2023年 国家一般職 問題12
憲法参政・社会権の総合
【No. 12】社会権に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
子どもの教育内容をだれが決めるかについて、判例は、親・教師・国のそれぞれに、憲法上の根拠に応じた範囲を認めています(最大判昭51.5.21)。教師の裁量の広さは、教わる側に教育内容を批判する力があるか、学校や教師を選ぶ余地があるかで変わり、その力や余地が乏しいほど、全国的な水準を保つための国の関与が認められます。
労働組合は、団結を守るために必要かつ合理的な範囲で組合員を統制できます。しかし、選挙でだれを支持するか、立候補するかは、組合員一人ひとりが市民として自主的に決めることなので、組合は勧告や説得はできても、協力を強制することはできません(最大判昭43.12.4、最判昭50.11.28)。
ア.正答
親は、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められ、また、私学教育における自由や普通教育における教師の教授の自由も、それぞれ限られた一定の範囲において認められる。それ以外の領域においては、一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、し得る者として、憲法上は、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有する。
要点国は、必要かつ相当と認められる範囲で、教育内容を決定する権能を有する。
妥当である。旭川学力テスト事件の判例のとおりです。親・私学・教師の自由が認められる範囲を除き、国は、必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を持ちます(最大判昭51.5.21)。
判例は、子どもの教育は、子どもの学習する権利にこたえるためのものだとしたうえで、国は国民全体の意思を組織的に決めて実現する立場にあるので、教育政策を担いうるとしました。ただし、教育に政治的な影響が深く入り込むおそれがあるので、教育内容への国の介入はできるだけ抑制的であることが求められるとも述べています。
【最大判昭51.5.21 裁判要旨】
二、憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。
イ.誤答
高等学校の教育は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とするものであり、高等学校においても、教師は依然生徒に対し相当な影響力、支配力を有しているが、生徒の側には、教師の教育内容を批判する能力が備わっており、教師を選択する余地もあるため、国が定立する高等学校教育の内容及び方法について遵守すべき基準は必要最低限とすべきであって、高等学校の教師には、教育の具体的内容及び方法につき広い裁量が認められる。
要点高校でも、生徒の批判能力は十分でなく、教師の裁量には制約がある。
妥当でない。判例は、高等学校でも、教師は生徒に相当な影響力、支配力を持ち、生徒には教師の教育内容を批判する十分な能力はまだ備わっておらず、教師を選ぶ余地も大きくないとしました(最判平2.1.18。伝習館高校事件)。そのため、国が教育の内容と方法の基準を定める必要があり、教師の裁量にもおのずから制約があるとしています。
本肢は、生徒に批判する能力が備わり、教師を選ぶ余地もあるとする点が、判例と逆です。批判する能力と選ぶ余地は、旭川学力テスト事件の判例が、普通教育で完全な教授の自由を否定した理由と同じ観点です。
【最判平2.1.18 判決理由】
…また、高等学校においても、教師が依然生徒に対し相当な影響力、支配力を有しており、生徒の側には、いまだ教師の教育内容を批判する十分な能力は備わっておらず、教師を選択する余地も大きくないのである。これらの点からして、国が、教育の一定水準を維持しつつ、高等学校教育の目的達成に資するために、高等学校教育の内容及び方法について遵守すべき基準を定立する必要があり、…
ウ.誤答
地方議会議員の選挙に当たり、労働組合が、その組合員の居住地域の生活環境の改善その他生活向上を図る目的で、その利益代表を議会に送り込むための選挙活動をすること、そして、その一方策として、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進することは、組合の活動として許されないわけではないが、立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で極めて重要であるため、労働組合が、統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、立候補を思いとどまるように勧告し又は説得することは、組合の統制権の限界を超えるものとして違法である。
要点統一候補以外の組合員に立候補を断念するよう勧告・説得することは許される。
妥当でない。前半の、統一候補を決めて選挙運動をすることが許されること、立候補の自由が重要であることは、判例のとおりです。誤りは結論で、判例は、立候補を思いとどまるよう勧告又は説得することは許されるとしました(最大判昭43.12.4。三井美唄労組事件)。許されないのは、その域を超えて、立候補の取りやめを要求し、従わないことを理由に統制違反者として処分することです。
判例は、統制権による制約は、その必要性と立候補の自由の重要性を比べて判断すべきだとし、勧告や説得までは認め、処分による強制は認めませんでした。
【最大判昭43.12.4 裁判要旨】
二 公職の選挙に立候補する自由は、憲法第一五条第一項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。
三 労働組合が、地方議会議員の選挙にあたり、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進している場合において、統一候補の選にもれた組合員が、組合の方針に反して立候補しようとするときは、これを断念するよう勧告または説得することは許されるが、その域を超えて、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして許されない。
エ.正答
政党や選挙による議員の活動は、各種の政治的課題の解決のために労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄であり、したがって、労働組合が、組合員に、臨時組合費として、選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金の支払を強いることは許されない。
要点特定の候補者支援のための政党への寄付資金は、組合員に強制できない。
妥当である。国労広島地本事件の判例のとおりです。選挙でどの政党や候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして組合員各自が決めるべき事柄なので、候補者を支援するために政党へ寄付する資金を、組合員から強制的に集めることはできません(最判昭50.11.28)。
労働組合は、組合員の経済的地位の向上を主な目的とする団体で、多数決で政治的な行動をすることを予定して作られた政治団体ではありません。そのため、多数決で決めた政治的活動への協力を、考えの違う組合員に義務づけることは、原則として許されないとされました。
【最判昭50.11.28 判決理由】
…政党や選挙による議員の活動は、各種の政治的課題の解決のために労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。したがつて、労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが(当裁判所昭和三八年(あ)第九七四号同四三年一二月四日大法廷判決・刑集二二巻一三号一四二五頁参照)、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されないというべきであり、その費用の負担についても同様に解すべきことは、既に述べたところから明らかである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和5年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。