2024年 国家一般職 問題11
憲法職業選択の自由
【No. 11】職業の自由に関する次の記述のうち、判例に照らし、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
職業の自由は、精神的自由に比べて、公権力による規制の要請が強い自由です。判例は、規制の目的によって、立法府の判断をどこまで尊重するかを変えています。
消極目的の規制(生命や健康に対する危険を防ぐもの):許可制のような強い規制は、重要な公共の利益のために必要かつ合理的で、よりゆるやかな規制では目的を達成できないことが必要です(最大判昭50.4.30)。
積極目的の規制(社会経済政策のためのもの):規制の要否や手段の評価は、社会経済の実態を踏まえた立法府の役目なので、著しく不合理であることが明白な場合に限って違憲とします(最大判昭47.11.22)。
財政目的の許可制も、立法府の判断が著しく不合理でない限り、違憲とされません(最判平4.12.15)。
【最大判昭50.4.30 判決理由】
…一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。
【最大判昭47.11.22 裁判要旨】
二 個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限つて、これを違憲とすることができる。
【日本国憲法 第22条第1項】
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
1.誤答
公衆浴場法による公衆浴場の適正配置規制について、公衆浴場の偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来し、また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じ、浴場の衛生設備の低下等好ましくない影響を来すというのは、単なる観念上の想定にすぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたいため、当該規制は、その必要性と合理性を肯定するに足りず、憲法第22条第1項に違反する。
要点公衆浴場の適正配置規制は、憲法22条1項に違反しない。
妥当でない。判例は、公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠く場合に経営を許可しないことができるとする規定は、憲法22条に違反しないとしました(最大判昭30.1.26)。
判例が重く見たのは、公衆浴場が、多数の国民の日常生活に欠かせない、公共性の高い厚生施設であることです。偏在すれば利用に不便を来し、濫立すれば無用の競争で衛生設備が低下するおそれがあるので、国民保健と環境衛生の点から配置を規制できるとしました。
「単なる観念上の想定」として距離制限を違憲としたのは、薬局についての判例です(最大判昭50.4.30)。
【最大判昭30.1.26 判決理由】
しかし、公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる、多分に公共性を伴う厚生施設である。そして、若しその設立を業者の自由に委せて、何等その偏在及び濫立を防止する等その配置の適正を保つために必要な措置が講ぜられないときは、その偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれなきを保し難く、また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理ならしめ、ひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれなきを保し難い。このようなことは、上記公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、出来る限り防止することが望ましいことであり、従つて、公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠き、その偏在乃至濫立を来たすに至るがごときことは、公共の福祉に反するものであつて、この理由により公衆浴場の経営の許可を与えないことができる旨の規定を設けることは、憲法二二条に違反するものとは認められない。
2.誤答
一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性に鑑み、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務付ける等の強い規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定を図る措置がとられる場合がある。薬局等の適正配置規制は、医薬品の供給の適正化措置として強力な規制を施す代わりに、既存の薬局等にある程度の独占的地位を与えるのが主たる趣旨、立法目的である。
要点薬局等の適正配置規制は、既存業者に独占的地位を与える趣旨のものではない。
妥当でない。判例は、役務の提供を義務づけるなどの強い規制の反面として、提供者に独占的地位を与える措置がとられる場合があることは認めましたが、薬局等の適正配置規制はそのような趣旨のものではないとしました(最大判昭50.4.30)。
判例は、この規制の目的を、主として不良医薬品の供給から国民の生命と健康を守る消極的、警察的なものと捉えました。小売商の保護のような経済政策の目的ではないので、小売市場事件の判例の考え方は、そのままは当てはまらないとしています。
【最大判昭50.4.30 判決理由】
…一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によつて、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合があるけれども、薬事法その他の関係法令は、医薬品の供給の適正化措置として右のような強力な規制を施してはおらず、したがつて、その反面において既存の薬局等にある程度の独占的地位を与える必要も理由もなく、本件適正配置規制にはこのような趣旨、目的はなんら含まれていないと考えられるのである。
