物の上に増築された二階部分であり、その構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有せず、建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらないといわなければならず、たとえDが第三建物を構築するについて右第二建物の一部の賃貸人Eの承諾を受けたとしても、民法二四二条但書の適用はないものと解するのが相当であり、その所有権は構築当初から第二建物の所有者Eに属したものといわなければならない。
【民法 第242条】
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
エ.誤答
金銭の直接占有者は、その占有を正当付ける権利を有しない場合を除き、その金銭の所有者とみるべきである。
要点金銭の占有者は、占有を正当づける権利の有無にかかわらず所有者とみられる。
妥当でない。判例は、金銭の直接占有者は、特段の事情のない限り、その占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、金銭の所有者とみるべきだとしました(最判昭39.1.24)。権利のない占有者を除くとする部分が誤りです。
判例は、金銭は物としての個性がなく、価値そのものであって、価値は金銭のある所についていくことを理由にしています。だまし取った金銭でも、受け取った人の所有になります。
【最判昭39.1.24 判決理由】
金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和二九年一一月五日最高裁判所第二小法廷判決、刑集八巻一一号一六七五頁参照)。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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