2023年 国家一般職 問題18
行政法取消訴訟の要件
【No. 18】処分性に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
抗告訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)かどうかは、下の判例の定式で判断します(最判昭39.10.29)。要点は、公権力の行使であることと、国民の権利義務への直接の法的効果があることです。
この定式から、対等な立場で結ぶ契約、行政の内部の行為、一般的・抽象的なルールの定めは、ふつう処分になりません。ただ判例は、形の上では当てはまりにくい行為でも、その行為で国民の法的地位が直接変わるか、後の段階で争ったのでは実効的な権利救済にならないかを重く見て、処分と認めることがあります。
【最判昭39.10.29 判決理由】
…行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは、当裁判所の判例とするところである…
【行政事件訴訟法 第3条第2項】
(抗告訴訟)
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
ア.正答
行政庁の処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうが、東京都が私人から買収した土地の上にごみ焼却場を設置することを計画し、その計画案を都議会に提出した行為は、都の内部的手続行為にとどまり、設置行為そのものは私法上の契約によるため、いずれも行政庁の処分には当たらない。
要点ごみ焼却場の設置の計画案の提出や設置行為は、行政処分に当たらない。
妥当である。判例は、ごみ焼却場の設置の計画案の都議会への提出も、設置行為も、行政庁の処分に当たらないとしました(最判昭39.10.29)。
設置行為は、都が私人と対等の立場で結んだ契約によるもので、公権力の行使ではありません。計画案の提出は都の中の手続で、住民の権利義務を直接動かしません。周辺住民が事実上の不利益を受けるとしても、それだけでは処分になりません。
【最判昭39.10.29 判決理由】
…本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立つて締結した私法上の契約により設置されたものであるというのであり、原判決が被上告人都において本件ごみ焼却場の設置を計画し、その計画案を都議会に提出した行為は被上告人都自身の内部的手続行為に止まると解するのが相当であるとした判断は、是認できる。
イ.誤答
医療法に基づいて都道府県知事が行う病院開設中止の勧告は、当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導であり、当該勧告に従わないことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされることはないため、行政庁の処分には当たらない。
要点医療法に基づく病院開設中止の勧告は、行政処分に当たる。
妥当でない。判例は、病院開設中止の勧告は、医療法上は行政指導として定められているものの、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最判平17.7.15)。
判例が重く見たのは、勧告の実際の効果です。勧告に従わないと、ほぼ確実に保険医療機関の指定を受けられず、国民皆保険の下では、病院の開設自体を断念せざるを得なくなります。後で指定の拒否処分を争えるとしても、この結論は変わらないとしています。
【最判平17.7.15 判決理由】
…医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。
ウ.誤答
告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた建築基準法所定のいわゆるみなし道路の指定は、特定の土地について個別具体的にみなし道路の指定をするものではなく、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものではないから、行政庁の処分には当たらない。
要点告示による2項道路の一括指定も、行政処分に当たる。
妥当でない。判例は、告示により一定の条件に合う道を一括して指定する方法でされた2項道路(幅員4m未満でも道路とみなされる道)の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最判平14.1.17)。
告示によって、条件に合う個々の道に指定の効果が生じ、その敷地の所有者は、道路内の建築の制限などの具体的な私権の制限を受けるからです。対象を個別に名指ししていなくても、個々の土地に直接の法的効果が生じる点を重く見ました。
【最判平14.1.17 判決理由】
そうすると,特定行政庁による2項道路の指定は,それが一括指定の方法でされた場合であっても,個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり,個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。
エ.正答
市が設置する特定の保育所を廃止する条例が、当該保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により当該保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものである場合、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る。
要点特定の保育所を廃止する条例の制定行為は、行政処分に当たる。
妥当である。判例は、本肢の条例の制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最判平21.11.26)。
条例はふつう一般的なルールを定める立法なので、処分に当たりません。判例は、この条例が、特定の保育所の廃止だけを内容とし、限られた特定の者の法的地位を直接奪う点を重く見ました。判決の効力が第三者にも及ぶ取消訴訟で争わせれば、市の対応が一律になり合理的だ、とも述べています。
【最判平21.11.26 判決理由】
条例の制定は,普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから,一般的には,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが,本件改正条例は,本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって,他に行政庁の処分を待つことなく,その施行により各保育所廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから,その制定行為は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。
オ.正答
労働基準監督署長が労働者災害補償保険法に基づいて行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、同法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の労災就学援護費の支給請求権に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、行政庁の処分に当たる。
要点労災就学援護費の支給・不支給の決定は、行政処分に当たる。
妥当である。判例は、労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最判平15.9.4)。
労災就学援護費は、法律に基づく事業として、保険給付と同様の手続で支給される仕組みです。被災労働者や遺族は、署長の支給決定を受けて初めて具体的な支給請求権を取得するので、決定が権利を直接左右する点を重く見ました。支給の細かい要件が通達で定められていても、結論は変わりません。
【最判平15.9.4 判決理由】
…被災労働者又はその遺族は,上記のとおり,所定の支給要件を具備するときは所定額の労災就学援護費の支給を受けることができるという抽象的な地位を与えられているが,具体的に支給を受けるためには,労働基準監督署長に申請し,所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず,労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.18
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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