3.正答
薬局等の適正配置規制について、予防的措置として職業の自由に対する大きな制約である薬局の開設等の地域的制限が憲法上是認されるためには、国民の保健上の必要性がないとはいえないというだけでは足りず、このような制限を施さなければ当該措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程度において国民の保健に対する危険を生じさせるおそれのあることが、合理的に認められることを必要とする。
要点地域的制限には、保健への危険を生じさせるおそれが合理的に認められる必要がある。
妥当である。薬局の距離制限が、違反を未然に防ぐ予防的措置として認められるには、保健上の必要性がないとはいえない程度では足りず、制限をしなければ、職業の自由の制約と釣り合う程度の保健への危険が生じるおそれが合理的に認められなければなりません(最大判昭50.4.30)。
判例は、薬事法などには医薬品の製造から販売までの厳しい規制と監督の仕組みがあり、それが守られれば不良医薬品の供給は防げるとしました。そのうえに大きな制約である場所の制限を加えるには、見合うだけの危険が必要だという考え方です。
【最大判昭50.4.30 判決理由】
しかし、このような予防的措置として職業の自由に対する大きな制約である薬局の開設等の地域的制限が憲法上是認されるためには、単に右のような意味において国民の保健上の必要性がないとはいえないというだけでは足りず、このような制限を施さなければ右措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程度において国民の保健に対する危険を生じさせるおそれのあることが、合理的に認められることを必要とするというべきである。
4.誤答
租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するものであり、職業の自由に対する強力な制限であるから、より制限的でない他の選び得る規制手段が存在するかを具体的・実質的に審査し、それがあり得ると解される場合には違憲となる。
要点財政目的の許可制は、立法府の判断が著しく不合理でない限り合憲である。
妥当でない。判例は、租税を適正かつ確実に徴収するという財政目的のための職業の許可制は、その必要性と合理性についての立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し著しく不合理なものでない限り、憲法22条1項に違反しないとしました(最判平4.12.15)。より制限的でない手段があるかを具体的に審査する基準はとっていません。
租税は所得の再分配や景気の調整などの働きも持ち、その仕組みを定めるには国政全般からの政策判断と専門技術的な判断が要るので、裁判所は立法府の判断を尊重せざるを得ない、という理由です。
【最判平4.12.15 判決理由】
租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五号同六〇年三月二七日大法廷判決・民集三九巻二号二四七頁参照)。 (三) 以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法二二条一項の規定に違反するものということはできない。
5.誤答
酒税の確実な賦課徴収のための酒類販売業免許制度について、制度採用当初は、その必要性と合理性があったというべきであるが、その後の社会状況の変化と租税法体系の変遷に伴い、酒税の国税全体に占める割合等が相対的に低下するに至った時点においては、同制度を存置しておくことの必要性と合理性は失われたため、当該時点以降、同制度を定める規定は憲法第22条第1項に違反する。
要点酒類販売業の免許制度は、その後の状況の変化を踏まえても合憲である。
妥当でない。判例は、酒税の国税全体に占める割合などが相対的に低下した時点でも、免許制度を残すことの必要性と合理性に議論の余地があることは認めつつ、酒税の徴収の仕組みはいまだ合理性を失っていないなどとして、憲法22条1項に違反しないとしました(最判平4.12.15)。
判例は、酒税が本来消費者に負担を転嫁すべき税であることに加え、規制されるのが、酔いをもたらす嗜好品で販売秩序の維持のためにも何らかの規制がやむを得ない酒類の販売の自由にとどまることも考慮しています。
【最判平4.12.15 判決理由】
その後の社会状況の変化と租税法体系の変遷に伴い、酒税の国税全体に占める割合等が相対的に低下するに至った本件処分当時の時点においてもなお、酒類販売業について免許制度を存置しておくことの必要性及び合理性については、議論の余地があることは否定できないとしても、前記のような酒税の賦課徴収に関する仕組みがいまだ合理性を失うに至っているとはいえないと考えられることに加えて、酒税は、本来、消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること、酒類の販売業免許制度によって規制されるのが、そもそも、致酔性を有する嗜好品である性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることをも考慮すると、当時においてなお酒類販売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判断が、前記のような政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるとまでは断定し難い。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和6年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.11
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。