2023年 国家一般職 問題22
民法通則・人・法人
【No. 22】権利能力なき社団に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
権利能力なき社団は、法人ではないものの、団体としての実体を持つ集団です。法人格がないので、社団そのものは権利や義務の主体になれません。そこで判例は、社団の名で得た財産や負った債務は、構成員全員に一体として(総有的に)帰属すると考えています。
総有とは、構成員が団体の一員として財産を共同で持ち、各自の持分も、分割を求める権利もない持ち方です。構成員が入れ替わっても、財産は団体のものとして残ります。
この考え方から、構成員の持分の有無、取引上の債務の責任、不動産の登記名義の扱いが導かれます。
ア.正答
権利能力なき社団といえるためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要する。
要点権利能力なき社団といえるには、団体としての組織などを備えている必要がある。
妥当である。判例は、権利能力なき社団といえるためには、本肢の4つの点(団体としての組織、多数決の原則、構成員が変わっても団体が存続すること、代表の方法・総会の運営・財産の管理などの確定)が必要だとしました(最判昭39.10.15)。
これらは、個人の単なる集まりではなく、団体が構成員から独立して活動しているかを見るための要素です。判決は、そのような社団が、代表者により社団の名で、構成員全体のために権利を取得し、義務を負うとしています。
【最判昭39.10.15 裁判要旨】
一 法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。
イ.誤答
権利能力なき社団の有する資産は、各構成員がそれぞれの出資額に応じた持分で共有する。
要点権利能力なき社団の資産は、構成員に総有的に帰属する。
妥当でない。権利能力なき社団の資産は、各構成員が出資額に応じた持分で共有するのではなく、構成員全員に総有的に帰属します。そのため、構成員全員の同意で別の定めをしない限り、構成員も元構成員も、当然には持分権や分割請求権を持ちません(最判昭32.11.14)。
判例は、資産が団体全体のものである以上、それをどうするかは構成員全員の意思で決めるべきで、一人の構成員が持分を主張したり分割を求めたりはできないと考えました。
【最判昭32.11.14 判決理由】
思うに、権利能力なき社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の所謂総有に属するものであるから、総社員の同意をもつて、総有の廃止その他右財産の処分に関する定めのなされない限り、現社員及び元社員は、当然には、右財産に関し、共有の持分権又は分割請求権を有するものではないと解するのが相当である。
ウ.正答
権利能力なき社団は、不動産登記において名義人となり得ず、登記請求権を有しない。
要点権利能力なき社団は、登記名義人となれず、登記請求権もない。
妥当である。判例は、権利能力なき社団の不動産は、代表者が構成員全員の受託者として個人の名義で登記できるにすぎず、社団を権利者とする登記は許されないとし、社団は登記請求権を持たないとしました(最判昭47.6.2)。
判決は、資産は構成員全員に総有的に帰属し、社団自身は権利義務の主体にならないので、登記上の権利者にもなれないとしました。不動産登記法も、権利者として登記できる者を、権利能力を持つ者に限っています。
【最判昭47.6.2 判決理由】
しかしながら、権利能力なき社団の資産はその社団の構成員全員に総有的に帰属しているのであつて、社団自身が私法上の権利義務の主体となることはないから、社団の資産たる不動産についても、社団はその権利主体となり得るものではなく、したがつて、登記請求権を有するものではないと解すべきである。
エ.誤答
権利能力なき社団の取引上の債務については、社団の有する財産が責任財産となるほか、各構成員が取引の相手方に対して個人的債務ないし責任を負う。
要点取引上の債務については、社団の総有財産だけが責任財産となる。
妥当でない。判例は、社団の代表者が社団の名でした取引上の債務について、社団の総有財産だけが責任財産となり、構成員各自は取引の相手方に個人的な債務や責任を負わないとしました(最判昭48.10.9)。
資産だけでなく債務も、構成員一人一人ではなく団体全体に一体として帰属すると考えるので、債権者が当てにできるのは団体の財産になります。責任財産とは、債務が支払われないときに強制執行の対象になる財産のことです。
【最判昭48.10.9 裁判要旨】
権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.22
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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