2023年 国家一般職 問題16
行政法行政立法・行政計画
【No. 16】行政基準に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政基準は、行政機関が定める一般的な定めです。国民の権利義務に関わる定め(法規)かどうかで、2つに分けられます。
法規命令:国民の権利義務を定めるもの。法律の委任など、法律の根拠が要る。裁判所も、これを基準に判断する
行政規則:行政の内部で守る定め(通達、審査基準など)。法律の根拠は要らないが、国民や裁判所を直接には拘束しない
どちらに当たるかは、告示・通達といった形式の名前ではなく、定めの中身で決まります。
1.誤答
行政機関が定立する規範を命令といい、内閣が定める政令、内閣総理大臣が定める内閣府令、主任の大臣が定める省令などがある。各大臣が公示を必要とする場合に発する告示は、行政機関の意思決定や一定の事項を国民に周知させるための形式の一つであり、法規としての性質を持つことはない。
要点告示も、内容によっては法規としての性質を持つ。
妥当でない。告示は、公示が必要な場合に発する形式ですが、内容によっては法規としての性質を持ちます。判例は、文部省告示として定められた高等学校学習指導要領を、法規としての性質を持つとしました(最判平2.1.18)。命令の種類の説明は記述のとおりです。
告示は、知らせる(公示する)ための形式の名前で、何を定めるかまでは決まっていません。法令の委任を受けて国民の権利義務に関わる事項を定めれば、その告示は法規命令と同じ性質を持ちます。
【最判平2.1.18 裁判要旨】
一 高等学校学習指導要領(昭和三五年文部省告示第九四号)は、法規としての性質を有する。
【国家行政組織法 第14条第1項】
第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
2.誤答
法律が政令に委任しているにもかかわらず、当該政令が更に一部の事項について省令に再委任することは、法律から命令への委任が許される以上、原則として容認されていると解されるが、犯罪の構成要件を再委任することは許されない。
要点政令が罰則の前提となる事項の一部を再委任することも許される。
妥当でない。判例は、帳簿の記載事項の定めを法律から委任された政令が、その一部をさらに税務署長の指定に委ねたことも、法律の委任の趣旨に反しないとしました(最大判昭33.7.9)。帳簿の記載を怠ると罰則が科されるので、記載事項は犯罪の前提になる事項です。犯罪の構成要件に関わる事項でも、再委任が一律に許されないわけではありません。
判例は、法律が義務の主体と内容の大枠を定めていること、政令も記載事項を具体的に定め、漏れた事項で地方の実情に応じて必要なものだけを税務署長に任せたことを重く見ました。
【最大判昭33.7.9 判決理由】
しかるに、同五四条は、その帳簿の記載等の義務の主体およびその義務の内容たる製造、貯蔵又は販売に関する事実を帳簿に記載すべきこと等を規定し、ただ、その義務の内容の一部たる記載事項の詳細を命令の定めるところに一任しているに過ぎないのであつて、立法権がかような権限を行政機関に賦与するがごときは憲法上差支ないことは、憲法七三条六号本文および但書の規定に徴し明白である。そして、前記酒税法施行規則六一条は、その一号ないし八号において、帳簿に記載すべき事項を具体的且つ詳細に規定しており、同条九号は、これらの規定に洩れた事項で、各地方の実状に即し記載事項とするを必要とするものを税務署長の指定に委せたものであつて、前記酒税法施行規則においてこのような規定を置いたとしても、前記酒税法五四条の委任の趣旨に反しないものであり、…
3.正答
行政規則は、行政機関が策定する一般的な法規範であって、国民の権利義務に関係する法規としての性質を有しないため、法律の授権を要しない。また、命令の形式をとる必要はなく、内規、要綱などの形式で定めることができる。
要点行政規則は法規の性質を持たないので、法律の授権を要しない。
妥当である。行政規則は、行政機関の内部で守る定めで、法規としての性質を持たないので、法律の授権は要りません。形式も、訓令・通達・要綱などで足ります。
法律の根拠が求められるのは、国民に義務を課し、権利を制限する定めです(内閣法11条、国家行政組織法12条3項)。行政規則は国民を直接拘束しないので、行政機関が組織を運営する権限の範囲で定められます。
【内閣法 第11条】
第十一条 政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
【国家行政組織法 第12条第3項】
3 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。
4.誤答
解釈基準は、法令の解釈を統一するため、上級行政機関が下級行政機関に対して発する基準である。上級行政機関は通達という形式で解釈基準を示すことがあるが、解釈基準としての通達は、単に法令の解釈の指針を示したものにすぎず、上級行政機関による指揮監督権の行使として下級行政機関を拘束するものではない。
要点解釈基準としての通達も、下級行政機関を拘束する。
妥当でない。判例は、通達は上級行政機関が下級行政機関と職員の職務権限の行使を指揮するために発する行政組織内部の命令で、これらの機関と職員は通達に拘束されるとしました(最判昭43.12.24)。解釈基準としての通達も、下級行政機関を拘束します。
上級行政機関は、所管の機関と職員を指揮監督する手段として、通達を発します(国家行政組織法14条2項)。通達が拘束するのは組織の内部だけで、一般の国民は直接には拘束されません。
【最判昭43.12.24 判決理由】
元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、…
【国家行政組織法 第14条第2項】
2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
5.誤答
裁量基準は、行政庁の作成する内部基準であるが、行政手続法は、申請に対する処分についての裁量基準である審査基準を作成し、原則として公にすることを行政庁に義務付けている。この審査基準は恣意的な裁量行政を排除するためのものであるから、行政庁が審査基準に違背して処分を行った場合には、当該処分は当然に違法となる。
要点審査基準に違反した処分が、当然に違法となるわけではない。
妥当でない。行政手続法は、審査基準を定め、原則として公にすることを行政庁に求めています(5条1項・3項)。しかし、審査基準は行政規則なので、これに違反した処分が当然に違法となるわけではありません。
処分が適法かどうかは、根拠となる法令に適合するかで決まります。判例も、通達の趣旨に反する処分がされても、そのことを理由に処分の効力が左右されるものではないとしています(最判昭43.12.24)。ただし通説では、合理的な理由なく審査基準と異なる扱いをすれば、平等原則などに反して違法になりうると解されています。
【最判昭43.12.24 判決理由】
このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。
【行政手続法 第5条第1項・第3項】
(審査基準)
第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.16
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。